6千人以上が亡くなった阪神・淡路大震災が起きて、17日で22年になる。

 追悼行事は2年前の半分に減った。被災地では区画整理が進み、震災を知らない転入者が増えている。神戸市では職員の52%が震災後の入庁で、災害対応の未経験者が半数を超えた。

 あの体験を語り継ぎ、風化を防ぐとりくみが必要だ。

 兵庫県は今年4月、県立大学の大学院に「減災復興政策研究科」を立ちあげる。災害ボランティアや産業復興などを学問として体系化し、若い世代に伝承する。被災地の大学らしい試みだ。行政の膨大な経験の蓄積を、役立つ知識と防災意識の向上に結びつけてほしい。

 災害は発生時間帯や場所などによって、思わぬ被害を拡大させる。新たな知見を採り入れて備えを進化させることも不可欠だ。とりわけ緊急時に情報が集積する自治体の責任は重い。

 昨年4月に起きた熊本地震の被災地に、兵庫県内の市町村からは約1200人の職員が応援に行った。中でも神戸市は約600人を派遣。その半数は阪神大震災後に入った世代だ。

 同市は派遣職員に、実際に役立った知識や、課題と感じたことなどを整理させている。

 「建物の危険度判定には、画像を複数で共有できるスマートフォンが有効だった」「同じ自治体を続けて支援する方が指揮系統の混乱が少ない」

 実際の支援で培ったノウハウは、22年前に先輩たちが得た教訓に新たな項目として加わろう。繰り返す災害を厚みのある防災力につなげてほしい。

 昨年起きた熊本や鳥取の地震では、庁舎が激しく被災して、自治体が防災拠点として機能しなくなる問題が浮かんだ。

 熊本では5市町で庁舎が使用不能となり、窓口業務が混乱した。鳥取県倉吉市では窓ガラスが散乱し、別の場所に対策本部を置いた。この問題は、28市町村の本庁舎が被災した東日本大震災でも指摘されていた。

 まずは庁舎の耐震化を進める。同時に業務を途切れさせないよう、バックアップ庁舎の確保や、職員のための水や食料を準備するなど、「業務継続計画」(BCP)と呼ばれるプラン作りを急ぐべきだ。

 現状では市町村の策定率は約4割にとどまる。むろん「作って終わり」ではない。災害時をリアルに想定すれば、何が抜けているかも見えてこよう。

 災害は社会の不意をついて起こるともいう。「想定外」を一つ一つつぶしていくことが、実効性のある減災への近道だ。