ここから本文です

世界最強の大学新聞「イラン学生通信」 検閲の国でぶれない報道 「最も頼りになる」海外メディアも引用

withnews 1/14(土) 7:00配信

「不都合な記事」も

 もう一つ、ISNAが支持されるイラン固有の事情があります。政治勢力の影響を受けていないということです。

 イラン政界は、イスラム教の規律に厳格な社会を尊ぶ「保守強硬派」、自由な社会を求める「改革派」、中間の「保守穏健派」の三つに大別できます。日刊新聞は地方紙も含めて282紙ありますが、主要紙のほとんどがいずれかに分類可能。各政治勢力がカネを出し、自分たちのPRをしているという側面もあります。通信社も同様です。

 これに対し、ISNAは学生が主体なため、特定の編集方針や「社是」を持っていません。ゆえに報道が中立で、欧米をはじめ世界のメディアがISNAの記事に信頼を置く理由になっています。

 また、イランのメディアは検閲を受けています。書籍は発刊前に許可が必要です。新聞や通信社は「不適切な記事」を出せば、あっさり休止や廃刊の処分を出されてしまいます。地上波テレビはすべて国営。管理するのは、政府の上に君臨する「イスラム法学者による指導体制」です。

 なので、イランの「体制」に都合の悪い記事をイランメディアは決して流しません。幸い、イラン国内に特派員を置く社を含め、国外メディアは検閲の対象外となっています。ISNAは「外国のメディアが報じている」という形で、こうした記事も率先して報じています。

 たとえば先日、米国からイラン人向けの放送をする米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)のペルシャ語版が、イスラム教の聖典コーランの詠唱で名高いイラン人男性が、未成年の男子生徒を繰り返し性的に虐待し、しかもその刑事裁判が途中で止まっていると報じました。

 聖典に絡むスキャンダルで、しかもこの男性はイランの最高指導者ハメネイ師の覚えもめでたかったとされ、当初は完全に黙殺されました。ところが、ISNAがVOAの報道を引用して伝えたため、イラン司法府報道官が定例会見で触れ、問題の男性が声明を出すに至りました。

2/3ページ

最終更新:1/14(土) 7:00

withnews

Yahoo!ニュース公式アプリ

都道府県ニュース、防災情報もこれひとつ!