【ソウル=加藤宏一】韓国政府は8日、検討していた防空識別圏(ADIZ)の拡大を正式に発表した。韓国・仁川の飛行情報区(FIR)に沿って設定し、中韓が管轄権を争う暗礁の離於島(イオド、中国名・蘇岩礁)などが含まれる。15日から発効する。米国は韓国の方針を評価する姿勢を示すが、日本や中国の防空識別圏と一部が重なっており、周辺地域の不安要素になりそうだ。
韓国国防省の幹部は8日記者会見し、「国防省や外務省が個別に(日本や中国、米国などの)周辺国に事前に十分に説明してきた」と述べ「過度な措置ではないという点で共感を得た」と強調した。そのうえで「国際ルールに合うもので、民間航空機の運航は制限されない」と指摘した。
韓国政府が新たに設定した防空識別圏は、韓国仁川のFIRに沿う形で設定。最南西の地点は北緯30度東経124度まで延長する。日中双方の防空識別圏内にある離於島のほか、日本の防空識別圏内の馬羅島も入る。
米国務省のサキ報道官は8日、韓国の防空識別圏拡大について「国際規範と合致する方法での運用を約束した韓国の姿勢を評価する」と容認する声明を発表した。韓国は軍用機が離於島など日本の防空識別圏に入る際は引き続き事前通報する方針を示しており、韓国国防省の幹部は「日本と重なる区域については日本の防衛省と協議を始める」と明らかにした。
韓国は中国が11月に離於島などを含む形で一方的に防空識別圏を広げたことに反発。対抗して防空識別圏を拡大することを検討してきた。朴槿恵(パク・クネ)大統領は6日、韓国を訪問したバイデン米副大統領との会談で韓国側の防空識別圏の拡大を説明し、同氏から「朴氏の説明と韓国の努力を評価する」との回答を得ていた。