ドローンが照らす、まるで異世界の砂漠

ドローンの用途は、カメラを搭載することだけではない。写真家ルーベン・ウーがドローンに取り付けるのは、照明器具だ。ドローンによって空高くからライティングされた風景は、妖艶で美しく浮かび上がる。

TEXT BY JENNA GARRETT

WIRED(US)

インドネシアの驚くべき青い溶岩流、北極圏・スヴァールバル諸島の素晴らしい極寒のツンドラ。ルーベン・ウーは、神々しいまでの風景を創造するプロフェッショナルだ。現在、彼は米西部において、眺めのいい風景や壮大な地形の夜間撮影を行っている。

彼の作品「Lux Noctis」において、ウーはドローンと照明を用いて風景を明るく照らし出す。これは世界に独特な光景をつくり出す素晴らしいテクニックだ。この特殊照明によって、西部の雄大な地形はさらに広大に感じられる。「この手法は、斬新で予想を裏切るような風景描写を生み出すのです」とウーは語る。

1年前の夜、彼はユタ州で自動車の撮影を行っているときにこのアイデアを思いつく。ウーと彼のチームは、試しにその場でドローンにLEDテープライトを取りつけてみた。そして、照明で浮かび上がった風景に見とれたのだった。「このアイデアはいけるな、と思いましたね」と彼は話す。

計画に数カ月を費やし、ウーは2度米西部を巡り、ニューメキシコ州のビスティ・バッドランドからカリフォルニア州モノ湖に至るまで7カ所で撮影を行った。ウーと彼の友人、マット・リーフ・アンダーソンは、装備を持って荒野を何kmも徒行し、時には撮影後、野宿もした。目的地には昼過ぎに到着し、それから場所を探す。携帯電話はせいぜい数カ所でしか繋がらなかったため、ウーは日が暮れても正確にその場所に戻ってこれるよう、『Gaia GPS』というアプリでピンを立てておいた。

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ウーは「PHASE ONE XF100MP」とライカ「M-P 240」を愛用しており、「3DR Solo」というドローンと「Fiilex AL250」というライトを使用している。ウーは暗くなったら(月が出る前に、ではあるが)撮影場所の約100m上空にドローンを飛ばし、作業にとりかかる。風景は何回かに分けてライティングしなければならない。長時間露出で1枚撮影すると、ドローンを移動させて次の撮影を行う。彼の作品は、デジタル処理で複数枚の写真を合成しているのだ。

強調したい場所を選び、ほかの風景が闇に埋もれたままになるよう撮影を進める。たまにアンダーソンがフレーム内に現れる以外、地形の巨大なスケール感はほとんど伝わってこない。

ウーは、19世紀のロマン派風景画家と空想科学小説から着想を得たと語る。トーマス・コールの『帝国の推移:未開の状態』やスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のように、「Lux Noctis」からは未知や発見、驚異といった感覚が呼び起こされる。

新しいテクノロジーを使うのは魅力的だ。しかし、ウーが抱いたヴィジョンこそが極めて重要な要素である。ドローンに照明をつけ空中を飛ばすことなら誰でもできる。その構成と意図こそが、彼の写真を真に見ごたえのあるものにしているのだ。

「『ドローンのことなら何でもできます、どこにでも飛ばすことができますよ』といえるようなテクニックがあれば、簡単にできることです」と、ウーは語る。「ですからわたしは、自分が考えていることをきちんと把握し、心のなかで描くヴィジョンまで実際に落とし込んでいく必要があったのです」

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