トランプ次期米大統領の「米国第一主義」が多国間の協調を脅かす構図は、温暖化対策や貿易自由化などにとどまらない。

 税制、とりわけ法人への課税も焦点だ。

 法人税ではもともと、企業を引きつけようと税率の引き下げや優遇措置の競争に陥りやすい。しかし2008年のリーマン・ショックを受け、格差・不平等への怒りと深刻な財政難を背景に、国際的に協力して税金をしっかり取る仕組みづくりへの関心が高まった。

 特にやり玉にあがったのが、多国籍大企業による過度な節税や脱税だ。

 企業の活動や納税の実態をつかむための国際的な情報交換や、収益隠しをあぶり出すための金融口座情報の自動交換などが決まり、順次実行されていくことになった。タックスヘイブンでの蓄財の実態を暴露した「パナマ文書」問題も追い風に、取り組みに拍車がかかると見られてきた。

 トランプ税制は、そうした機運を一変させかねない。

 いまは35%の連邦法人税について、トランプ氏は先進国の中では極めて低い15%に下げていくと言う。

 社会基盤への大規模投資も掲げており、財政の帳尻が合うのか、実現性を疑問視する声は多い。ただ、欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国も17%への引き下げを示しており、先進国間で際限のない競争が始まる恐れは皆無ではない。

 トランプ氏は「国境税」にも繰り返し触れている。米国から国外に生産拠点を移す企業に課すようだが、具体像ははっきりしない。徴税権を振りかざして企業を国内にとどめようとする脅しとの見方も少なくない。

 もっとも、米議会下院の共和党指導部が「国境での課税調整」を実現する法人税改革を提案していることに注目するべきだろう。米国から輸出する企業の税を減免し、輸入する企業の負担は重くするという内容だ。

 世界貿易機関(WTO)のルールでは事実上の輸出補助金とみなされ、認められない可能性が高いとされる。しかし、大統領のポストに加えて上下両院も握る共和党内での動きだけに、楽観はできない。

 日本は、経済協力開発機構や主要20カ国・地域(G20)の場で、国際的な税逃れ対策のまとめ役を果たしてきた。

 世界最大の経済大国が身勝手な税制を導入すれば、その悪影響は計り知れない。米国に忠告し、未然に翻意を促す役回りを日本は果たすべきだ。