リーダーシップ不在の韓国外交が「複合危機」に直面している。北朝鮮の脅威は次第に増しているにもかかわらず、間もなくトランプ政権が発足する米国は韓米同盟の見直しを要求する構えを見せており、中国は米最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備に反対して韓国に圧力をかけてきている。また、日本は旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する少女像の撤去を求め、強硬的な対抗措置に出た。周辺の大国はトランプ氏、安倍晋三首相、習近平国家主席、プーチン大統領と強力なリーダーたちが「強い国の復活」を叫んでいるのに、韓国は政治的混乱と分裂の中で自分の首を絞めるようなことばかりしている。
危機の時ほど方向舵(だ)をしっかり握り、外交・安全保障の基本を再確認すべきだ。米国による保障がなければ、韓国の安保は揺らぐ。それこそが、THAADの配備を先送りできない理由だ。圧力に負けて配備を先送りすれば、この先、中国による圧力は逆に強くなるばかりだろう。THAAD配備は北朝鮮の核兵器に対する防衛的な対応措置だと中国を説得してきた韓国の努力も無になる。北朝鮮の「槍」は鋭くなる一方なのに、韓国は自ら「盾」を下ろすことになるのだ。
中国は北朝鮮を動かす「てこ」にはなるかもしれない。だが、韓国の安全を保障してくれる国ではない。韓米日の協力は、北朝鮮核問題の対応において欠かせない。そして3カ国の連携は、韓日間の協力があってこそ可能になる。韓日間の葛藤を助長しようとする言動は、究極的に韓米日の協力を弱めることにつながり、対北朝鮮での足並みの乱れを招く。
慰安婦問題をめぐる2015年末の韓日合意は、両国間の葛藤を解消しようとするものだった。合意内容に不満を持つ人はいるかもしれないが、これを無効にして再交渉しようという主張は、一部の国民には受け入れられても現実的ではない。外交には相手がいる。日本の安倍首相は「最終的な解決」という合意内容を挙げ、再交渉に応じないだろう。状況が変わったからと交渉のやり直しを求めれば、「韓国は必要ならゴールポストを動かす」という日本の右翼の論理を私たちが自ら証明することになる。韓国の国際的信用は低下し、国際社会の非難は韓国に向かう公算が大きい。