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 地球外生命体?
 ある科学者は、「これは最初、他の星からこの地球に、落ちてきた、動植物の原型ではないか」といった。遠い宇宙からやってきた、謎の生命体が、隕石で運ばれてきて、いま地球にいる動物や植物が進化してきたのかも知れないと思ったのだ。というのは、この生物、動物と植物の両方の性質をもっている。

 「カビが動く」といったら、信じられるだろうか?この生物は、カビのような姿をして、森の枯れ木や枯れ葉の中に住んでいる。そこで細菌などの有機物を食べている。成長すると、形が大きくなるばかりでなく、形を変えて移動する。その速度は、1時間に数㎝である。この時期の呼び名を、「変形体」という。

 変形体は、細胞壁のない、たった1個の細胞である。成長にとともに、核は何回も分裂して増えるが、細胞分裂は1度もしない。その結果、手のひらほどの変形体が、何億という核を持った超巨大な1個の細胞という、不思議な多核巨大アメーバになる。さて、この生物は何だろう?

Physarum

 正解は粘菌である。粘菌とは真性粘菌や細胞性粘菌などのなかまをいう。変形体と呼ばれる栄養体が移動しつつ微生物などを摂食する“動物的”性質を持ちながら、小型の子実体を形成し、胞子により繁殖するといった植物的(あるいは菌類的)性質を併せ持つ生物である。

 2008年、公立はこだて未来大学の中垣俊之教授は、「迷路を解く粘菌」を発表して、栄えある?「イグ・ノーベル賞」を受賞している。

 「迷路を解く粘菌」  
 実験では、寒天の上に作った迷路全体に、小さい粘菌を三十個、等間隔で置いた。ばらばらの粘菌は脈動しながらお互いに融合し、一つにつながり、全体に広がった。

 次に迷路の端二カ所に餌を置く。八時間後、粘菌は二カ所の餌を結ぶ最短経路だけに残った。

 中垣教授は、粘菌が最短距離を見つけた仕組みをこう説明する。

 「粘菌を管として考えます。管に多量の水が流れると管はより太くなり、さらに水量が増す。逆に流れが小さくなると管は細くなり、より流れが小さくなって最後は消滅する」

 こうして迷路では粘菌が最短経路に集まった。

 「最短経路だけに管を残し、残りの粘菌が餌に集まれば、粘菌は餌を多量に早く食べられ、なおかつ粘菌同士は一体でいられる。粘菌には、生理的な欲求をうまく最適化する能力があるんです。迷路は、その力を人間にも分かるよう表現する実験でした」

  「粘菌が考えた」北海道の交通網
 さらに2010年、日本の首都圏を模した形状の培地と粘菌モジホコリ(Physarum polycephalum)を用いて鉄道の都市間ネットワークの設計シミュレーションを行い、サイエンス誌に発表した。都市に相当する箇所にエサを設置し、海や山に相当する部分には深度や高度に応じた強さの光を当てて敷設コストを設定する。そこに粘菌を設置することで、首都圏における効率的な交通網のモデルが作成されることを示した。

 このモデルは輸送効率や冗長経路の設計の点で、実際の日本の鉄道網と類似性が見られるという。この研究が評価され、2度目のイグノーベル賞(交通計画賞)を受賞した。

 中垣教授はいう。「単細胞の粘菌はどこまで賢いのか、なぜその賢さが作り出されるのか-。粘菌を材料に、生き物の情報処理の仕組みを研究したいのです」「粘菌は、最短距離という経済性・効率性と、安全性・対故障性という相反する原理を妥協させ、双方を適度に満たす経路を作れるのです」

 粘菌の「餌を求め、餌と餌の最短距離をつなぐ形に変形する」「光を嫌い、光を当てることで任意の形に変形できる」性質があることを利用し、光や餌を「入力」、形を「出力」とみなしてコンピュータとして利用する「粘菌コンピュータ」と呼んで研究を続けている。

 2011年、5月17日TBS放送の「教科書にのせたい!」の番組の中で、中垣教授は、粘菌のことを「脳がないのに賢い生物」として紹介した。 

 粘菌とは何か?
 真性粘菌や細胞性粘菌などのなかまをいう。変形体と呼ばれる栄養体が移動しつつ微生物などを摂食する“動物的”性質を持ちながら、小型の子実体を形成し、胞子により繁殖するといった植物的(あるいは菌類的)性質を併せ持つ生物である。

 変形体が小さいうちは、光をきらい、湿ったところに向かっていく。成熟すると正反対の行動をとるようになつ。すなわち、より明るく、乾いた所へ向かって行き、そこでキノコやカビのような胞子のう(胞子の袋)を作る。これを「子実体」といい、胞子をばらまいて、仲間をふやす。このような点は、真性粘菌が植物であることを示している。

 真性粘菌の胞子が発芽すると、水が多い時は精子のようなベン毛をもった細胞が生じ、少ない時はアメーバ状態の細胞が生まれる。この2つ状態は、水の量によって、簡単に変身する。これは人の場合の精子や卵に当たる。

 これらの細胞は、細菌などを食べ、分裂して増える。こんな細胞にも、(外見では区別できませんが)オスとメスがある。オスとメスの細胞は接合し、アメーバ状態の接合体となる。これが、人の場合の受精卵に当たる。この接合体のアメーバは、エサを食べながら成長を続ける。そして、核分裂をしたり、くっいたり(接合)をくり返し、大きな変形体になる。

 生物は、水がないと生きて行けない。細胞壁のない変形体は、水分がなくなると、すぐに乾燥してしまう。そこで、まわりが乾燥してくると、変形体の内部に、たくさんの仕切りができ、多細胞の状態になっていきる。やがて、個々の細胞は、まわりにかたいカラを持ち、その中で冬眠する。このかたまりを、「菌核」と言い、1年以上も寿命がある。そして、水を与えれば、また変形体にもどる。

参考HP Wikipedia 真性粘菌・変形菌真性粘菌のページ
北海道新聞・現代かわら版
栄えある?「イグ・ノーベル賞」受賞「迷路を解く粘菌」

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