【北京・河津啓介】トランプ次期米大統領が米メディアに対し、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策の見直しを示唆したことについて、中国外務省の陸慷(りく・こう)報道局長は14日、「『一つの中国』は交渉できる問題ではない。米国が台湾問題の高度な敏感さを理解するよう促す」との談話を発表した。中国側は、トランプ氏が台湾問題を利用して貿易問題などで中国に譲歩を迫ろうとする姿勢に警戒を強めており、改めてくぎをさした形だ。
この談話は中国の原則的立場を強調した内容であり、トランプ氏が就任前である点などを考慮し、現時点では過度な非難を控えたとみられる。中国側は20日のトランプ氏の就任演説を注視しており、対中政策、特に「一つの中国」政策に関する立場表明を見極めてから対抗措置を検討、発動する構えだ。
陸局長は14日の談話で「『一つの中国』は中米関係の政治的基礎だ」と強調した。その言葉通り、「一つの中国」は米国に限らず、中国が他国と国交を結ぶ大前提となっている。それだけに、その否定は断交さえも想定されかねない極めて重大な問題だ。
中国の国際情報紙・環球時報(電子版)は15日の論評で、「トランプ氏が台湾問題と引き換えに短期的な利益を得ようとすれば、哀れな台湾が犠牲となるだろう」と台湾の武力統一の可能性をちらつかせた。
トランプ氏の当選当初、中国のメディアや世論の間では「実業家のトランプ氏は付き合いやすい」との好意的な受け止めが広がった。ふたをあけると中国側が最も望まない形でトランプ氏の「商売人」の側面が顔を見せている。「厳粛な国家関係を『ビジネス』とみなし、粗雑に対中関係を処理するトランプ氏の姿勢があらわになっている」「エレベーターごと中米関係が落下する事態が起こりかねない」。中国の元外交官や識者ら200人余りが参画するシンクタンク「盤古智庫」は10日に発表したトランプ氏に関するリポートで警鐘を鳴らした。
習近平指導部にとっても今年は秋に5年に1度の党大会を迎える重要な年だ。習指導部は指導部人事など内政課題に専念するため、対米関係の複雑化を望んでいない。逆に台湾問題で国内から「弱腰」と見られれば習指導部の正当性が揺らぎかねず、トランプ次期政権との決定的な対立を回避するため、微妙なかじ取りを強いられている。