朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領の弾劾の可否を審理する憲法裁判所の前で、「1人デモ」が盛んに行われている。現行の「集会および示威(デモ)に関する法律」(集示法)は、憲法裁や青瓦台(大統領府)、国会など主要な国家機関から100メートル以内での集会を禁じている。だが、同法では「2人以上」によるものをデモと規定しており、1人で行うデモは制限を受けない。そのため、弾劾の賛成派と反対派、10-20人ほどが毎日さまざまな「1人デモ」を行っている。
自分の主張をより効果的に伝えるため、異色のアイデアでデモを行う人もいる。今月4日には、自身を「はだしの男」と紹介した男性(49)が2個の氷の塊にはだしで乗り、1時間にわたり「弾劾賛成」を訴えた。この男性は、休暇を取って会社を休み、ソウル近郊の京畿道・議政府の自宅近くで氷の塊を買ったと説明。「寒い日に氷の上に立っていると、セウォル号(沈没事故)で亡くなった子どもたちが思い出されて涙が出た」と語った。
ソウル南方の京畿道・平沢に住む自営業の男性(54)は毎日憲法裁の前に出向き、弾劾反対のデモを行っている。男性は「セウォル号事故の全責任を大統領に負わせるのは正しくないと思い、毎日ソウルと平沢を往復している」と語った。
10日午前には、保守団体・全国愛国市民連合のメンバー30人が弾劾反対の記者会見を開いた。会見もデモと同様、集示法の適用を受ける。会見中、メンバーが弾劾反対を叫ぶと、警察は「憲法裁前で2人以上がスローガンを叫べば違法になる」と制止した。
賛成派と反対派がすぐ近くで自らの主張を訴えているため、トラブルが起きることもある。第1回弁論が開かれた3日には、1人の中年女性が弾劾賛成のプラカードを持っている中年男性に近寄り「住民登録証を出せ。スパイなのかどうか警察で身元を照会してもらう」と言ったため口論が起きた。
憲法裁の職員や周辺の商業者は、1人デモによる被害を訴えている。憲法裁のペ・ボユン広報官は「これまでも重要な審理が開かれるたびに記者会見を口実にしたさまざまなデモが行われ、騒音で裁判や業務に支障が出ていたが、弾劾審理はその重要性を踏まえてか、1人デモが特に多い」と話した。また、憲法裁の前で伝統茶の店を経営する男性(59)は、弾劾をめぐるデモによる騒音が次第にひどくなっているとし「店の出入り口の前で1人デモをする人もおり、対策が必要だ」と訴えた。