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「元SMAP」に学ぶ組織の老害と40代社員の限界

プレジデント 1/13(金) 9:15配信

■分裂SMAPに思う、ビジネスの栄枯盛衰

 昨年の大晦日をもって解散したSMAP。熱烈なファンを多数抱えながらも、事務所も絡んだメンバーの対立・分裂騒動はいろんな意味で考えさせられた。

 企業の経営に置き換えると、「SMAP」という事業はいまだに市場のニーズも高く、確実な売り上げを確保できる「成熟期」にあった。

 にもかかわらず、内紛で事業撤退を余儀なくされたことはジャニーズ事務所にとって大きな痛手であることは間違いない。

 一般に、新たに生み出された事業や製品は、導入期・黎明期を経て、成長期・成熟期・飽和期・衰退期をたどることはよく知られている。

 だが、すべての製品が同じ道をたどるわけではない。成長期を待たずに消えていく製品もある。

 ハイテク産業の製品のライフサイクルモデルにキャズム(深い溝、谷)理論というものがある。製品を出すと最初はオタク系のディープユーザーには売れるが、彼らは自分たちでカスタマイズしてしまうために一般ユーザーとの間に“谷”が発生し、製品が売れない。

 そこでいかに使ってもらうかを創意工夫し、谷を渡ることができれば爆発的に売れ出し、あらゆるユーザーにも浸透。成熟期を迎え、やがて飽和期を経て衰退期に至るというものだ。

 SMAPの場合も91年のデビューから3年余りはさほど売れなかった。

 だが、従来のアイドルの前例を破ったバラエティやドラマ出演、司会業への挑戦をきっかけに人気が急上昇し、国民的スーパースターにのし上がった。その谷を乗り越える戦略を考え、実行したのが昨年事務所を退社した飯島三智元チーフマネージャーだったとされる。

■組織の「老害」で寿命が延びなかった! 

 また、前出のライフサイクルモデル(導入期→黎明期→成長期→成熟期→飽和期→衰退期)はそのフェーズに合わせた対策が必要なことも示唆している。

 SMAPが成熟期であれば、マンネリ化して飽きられる飽和期に至らないために、これまでとは違う戦略やビジョンを描き、さらに進化させるようなアイデアや施策を打ち出す必要がある。製品の場合は、新たなコンセプトに基づいたメッセージを打ち出し、パッケージを変えることで寿命を延ばすことが多い。

 もちろん、戦略やビジョンを打ち出すのは経営者である。

 しかも、SMAPは製品ではなく“人”であり、経営者は新しいビジョンを打ち出すだけではなく、それがメンバーのさらなる意欲をかき立てるものでなければいけない。

 だが、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長は85歳。女帝と言われる姉の藤島メリー泰子副社長は90歳と高齢だ。

 新ビジョンを生み出すことが無理だとは言わないが、ジャニー社長は、昨年の半ばに行われたSMAPメンバー一人ひとりとの面談で「2年後に後悔するよ」と話したと報道されている。

 それがもし本当だとすれば、高圧的な慰留工作と言わざるをえず、そこにはビジョンどころか経営者としてのリーダーシップも感じられない。

 ビジネスモデルの変化が著しい今の経営環境下では、事業ごとのライフサイクルの違いに応じて組織と人のあり方を見直していくことが求められている。

 成長期や成熟期にある事業の場合、人事評価を軸に売り上げなどの実績を指標にするが、ゼロから1を生み出す黎明期は売り上げが上がることはないので別の指標を設けて、社員のやる気を促す施策を考える必要がある。

 ある事業が市場に飽きられるような兆しが見えたら、今の事業の延長線上で新たなビジネスの芽を生み出すために資本投下し、組織の一部の人員を入れ替えることで緊張感を持たせて活性化を促そうと試みる。

 しかし、今の企業の最大の課題は、新しいビジネスに積極的にチャレンジしようとする社員が少ないことだ。

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最終更新:1/13(金) 9:15

プレジデント

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