インドネシア・ボゴールの大統領宮殿に到着し、ジョコ大統領(左)の歓迎を受ける安倍首相=2017年1月15日午後4時23分、平野光芳撮影
【ボゴール小田中大、平野光芳】東南アジアなどを歴訪中の安倍晋三首相は15日午後(日本時間同)、3カ国目となるインドネシアに到着し、西ジャワ州・ボゴール(ジャカルタ近郊)の大統領宮殿でジョコ・ウィドド大統領と会談した。首相は南シナ海問題を念頭に法の支配や紛争の平和的解決の重要性を確認した上で、海洋安全保障分野での協力強化を呼びかけ、中国をけん制した。
年内にジャカルタで外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開催することも決めた。同協議の開催は一昨年12月以来。また、トランプ次期米政権と密接に意思疎通を図ることが重要との認識でも一致した。
会談後の共同記者発表でジョコ氏が「海洋で両国が協力することで一致した」と述べたのに対し、首相も「南シナ海問題は地域の平和と安定に直結する国際社会の関心事項だ」と強調した。首相は会談で、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)と中国が管轄権を主張する「九段線」の一部が重なるナトゥナ諸島など離島での開発支援を行う意向を表明した。インドネシアは従来、南シナ海問題で中立的だったが、ナトゥナ諸島周辺での漁業操業などの海洋権益を巡る対立から、中国に厳しい姿勢に転じつつある。インドネシアは警備能力向上などで中国に対抗するのが急務で、日本の協力を求めている。
両首脳は防衛協力の強化に加え、防衛装備品・技術移転協定妥結に向けた協議加速化も確認した。首相はジャカルタ-スラバヤ間(約720キロ)の鉄道高速化の支援や、地方開発のため、かんがい施設整備や海岸護岸整備などに総額約740億円の円借款を供与する方針を表明した。