12日付の韓国メディアはどこもオバマ大統領の退任演説を大きく取り上げ、その様子を写した写真を掲載した。演説でオバマ大統領は70回以上にわたり聴衆から起立の拍手を受け、中には「あと4年」と叫ぶ声もあった。その叫び声は言うまでもなく退任を惜しむ思いの表れだ。オバマ大統領の退任演説を扱う本紙記事の見出しは「われわれも拍手を受けて退任する大統領を見たい」だった。国民の誰もがこの見出しそのままの思いを抱いているはずだ。
もちろんオバマ大統領に対する評価は良いものばかりではなく、実際は大きく分かれている。例えば世界的な金融危機の克服、あるいは最近の米国経済の回復などは大きな業績だ。これに対して北朝鮮の核問題など、国際社会における安全保障問題への取り組みには無力だったとの見方も根強い。しかし国民と常に対話を重ね、国全体を一つにしようとする姿勢や努力は常に目にすることができたし、また退任演説で強調したことも「自分とは違う考え方を持った人への包容と寛容」だった。退任演説でオバマ大統領は「互いに違った人たちが一つに集まり、共に行動すること」の重要性を改めて訴えた。退任を目前に控えたオバマ大統領の支持率は今も55%を記録しており、これはトランプ次期大統領の得票率を上回っている。この数字はオバマ大統領がこれまで実行してきた献身と寛容の姿勢、そしてその優れた知性に対する米国人の感謝の表れではないだろうか。
一方で韓国の大統領はどうだろう。大統領直接選挙制度が導入された後でさえも、大統領が退任する時は誰もが傷だらけで、なおかつ国民の冷たい視線を浴びてきた。退任時に肯定的な評価が否定的な評価の半分に達した大統領は一人もおらず、中には否定的な評価が肯定的な評価の10倍を上回るケースもあった。世の中が全て自分のものになったような勘違い、傲慢(ごうまん)、自己本位、独善によって結果的に自分自身を追い込んだのだ。これまで韓国の大統領の中で、オバマ大統領のように拍手で見送られた人物は一人もいなかったが、今後もそのような光景は見られないかもしれない。これは韓国における大統領制そのものに問題があると言わざるを得ない。問題があれば見直さねばならない。大統領本人が自分とは違う考え方、あるいはそれを持つ人を尊重する思いがなければ、これまで例外なくそうだったように、今後も大統領になったことを後悔する日が間違いなく来るだろう。