【ジャカルタ=上林由宇太】安倍晋三首相は15日、インドネシア・ジャカルタ近郊のボゴールにある大統領宮殿でジョコ大統領と会談した。鉄道高速化や新港建設などインフラ整備のほか、海上警備の人材育成で支援すると伝えた。南シナ海問題に関連して、中国漁船の違法操業が問題になっているナトゥナ諸島周辺で離島支援策を新たに打ち出した。
ナトゥナ諸島の排他的経済水域(EEZ)は中国が主張する「九段線」と重なり、中国漁船が侵入する事例が増えている。インドネシアは対抗策で離島開発を重視しているため、首相は会談後の共同記者発表で「海洋分野の協力は最優先分野の一つだ」と強調した。
海洋安全保障の協力を強化するため、年内にジャカルタで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開くことで一致した。日本側は防衛装備品の移転協定に関する交渉を加速させたい考えだ。
首相はインフラ整備の一環として、ジャカルタとジャワ島東部のスラバヤを結ぶジャワ島横断鉄道(約750キロメートル)の高速化を支援すると表明した。移動時間を現在の10時間超から半分に短縮するため「日本の技術を活用したい」と語った。日本は高速鉄道の受注で中国に敗れた経緯があり、巻き返しをめざす。
ジャワ島のパティンバンでの新港建設計画の支援も継続する。インドネシア国内の灌漑(かんがい)事業への円借款供与などで「約740億円のビジネス機会を創出する」と表明した。
ジョコ氏は会談で「インドネシアにとって日本は様々な分野における戦略的なパートナーだ。経済、貿易、投資の分野で重要だ」と語った。両首脳はトランプ次期米大統領と密接に意思疎通を図ることも確認した。