フランス映画「エール!」は、家族のなかで、ただ独りだけ耳が聞こえるポーラという少女が歌手になろうというヒューマンドラマです。この映画を知らない方のために、エール!のキャスト・ストーリー・見所を紹介しましょう(クライマックスのネタはバラしていないので安心してお読み下さい)。
「エール!」のキャスト
歌の才能を持ったポーラを中心に展開されるエール!のストーリーに関わるキャストを紹介します(一部のキャストだけを紹介しているので、この他にも多くのキャストが出演しています)。
ポーラ・ベリエ(演:ルアンヌ・エメラさん)
この映画の主役であるポーラは、歌にあまり興味がなかったのですが、ある事からコーラスの試験を受ける事になったのです。しかし乗り気でないポーラだったのに、なぜかコーラスの先生はポーラを合格にします。
マチルダ(演:ロクサーヌ・デュランさん)
ポーラの親友マチルダは、コーラスの試験に不合格になりますが、親友ポーラを暖かく応援していくのです。所が、この応援をポーラの家族はあまり歓迎しないで、ポーラと家族は激しくいがみ合う事になるのです。
トマソン先生(演:エリック・エリモスニーノさん)
コーラスの先生だったトマソンでしたが、片田舎の学校でコーラスを教える事を不満に感じて、学校側にクレームの電話をかけます。その一部始終を聞いていたポーラ達は唖然とするのですが、このトマソン先生がポーラの才能を開花させていく事になるのです。
エール!のストーリー
ポーラは農家の娘で、日々牛の世話をしていました。ポーラの家族達は、耳が聞こえなかったのですが、笑顔の絶えない暖かい家庭環境でした。
コーラスを選んだキッカケ(起)
ポーラは耳が聞こえていましたが、家族と意思疎通するために手話を使っていたのです。この日々はいつまでも続くように見えましたが、ある日を境にポーラの環境はガラリと変わっていくのです。
ポーラは親友「マチルド」と何の授業を受けるべきか悩んでいましたが、そこへイケメンの「ガブリエル」がやってきてコーラスの授業を受ける事を受付に告げました。それを見たポーラもコーラスを志願する事にして、マチルドも一緒にコーラスを受ける事にしたのです。
ある日、ポーラの家族が自家製で作ったチーズを販売していましたが、母親や弟達は耳が聞こえないのでポーラがお客の注文を聞いていました。そこへ村長がやってきて、票欲しさに店前で障害者を支持するよと伝えますが、家族達は商売の邪魔だと思って帰ってもらいます。
コーラスの授業が始まるとトマソン先生は、生徒を1人ずつ歌わせていき、合格か不合格か決めて行きます。そして親友であるマチルドは、歌をあまり聞いてもらえないうちに不合格にされてしまうのです。それを見たポーラはムッとして、自分の番が来ても歌おうとせず「くだらない」とタンカを切りました。誰もが不合格と思う所でしたが、なぜかポーラは合格になってしまいます。
意中の人とデュオ?(承)
ポーラは学校だけでなく、家のほうでもある騒動が持ち上がっていました。それはポーラの父親が村長選へ立候補するというのです。あの村長を見ていたら、我慢しきれなくなったのでしょう。ポーラの家族は驚きますが、父親を応援していく事になります。
そしてコーラスの授業を受けるために、ポーラ達生徒が外で待っていたら、中から怒鳴り声が聞こえてきたのです。トマソン先生は電話で、こんな片田舎にくすぶっているのは学長のせいだと文句を言っていたのです。そこへガブリエルがやってきて、違う女の子とキスをします。それを見たポーラはショックを受けて帰ろうとしますが、マチルドに引きとめられて、しぶしぶコーラスの授業を受けます。
授業が進行していくなかで、トマソン先生は、腹式呼吸の見本を生徒達に見せるためにポーラを前に立たせます。そして発声練習をポーラに少しレッスンさせただけで、信じられいほどの美しい高音が教室中に響き渡りました。その場にいた教師や生徒はポーラの才能に驚きます。そしてレッスンが終わり、トマソン先生はガブリエルとポーラ2人にデュオを行うように言います。
家に帰り、ポーラは市場で家族達といつものように自家製の商品を販売していたら、再び村長がやってきます。村長はポーラに父親の立候補について「当選すると思っているのか」と言いますが、ポーラはそれに言い返します。村長は顔色を変えて「チーズはいらん」と言って帰っていきました。
パリのオペラに!(転)
ポーラがコーラスの授業を受けた後に、ガブリエルから2人っきりで歌の練習をする事を提案されます。しかも、歌の練習はポーラの家でした。密かに喜ぶポーラでしたが、歌の練習中にポーラは初めて生理になってしまいトイレへ駆け込んでしまいます。その事を知った母親が喜んでしまいますが、あまりにもはしゃぎすぎたので、ガブリエルに知られてしまい、ガブリエルは帰ってしまうのです。
ポーラは激しく母親を責めてしまいますが、ポーラの悲劇はこれで終わりませんでした。なぜなら、学校でポーラが生理になってしまった事が他の女性に知られてしまっていたのです。ポーラはガブリエルが教えたと思って、ガブリエルの頬を強く叩きました。そんな嫌な思いをしたポーラでしたが、コーラスのレッスンが終わった後にトマソン先生から、パリで歌うように勧められます。試験は3ヶ月後ですが、この試験に合格したらオペラの合唱団に入れて、各教師の指導を受けられるのです。そのためにはガブリエルと2人で受ける事になっていましたが、ポーラはその事よりも両親や農場の事を考えて断ってしまいます。
しかし、マチルドから試験を受けるように強く応援されて、ポーラは深く悩みながら遂に試験を受ける事をトマソン先生に告げます。
所が、ガブリエルが声変わりをしてしまい、ガブリエルは受けられなくなってしまうのです。ポーラは喧嘩をしたせいだと自分を責めますが、トマソン先生に慰められてマンツーマンでレッスンを受けます。
ポーラは家族に、歌うためにパリへ行きたいと言いますが、両親や弟は耳が聞こえないので、ポーラの才能が分からず応援しようとしなかったのです。ポーラは、マチルドに手話を教えて、家の手伝いをしてもらう事になります。
ポーラの才能に気付く家族(結)
学校では、ガブリエルは声代わりのショックで歌おうとしませんでした。そこで試験はポーラ1人が受ける事になります。ポーラが家へ帰るとマチルドの手話が下手だと親に文句を言われて喧嘩してしまうのです。そんなマチルドからガブリエルが事故にあってしまった事を聞きます。ポーラはガブリエルに話しかけて口論してしまいますが、少しずつわだかまりが解けていきます。
その頃、ポーラの父親は支援者と激しく言い合い、母親は酒浸りになってしまいます。ポーラがパリへ行こうとする事によって、家族のバランスが崩れていったのです。ポーラは苦渋の決断で、トマソン先生に試験を辞退する事を告げます。
落ち込むポーラがマチルドと昼食を食べている所へ、ガブリエルがやってきて学校の発表会でデュオをする事を提案します。ポーラは先生に顔向けできないと言って断ろうとしますが、マチルドは彼(先生)に頼まれたと言って、ポーラは引き受ける事にします。
発表会翌日には、ポーラの家族もやってきて、ポーラとガブリエルの歌が響き渡ります。家族達には、その歌声が聴こえませんが、多くの聴衆がポーラの歌声に聴き入って拍手喝采する姿に気付きます。ポーラは家に帰ってベットで寝ていた所へ、父親がやってきてパリへ連れていく事を告げます。ガブリエルはポーラからメールで試験を受ける事を教えられたので、急いでトマソン先生の自宅へ行き2人も急いで試験会場へ向かいます。
ポーラが試験を受ける時に曲名を言ったら、楽譜がないと演奏できないからアカペラで歌えと言われるのです。それを聞いて呆然と立ち尽くしますが、果たしてポーラは試験に合格出来るのでしょうか?
エール!の見所
このエール!はフランスで4週連続No.1になった映画で、2015年のセザール賞 優秀新人女優賞(ルアンヌ・エメラ)・リュミエール賞 最優秀新人女優賞(ルアンヌ・エメラ)など賞を総なめした事でも話題になりました。それほど迫真の演技をした女優アンヌ・エメラを見るのも、この映画の見所の1つでしょう。
しかし、私はこの他にも3つの見所に、心惹かれました。
村長といがみ合う家族
村長選に当選するために障害者を支援する事をアピールするためだけに、市場へ登場してくる村長とポーラの家族がいがみ合う場面は面白いやり取りで大きな見所の一つです。特に手話が分からない村長に対して、ポーラの父親が手話でバカにする所は最高でしたね!
バックアップする仲間達
ポーラが苦悩するなかで、彼女を支えようとする仲間達が周りにいました。それは親友マチルダ・トマソン先生・意中の人ガブリエル。特にトマソン先生は悩むポーラを強く応援して、ポーラの家族にも応援するように働きかけようとしたほどの人物です。マチルダやガブリエルも自身の環境をかえりみず、ポーラを強く応援していきます。この映画を見たら、多くの方が「私が同じような境遇であれば応援など出来ない」と思ってしまうのもこの映画の大きな見所でしょう。
声が聞こえない世界
正直な話ですが、私はこの映画を見ていたら「耳が聞こえなくて大変だと思うけど、ポーラを応援してあげてもいいのに」と思っていました。しかし、学校の発表会でポーラが歌っている時に音が聞こえなくなる演出が行われたのです。ポーラは口を動かしているのに歌声が聞こえない。それは、この映画を見る方達に耳が聞こえない方達はこのような世界なんだよ?だからポーラを応援出来なかったんだよ?と呼びかけるような演出でした。この辺りも、この映画を見る上で最大の見所と言えます。