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世界最強の大学新聞「イラン学生通信」 検閲の国でぶれない報道 「最も頼りになる」海外メディアも引用

withnews 1/14(土) 7:00配信

 中東のイランに「イラン学生通信」(ISNA、イスナ)という名の通信社、ニュースを配信する会社があります。その名の通り学生が中心となって運営していますが、侮るなかれ。政治や経済、事件、スポーツなどあらゆるニュースを速報し、米国の新聞ニューヨーク・タイムズ、英国のテレビ局BBCなど世界的なメディアも記事を引用。イランで最も頼りになる報道機関だと言われています。学生がやってるって、ホント? 「世界最強の大学新聞」の実態を取材しました。(朝日新聞テヘラン支局長・神田大介)

【画像】ヒジャブからのぞく茶髪、イラン学生通信で記事を書く女子大生記者

はじめは「大学のニュース」

 首都テヘランの中心部にある6階建ての建物が、ISNAの本部ビル。出迎えてくれた経営主幹のアリ・モタギアンさんは58歳だそうです。いきなり学生じゃない人が出てきちゃったよ。

 「私はイランの歴史や文化を専門とする大学教授ですが、例外だと思ってください。所属する記者・編集者600人の多くが、現役の学生なんですよ」

 オフィスを見学させてもらうと、確かに若い人がほとんど。ですが、学生と言うにはちょっと年がいってるよなあ、という人もちらほら。

 「採用条件は二つだけ。学生である。25歳以下である。以上です。ただし、本人が希望すればいつまで働いてもいい。だから『元学生』もいます。今ここにいるのはそういう人が多いですね。だって記者はどこか外で取材をしているか、大学で授業を受けているから」

 そりゃそうだ。私が訪ねたのは平日の午前中。日本の新聞社でも、編集のフロアは閑散としている時間帯です。

 ISNAは1999年創設。イランの大学協会が、ジャーナリズムを専攻する学生に学習を実践する場を与えようと資金を提供したのが始まりで、20人ほどの学生が集まったのが始まりだと言います。

 当初から本格派のメディアを志していたそうですが、はじめは日本の学生新聞と同じように、大学のできごとを伝える記事が中心だったそうです。

ネットとともに躍進

 ISNAにはマスコミ他社と大きな違いがありました。最初からインターネットだけで展開したことです。

 そもそもインターネットは、大学と大学を回線で結び、離れた場所から学術論文を読んだり、研究に必要なやりとりをしたりするシステムとして発達した経緯があります。学生には身近だし、カネもかからない。だいいち他に記事を載せる媒体がない、という事情がありました。

 これが評判につながります。通信社は既に、政府が運営する1934年創立の「イラン国営通信」がありましたが、こちらはまだ「テレックス」による報道が主体。専用回線を使った通信技術で、官庁や企業では普及していましたが、一般人には縁遠い存在でした。

 ネットの普及とともにISNAの注目度は上昇。閲覧者の求めに応じ、一般の新聞やテレビが取り上げるような記事が増えていったそうです。

 今やイラン全土に30カ所の支部を持ち、ペルシャ語のほか、英語、フランス語、アラビア語の4カ国語で発信。一部の記者は国外出張をすることも。スクープも数多く、2014年、15年に2年連続でイランの「最優秀メディア」として表彰されるなど、評価を高めています。

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最終更新:1/14(土) 7:00

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