スケールの小さい、日露共同経済活動

 12月15・16日に安倍総理の地元山口県で行われた、プーチン大統領との日露首脳会談では、日露共同経済活動を通した「新しいアプローチ」を行うことが決められた。

 領土問題については進展が見られず失望した人も多かったが、この新しいアプローチは、一定の評価が与えられているようだ。※共同経済活動への賛否でも、賛成77・3%(産経ニュース http://www.sankei.com/world/news/161219/wor1612190019-n1.html)そしてトータルとしては、この首脳会談は肯定的に評価されている。※日露首脳会談について、「評価する」との回答が63・9%(産経ニュースhttp://www.sankei.com/world/news/161219/wor1612190019-n1.html)

 しかし、この「新しいアプローチ」は、状況を打開する攻めの一手になる可能性はあるが、難しい問題がある。そもそも、日露共同経済活動が北方領土で行われたとする。その時、北方領土での日本企業・日本人の活動が全て「ロシアの法律の下」で行われることを、日本政府が是認し、実際そのようにされたとすると、「日本政府が北方領土はロシア領であること(=北方領土の主権が日本ではなくロシアにあること)」を、「正式」に認めたことになってしまう。



 例えば、日本政府の許可を得て北方領土に訪れていた日本人が、何らかの罪を犯した時に、「ロシアの警察」に捕まり、「ロシアの裁判」で裁かれ、そして日本側がそうなることを是認していたとすれば、それは事実上、日本政府が北方領土の主権がロシアにあることを認めたということになってしまう。

 そうなったとき、北方領土問題は、今日よりも修復不可能な事態にまで「後退」する。なぜならわが国がこれまで一貫して公言し続けていた「北方領土の主権は日本にある」という主張を、この「共同経済活動」を契機として取り下げたも同然の状況になるからだ。

 そうなれば、世界中の誰の目から見ても「北方四島には領土問題が存在しない」ということになる。事実、ロシアの多くのメディアでは、今回の共同経済活動をロシア側の主権で行うと報道している。

 だからこそ安倍総理は、記者たちに対して「四島における日ロ両国の特別な制度のもとでの共同経済活動」を強調しているのだが、果たして、日ロ双方が経済活動できるルールをつくることができるのかどうかが課題になっている。


 領土返還を遠ざけた安倍外交

 このような課題の多い、日露共同経済活動を協議するよりも、いち早く日露平和条約の締結を急ぐことはできないものだろうか?国際情勢は急を要している。

 安倍首相はこれまで、ロシアのプーチン大統領と多くの会談を重ねており、今回で16回目となった。お互いの信頼関係を構築し、北方領土の返還を模索してきた。
 
 今回の会談で日本側は、エネルギーなどの8項目で、3000億円規模の経済協力に合意。また、北方領土をめぐっては、特別な制度の下で、「共同経済活動」を実施することや、元島民が北方四島へ自由に往来できるように議論を進めることでも一致した。しかし、多くの国民が期待していた領土の返還をはじめ、トータルで事実上の「ゼロ回答」に終わった。

 例えば、ロシアに対する経済制裁をせず、「大半はロシア系住民が住んでいるクリミアにおいて、プーチン大統領が"邦人保護"のために動いたことに一定の正当性がある」ということを認めたならば、2016年、少なくとも北方四島のうちの二島は返ってきた。

 この機会を逃したのは、現在の外務省と安倍政権。この見通しのなさについては、十分に反省してもらいたい。まさに、行き当たりばったりで、基本的な理念や方針がない。つまり、日本がロシア制裁に参加しなければ、領土の返還が実現した可能性があった。

 確かにロシアにとっては、制裁を行っている国から「友好関係を結ぼう」と言われても戸惑う。日本が、本当に日露関係の未来を考えているのなら、制裁を解除するぐらいの強い意思を示すべきだ。


 行き当たりばったり、「哲学なき外交」

 安倍首相が政治家生命を賭けてまでも、領土返還を実現させたかったのであれば、もっと大胆な外交をすべきだった。

 例えば、日本側は会談に向けて、秋田犬の贈呈を打診したり、プーチン氏を山口県の温泉に入浴させたりして、関心を引こうとした。友好関係を演出する意図が見え見えだが、果たして大統領が喜んだかは疑問だ。

 経済協力についても、日本との領土問題がないミャンマーに対しては、ロシアの2倍を超える8000億円規模の支援を行う予定であり、ロシアへの経済協力は物足りない印象がある。さらに今回の会談で、プーチン大統領を「国賓」として待遇しなかった点も、アメリカを含む制裁参加国への配慮が強くにじんでいる。

 日本が、このような小手先の「哲学なき外交」を続けていれば、プーチン氏を説得できるはずもない。


 中国・北朝鮮への対応が第一優先

 日本にとってロシアとの経済協力は、中国をけん制する狙いもある。アジアでは、中国が南シナ海で軍備を拡張している上に、中国の支援を受ける北朝鮮が度重なるミサイルで日本を脅している。

 日本にとっては、中国・北朝鮮の背後に位置するロシアとの緊密な経済協力関係をつくり、集団防衛体制を固めることが必要だ。現時点で、国防の危機を回避することは、北方領土問題以上に喫緊の課題である。

 もちろん、ロシアに交渉で主導権を握られ、経済的に搾り取られるような事態は避けなくてはならない。だが、日本の最優先事項は「中国とロシアを分断し、尖閣、沖縄などの日本の領土を守ること」という認識が大切だ。

 北方四島の問題をいったん棚上げしてでも、平和条約を結ぶべきだではないだろうか。日本が、ロシアとの関係を強化し、アメリカとの関係を強化することが、日本の安全保障につながる。

 日本は、拡張する中国の進出を前に、戦力を尖閣諸島などに集中させなければならない。にもかかわらず、中国への警戒心が薄い欧米陣営の制裁に参加したために、ロシアを「中国寄り」にさせた経緯がある。ロシアを国際的に孤立させることが本当に日本の国益にかなうのか、再考すべきだろう。

 日本は、ひとまず北方領土問題を脇においてでも、ロシアとの平和条約の締結を優先させるべきではないか。これを契機に、中国とロシアとの接近を分断し、中国・北朝鮮の野望をくじかなければならない。

 日本が、世界の平和と繁栄を守るためにも、今後の外交はますます重要性を帯びてくる。哲学を背景にした国家戦略が必要だ。そして、わが国には経済力と優れた科学技術がある。ないのはエネルギー資源だ。

 ロシアには天然資源が豊富にある。北方4島だけの小さな共同経済活動ではなく、リニア新幹線をシベリア鉄道につなげるなどの大きな経済活動を行う大胆な国家戦略が必要だ。


 サハリンガス開発は「壮大で身近な話」

 私たちの日々の生活に欠かせない電気。最近では、電気自動車や住宅のオール電化など、エネルギーとして電気が注目されている。ガソリンやガスよりも燃料として安く済むからである。

 その重要な燃料として使われているのがLNG(液化天然ガス)だ。今や国内の電気の40%以上がLNGを使って発電されている。ではそのLNG、どこから輸入していると思うだろうか?

 石油と同じで中東がほとんどでは、と思っている方が、多いかもしれない。中東は30%と多いことは多いのだが、実は10%が北海道のすぐ北、ロシアのサハリンから輸入されていることは、あまり知られていない。サハリンでのLNG開発には、日本の企業も深く関わっている。


 日ロ首脳会談でも話題、「サハリンLNG開発」

 12月16日。実は、日露首脳会談にあわせて行われた日露ビジネス対話に出席した安倍総理大臣は、記者会見で次のように述べている。

「極東のLNGプロジェクトの拡張に向けた協力を行う」。この極東のLNGプロジェクトとは、サハリンで行われているLNGの製造設備を増設する計画を指している。日本とロシアの経済協力の重点項目の1つとして、サハリンでのLNG開発にスポットライトがあたった。

 サハリンとはどんなところなのだろうか?

 北海道のすぐ北、稚内からわずか43キロの距離にある島は、南北800キロ、面積は北海道と同じぐらいある。戦前は南半分が南樺太と呼ばれ、日本の領土だった。当時、多くの日本人が暮らし、町はにぎわっていた。第2次世界大戦末期に当時のソビエト軍が侵攻。日本は1951年のサンフランシスコ平和条約ですべての権利を放棄し、その後、実質的にロシアが支配している。

 現在、この島に暮らすのは約50万人。州都ユジノサハリンスクは人口約20万人程度の都市。寂れた町かと想像していたが、スーパーマーケットはきれいで、トマトやキュウリに加えて、以前は冬はほとんど手に入らなかったというレタスなどの葉物野菜も充実していた。道路も立派に舗装され、マンションや商業施設の建設が相次いでいる。町の郊外には広大な敷地に極東でも最大級というレジャープールまで建設されていた。その「原資」となっているのが、この島の北部の海底に眠る膨大な量の石油と天然ガス。


 サハリンで進む2つの開発プロジェクト

 サハリンでは大きく分けて2つの開発プロジェクトがある。サハリン1とサハリン2だ。

 サハリン1にはアメリカの石油メジャー「エクソンモービル」やロシアの国営石油会社「ロスネフチ」、日本からは伊藤忠商事、丸紅といった大手商社や政府などが出資する官民会社「サハリン石油ガス開発(SODECO)」が参画している。

 また、サハリン2にはロシアの政府系ガス会社「ガスプロム」、石油メジャーの「ロイヤルダッチシェル」、そして日本の大手商社の三井物産、三菱商事が出資している。

 サハリン1とサハリン2は開発を競い合う、いってみればライバル関係だ。

 サハリン2は島の北部で採取した天然ガスを約800キロのパイプラインを使って南部まで輸送し、2つの巨大な液化設備でLNG(液化天然ガス)に加工して、特殊なLNG船で出荷する。

 敷地面積は皇居の約半分に匹敵する4.2平方キロ。そこにある天然ガスをマイナス162度まで冷却するためにパイプをはりめぐらせた巨大設備や、LNGを保管するためのタンクがあり、その規模に圧倒される。専用の桟橋にはLNG船が入港していた。

 LNG積載量は6万5000トン。これだけ巨大な船が週2~3回の頻度で入港し、日本をはじめとする東アジア市場に間断なくLNGを供給し続けている。

 このLNG施設、実はロシア広しといえど、ここにしかなく、日本に最も近いLNG基地なのだ。中東からLNGを船で運ぶと約20日、しかしサハリンからだと3日で着くというので、コストも時間もかけずに運ぶことができるというメリットがある。

 2009年から始まったLNG生産。今では年間約1000万トンを生産し、その7割が日本向け。冒頭説明したように日本のLNG需要の約10%をまかなっている。


 天然ガスの売り先見つからない、もったいない「サハリン1」

 もう1つの資源プロジェクトがサハリン1。2005年から原油の生産を開始し、翌年からは日本にも輸出している。開発コストも比較的安く、この先、当面の間、日本の原油需要を支える資源として期待されている。

 一方、天然ガスについては、いまだ売り先が見つかっていない。原油と付随して出てくるガスの大半を海中に埋め戻しているという、なんとももったいない状況になっている。

 なぜ、こんなことになったのか。2000年ごろ、サハリン1はアメリカのエクソンモービルが主導する形で、パイプラインを使って北海道を経由し、新潟や東京まで天然ガスを運ぶという壮大な計画を立てていた。

 しかし、日本での最大の需要家である東京電力が「ガスはLNGで調達する」という方針を崩さず、このパイプライン計画が頓挫。続いてサハリン1は中国へのガスの販売交渉を進めたが、価格面などで折り合うことができず、売り先が今現在も見つかっていない。

 また、2014年にはサハリン1に参加するロシアの国営石油会社ロスネフチが、ウクライナ併合をめぐるアメリカなどからの制裁対象となり、資金調達に制約が課されるという事態にも見舞われた。


 パイプラインをサハリンから、北海道・東京まで「壮大な計画」

 安倍総理大臣が会見でも触れた「極東のLNGプロジェクトの拡張」。サハリン2では3番目のLNG液化施設を建設することを検討している。

 しかし課題もある。ガスをどこから持ってくるのかということが決まっていない。実は、今のサハリン2のガス供給能力だけでは3番目の液化施設を十分機能させるには足りず、どこかからガスを調達しなければならない。

 国際政治情勢の変化は極東の資源開発を大きく揺さぶります。

 当初、サハリン2では、必要なガスについて、このプロジェクトに参加するロシアの政府系ガス会社ガスプロムが関わる別の新しい開発計画「サハリン3」のガス田からもってくればいいのではないかという案が浮上していた。しかし、このガス田の開発は、ウクライナ問題をめぐるアメリカの制裁対象となってしまい、特殊な技術を必要とするアメリカ企業の装置などを使うことができなくなってしまった。

 この変化に敏感に反応したのがライバルだったサハリン1。ガスの売り先がこれまでなかなか見つからなかったが、サハリン2の液化設備に持ってくれば、事業を軌道にのせることができる。ウクライナ問題をきっかけに今、サハリン1を主導するエクソンモービルは去年からサハリン2を主導するロシアの政府系ガス会社ガスプロムと水面下で条件面での交渉を始めている。


 トランプ大統領で「米露の関係改善」

 さらにアメリカの大統領選挙で、ロシアとの関係改善を目指すと発言していたトランプ氏が次期大統領に選ばれた。ほとんどの人が予想していなかっただけに衝撃が走ったが、サハリンには朗報として伝わった。米ロ関係改善は、ウクライナ問題の制裁にもいくばくか影響するのではと期待している。

 さらに12月13日には、アメリカの外交を担う国務長官に、サハリン1に参画するエクソンモービルの現職のCEO、ティラーソン氏が起用されるという驚きの発表もあった。ティラーソン氏は長年、サハリン開発に携わり、プーチン大統領とも親交があるという人物。政治を後ろ盾にできる利点があると関係者は見ている。

 一方で、ウクライナ問題による制裁が、皮肉にもサハリン2のガス調達難を引き起こし、結果としてサハリン1との協業方向へと導いているのだとすれば、米露接近はサハリン1にとっては微妙なマイナス要因になるかもしれない。

 過去にさかのぼれば1970年代、旧ソビエトの時代から日本や欧米との協力が続けられてきたサハリンの石油天然ガス開発。国際政治情勢や原油価格、資源ナショナリズムなどに左右され、開発は何度も壁にぶつかっては少し進み、また後退し、を繰り返してきた。開発に携わってきた商社の担当者や政府関係者に取材すると忍耐の連続だったと異口同音に語る。

 なぜそこまで苦労をしてまで?...とお思いかもしれないが、中東依存度を下げてエネルギー調達先の分散をはかるというのは日本の長年の目標。サハリンという日本に近い隣国の島からコストの安いエネルギーをいかに手に入れるのか。それは私たちのエネルギーが安定して調達され、日々の電気料金値下がりにもつながる、壮大で、かつ身近な話なのだ。


東アジアとヨーロッパを「シベリア高速鉄道」でつなげよう

 ロシアの東西をつなぐ「シベリア鉄道」が全線開業してから今年で100周年を迎える。

 現在、ロシアはシベリア鉄道と、第2シベリア鉄道と呼ばれるバイカル・アムール鉄道(バム鉄道)の大規模な改修を進めている。最長800メートルのレール導入やバム鉄道の複線化などで、貨物列車の最高時速を140キロ(現在は100キロ前後)に上げ、輸送能力を1.5倍程度にする構想を描いているという。このほど朝日新聞が報じた。

 12月15日には、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が首相の故郷・山口県で会談した。日本の岸田文雄外務相はロシアを訪問、日露政府の間で、1千億円規模の基金を設立し、対ロシア投資や日本企業のロシア進出を推進することが決まった。

 プーチン大統領は極東を発展させるための鉄道整備に積極的な姿勢を示しており、「アジア太平洋から荷物を集め、迅速に輸送する態勢をつくる」とも強調している(朝日新聞)。プーチン大統領は、首相だった2011年12月から、「日本までトンネルを建設することも可能。シベリア鉄道を日本の貨物で満載することにつながる」と語っていた。

 こうしたロシアの鉄道計画は、日本にとっても経済発展のチャンスだといえる。

 北海道とサハリンが陸路でつながり、シベリア鉄道とつながれば、日本からヨーロッパまでの輸送にかかる時間は船便より2週間短縮される。日本とロシア、欧州との間で経済的な結びつきが強まり、日本の輸出拡大も期待できる。

 鉄道建設には、工事費がかかり、沿線の人口は少ないため、鉄道を通しても利用者が少ないのではないか、などといった懸念もある。しかし、北海道からヨーロッパまでが陸路でつながり、将来的には高速の新幹線やリニア新幹線が走るようになれば、日本とロシア・ヨーロッパの間で人・モノ・カネの動きが加速し、経済発展につながる。

 現在、プーチン大統領が描いている鉄道計画の詳細は、11月末発売の本誌1月号記事「プーチン大統領の『世界物流革命』」に掲載している。また、同号の「北海道『収入倍増計画』 新幹線で世界とつながる」では、北海道の各都市に新幹線を通し、ロシアとも鉄道をつなぐことで、北海道が海外から見た「日本の玄関口」になり、経済波及効果が大きいことを示している。

 プーチン大統領は2日の岸田外相との会談に2時間近く遅刻した上、直前になって日本側の出席者を4人から3人に減らすよう要請している。これは小粒の経済協力しか持ち出さない日本政府への不快感の表れとも受け取れる。北方領土目当てで経済協力を持ち出しているのか、それとも本当にロシアと協力する気があるのかと、日本の腹積もりを問うているのかもしれない。

 日本政府には、ロシアを超える大きな構想を携え、したたかなプーチン大統領との交渉に臨むことを期待したい。


 スケールの大きな日露共同経済の実現を

 去る2013年6月3日、ロシアの極東発展省は、ロシア本土とサハリン島に橋をかけて鉄道で結ぶ計画の工事を2016年に始めると発表した。4日付朝日新聞によれば、サハリンと北海道とを結ぶ計画についても、日本の国土交通省とサハリン州の間で協議された模様だ。シベリア鉄道を経由して、ユーラシアの西と東を結ぶ鉄道の実現に一歩近づいた。

 極東発展相のイシャエフ氏は、「確実な交通の連絡がないことでサハリン州の経済発展が困難だった。橋の建設で大陸から(サハリンの)不凍港にアクセスできるようになる」と、計画への期待を語っている。

 現在、サハリンと大陸との間の交通手段は飛行機が中心で、船舶航路もある。しかし冬季は、悪天候で空港が閉鎖されたり、流氷で船舶が航行できなくなるなどして、「孤島」と化してしまうことがある。この橋と鉄道の建設により、季節に関係なく物流ルートを確保することができる上、輸送コストの削減や時間の短縮も期待できる。

 ロシアのプーチン大統領は2012年の大統領復帰後、「極東発展省」を創設。極東地域のインフラ整備や宇宙基地建設など、大規模開発に力を入れているほか、外国企業の受け入れにも積極的だ。今回のプロジェクトも、その一環である。もともとプーチン大統領は2001年、大陸と北海道をつなぐ計画を「ユーラシア横断鉄道計画」として策定しており、極東開発への強い思い入れを示してきた。大統領復帰前の2011年12月にも、首相として「日本までトンネルを建設することも可能。シベリア鉄道を日本の貨物で満載することにつながる」と語っている。

 北海道と大陸とが陸路でつながれば、日本からヨーロッパまでの輸送にかかる時間は船便より2週間短縮される。日本とロシア、欧州との間で経済的な結びつきが強まり、日本の輸出拡大も期待できる。日露関係について言えば、ロシアは日本に対し、サハリンから電力を供給する構想を提示しているし、天然ガスの売り込みも進めたいところである。こうした資源の貿易も、より活発になるだろう。

 この計画は、日本、ロシア、そしてヨーロッパと、ユーラシア全体の発展に寄与するものである。実現すれば日本とロシア・ヨーロッパの間で人・モノ・カネの動きが加速し、経済発展へと繋がることだろう。将来的には、東京からロンドンに向けて、日本が開発したリニア新幹線を走らせることも可能だ。科学技術は持っているが、経済活動の小さい日本は、この巨大プロジェクトに積極的に参画すべきである。


参考 NHK news Web:サハリンガス開発、壮大で身近な話 The Liberty Web: 日露首脳会談で際立った、安倍外交失敗の本質


池上彰のそこが知りたい! ロシア
クリエーター情報なし
徳間書店
サハリン旧日露国境を訪ねる 戦争、観光、亡命、そして廃墟 (朝日新聞デジタルSELECT)
クリエーター情報なし
朝日新聞社

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please