国土交通省がホームページで公開している「雪下ろし安全10箇条 動く電子ポスター」の画面=国土交通省提供
大雪が降った際、私たちはどのように備え、行動すればいいのか。大都会でも豪雪地帯でも、それぞれ心得ておくべきことがある。公的機関が注意喚起のために公開しているホームページなどをもとに、注意点をまとめた。【大村健一/デジタル報道センター】
大雪が降る前に準備すべきこと 長期間の停電への備えを
埼玉県は大雪の際に気をつけるべき点を「家庭でできる大雪対策」として、県のホームページ(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0402/snow/kenminsonae.html)で公開している。
大雪の際は、雪による倒木などで電線が切れ、停電したり、電話がつながらなくなったりするケースの想定が必要だ。雪が玄関をふさいで出られなくなってしまうこともあり、家から出られても交通網が寸断されて、自家用車や交通機関が使えなくなることもある。
ホームページでは気象情報に注意し、大雪の可能性を伝える予報が出たら、水、食料、燃料を備蓄することをすすめている。目安は1週間分だ。また、電気がなくても暖が取れる使い捨てカイロ、湯たんぽなども用意するといいとされ、カセットコンロも有効という。持病がある人は、しばらく通院できなくなることを考え、処方薬をあらかじめ多めに用意し、切らさないことも重要だ。
外出する場合は「歩幅は狭く、つま先とかかとを同時に地面に」
雪の中、極力、外出しないことを心がけたい。やむをえず外出する場合は、転倒や転落を防ぐために以下の点を呼びかけている。
・路面凍結している場所は歩かない
・雪で埋もれて見えなくなっている用水路などへの転落に注意する
・走らない
・普段よりも時間に余裕を持って行動する
・滑り止めが付いている長靴などを履いて外出する
・手袋をして、両手はいつでも使えるようにしておく
・歩幅を狭くする
・つま先とかかとを同時に地面につける
・屋根から雪が滑り落ちてくる危険性があるので軒下のそばには近づかない
車を運転する場合はスタッドレスタイヤやタイヤチェーンなど雪道対策を怠らず、普段よりも車間距離をとり、余裕を持った運転を心がけたい。万が一、立ち往生してしまった場合は、マフラーに雪が詰まって車内に排ガスが充満しないように気をつけ、身の危険を感じた場合は消防、警察への通報を。一方、むやみに車両を放置して立ち去ると、停車した車が除雪作業を邪魔することもあるので、注意が必要だ。
「雪下ろし」など除雪作業中の事故は例年多発 65歳以上は特に注意を
消防庁がまとめている「雪による被害状況」によると、雪が原因の死者で例年、最も多いのは「屋根の雪下ろしなど除雪作業中」の事故によるものだ(交通事故と除雪作業中以外の転倒を除く)。昨冬(2015年11月~16年3月)は死者27人のうち23人。うち19人が65歳以上だった。一昨年の冬は死者83人のうち65人を占め、うち65歳以上は52人。雪崩や落雪などと比べて、際立って多い。
雪かきや雪下ろしは重労働。寒い場所では血圧や脈拍が上昇しやすく、心筋梗塞(こうそく)などを起こすおそれがある。準備運動をしっかり行い、体調に気を配ることが大切だ。
国土交通省は雪下ろし作業での事故をなくすため、ホームページなどで「雪下ろし安全10カ条」を紹介している。2013年に注意喚起「電子ポスター」動画も制作した。紹介されている10カ条は以下の通り。
1)家族や隣近所に声をかけて必ず2人以上で行う
2)低い屋根でも油断は禁物。常に足場が滑らないか注意する
3)万が一、転落した際のクッションにするため建物の周りに雪を残す
4)疲れたときは休憩する
5)晴れた日ほど要注意。屋根の上の雪が溶けかけているので、落雪に気をつける
6)面倒でも命綱とヘルメットは欠かさず、動きやすい服装を心がける
7)屋根の昇降に使うはしごの足場はしっかりと固定する
8)命綱や除雪機は日ごろからこまめに点検する
9)除雪機に雪が詰まったら、必ずエンジンを切ってから雪を取り除く
10)緊急事態に備えて携帯電話を持って行く
屋根からの転落だけでなく、使い慣れない除雪機がうまく動かず、スイッチを入れたまま点検して体が巻き込まれる事故も起きている。雪下ろしが「危険が伴う作業」と認識して、隣近所で助け合って取り組むことが何よりも重要となる。