年末のことだったんだけどね。
ちょっとした「事件」があったんでそれについて書こうと思う。
結論から言うと、警察は出て来るんだけど俺が何かやらかしたってわけじゃない。
ただの笑い話っていうか(俺にとってはドキドキもんだったが)、こんなのはどこにでも転がってる話だろうし、特別なオチはないよ。
ただの経過報告にすぎない。
じゃとりあえず行ってみようか。
出会いは深夜の3時だった
車でコンビニに行った帰り道のこと。
時間は深夜の3時ぐらいだったかな。
家の近所まで来たところで、道路脇に人影を見つけたわけ。
俺の家があるところは田舎なんで、こんな時間に人や車はまず見かけない.
昼間ならどうってことないんだけど、なんせ深夜の3時だったからちょっと気になってね、スピードを落として注視したら腰の曲がった婆さんだった。
その時はちょっと妙な気持ちになっただけで素通りしてね、すぐ近くに借りてる駐車場に向かった。
車を止めると、俺は急いで家に向かったよ。(寒かったから)
その途中に居たんだよ、さっきの婆さんが。
話が構図的に伝わりにくいだろうし、この後の展開には是非ここの位置関係を把握しておいてもらいたいのでイラストを載っけておくよ。
最初に婆さんを見かけて素通りした
駐車場に車を入れて家へ向かう途中で婆さんに追いつく
ここまでの流れ、オッケー!?
じゃ次へ行くよ。
婆さんの様子がおかしい!?
婆さんの横を通る時に気づいたんだけど、おかしいんだよ、様子が。
明らかに着の身着のままっていうか、寝間着だろうって格好でね、両手に持ってる荷物がどことなく家出風のそれだったんだ。
しかも足元がヨロヨロで、いまにもコケそうな感じ。
で、つい声かけちゃんだよ。
「どうしたんですか?荷物持ちましょうか?」※俺は結構やさしいんだぞ。
そしたら「***の親戚の家に行く」とか言う。
***っていうのは、そこからクルマで10分ぐらいの近場の地名だよ。
この段階で何かワケありなんだなあってのはバカの俺でも分かったから、かわいそうになって来たんだよ。
車はさっき止めたばかりでエンジンもまだ冷えてないし(すぐに暖房が効く)、駐車場もすぐそこだ。
俺は婆さんをその***の親戚の家に送ることにして車をとりに戻った。
ただ、その経路ってのが下の写真のようになった。ここでは車の向きに着目して欲しい。1枚目の図とは車の進行方向が逆になっていることが分かると思う。
俺は車を回して、側道脇にハザードをたいて停車した。
あとは婆さんを車に乗っけて***へ行くつもりだったんだが・・・。
婆さんの言うことが二転三転して・・・
どうしたことか婆さんは車に乗るのを嫌がって、こんどは「旅館へ帰る」とか「すみません。すみません」とか謝り出したり、「110番してくれ」とか「救急車呼んでくれ」とかわけが分からないことになった。
イヤ、わけが分からないことはない。
こりゃ痴呆だ。
どうしたもんかと思案したが、このまま放置するわけにもいかないし、かと言って俺じゃこれ以上のことは対処不可能と判断して警察を呼んだんだよ。
10分後パーカー到着。ここからが・・・
パーカーから降りてきた2人の警官のうち1人が婆さん、1人が俺に付いて、ちょっと離れた場所で事情説明を求めてきた。
俺は寒いし早く家に帰って暖まりたかったんだが、事情説明ぐらいは仕方ないかと思ってこんな風に言ったんだ。
「僕は車で向こうのコンビニから帰る途中、お婆さんを見かけて様子が変だったんで連絡したんです」
細かい事をはしょって説明したのがまずかった。
分かりました?
この説明だと車の向きのつじつまが合わないわけですよ。
本来なら1枚目の進行方向に車が向いてないとおかしいのに、そこにある車の向きは逆になってる。
ここに反応したようですね、警官は。
そっからはまるで取り調べみたいな詰問攻め。
実際は、いったん駐車して再び車を取りに行って道を回って来たとか説明したけど、かえって心証を悪くしたみたい。
実は途中で分かったんだけど、婆さんは軽い擦り傷や打った痕があったらしい。これも嫌疑がかかった原因だろう。(たぶん、ここまで歩いてくるどこかで何回かコケたんだろうな)
つまり俺は婆さんに車で当てた犯人で、善意の通報者を装って誤魔化してると思われたわけ。
警官の厳しい態度に、さすがの鈍い俺でも気がついたよ。自分に嫌疑がかかってるって。
正直言うと、この段階になると俺は後悔し出していた。
善人ズラしていい気になってた自分が阿呆に思えてきた。
こんな寒い中、なんで俺はこんな事をしてるんだろう?
知らんぷりしてれば、今ごろは家に帰って暖房の効いた部屋で(セブンでチンしてもらった)ハンバーガーと温かいコーヒーを食えてただろうに、それが事故の犯人扱いかよ・・・。
生きた心地がしなかった
もちろん俺は婆さんに当ててないから、そんな嫌疑どこ吹く風で平気なはずだったんだけど・・・
あることが頭に浮かんだ瞬間、俺は全身が凍りつきそうになったんだよ。
「痴呆」
もし婆さんが何かの勘違いを起こして「あのアンチャンの車にぶつけられた」とか言ったら・・・
人も居ない車も通らない、第三者のいない密室状態のこの状況じゃ俺は不利すぎるんじゃないか?
ハッキリ言って俺は外見のよろしくないチンピラ風。
ヤバい、ヤバい、ヤバすぎる!
そんな俺の動揺ぶりを見て、警官はますます疑いを強めて行ったかもしれない。
「ちょっとお待ちください」←言葉はていねいだが、口調は厳しい。
俺担当の警官がもう1人の婆さん担当の警官に呼ばれて向こうへ行った。
情けないけど、俺は頭が真っ白になってて冷静な思考ができなくなってたよ。
戻ってきた警官はまるで別人のように優しかった
数分もすると俺担当の警官が戻って来たんだが・・・アレレ?どうしたか知らんけど、めっさ優しくなってる。
もうね、口調から物腰からすべてが柔らかいの。
さっきまでは地獄の閻魔様だったのが、一転して仏様みたいなふんわり感。
なんじゃこりゃって思ってたら・・・
「お婆ちゃんのケガは自分で転んだ時のものらしいですねえ。ゼニヲさんが御親切に声をかけてくれたと喜んでいましたよ(やたらと俺を誉めたり感謝の言葉を言う。中略)いやー通報してくださいまして感謝いたします」だってさ。
婆さん、ちゃんと証言してくれてたんだー!
ホッとして家に帰った俺だが・・・
その後は警官に任せて家に帰ってきたわけだけど、なんだかなあですよ。
ああいう状況じゃ警官の立場上、疑うのも理解できるけど、どうも腑に落ちない。
冷静になって考えてみたら、当て事故かどうかなんて車を調べれば白黒ハッキリするんだから焦ることもなかったんだけど。
でも、やっぱ怖かったってのがホント。
人生終ったって思ったもん。
部屋に帰って袋から取り出した生ぬるいコーヒーと冷たくなったハンバーガーを見て、なぜか切なくなったのを覚えてる。
俺、次同じ場面に出くわしたら多分知らんふりして通り過ぎるだろうなあ。