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【社会】

「なぜ廃校」検証できず 都立の夜間定時制4校、選定経緯示す文書なし

選定経緯が不透明なまま開示された黒塗り資料

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 東京都立の夜間定時制高校の廃止計画を巡り、廃止される四校の選定経緯を示す文書の情報公開請求に対し、都教委が「(該当する)公文書は存在しない」と回答していたことが分かった。請求した元都立府中高校教諭の佐藤洋史(ひろちか)さん(71)は「なぜこの四校なのか。決定過程が見えず、検証できない」と訴え、十三日に小池百合子知事や中井敬三教育長あてに要望書を提出する。 (木原育子)

 都教委は昨年二月、夜間定時制の小山台(品川区)、雪谷(ゆきがや)(大田区)、江北(足立区)、立川(立川市)の廃止方針を決めた。廃止時期は明らかにされていないが、雪谷は二〇一八年度の生徒募集を行わない見込み。

 佐藤さんによると、昨年十月、都教委に関連文書の公開を請求し、都教委は昨年十二月に約二百六十枚の資料を開示した。ところが、廃止に至る考え方を記した計画案骨子など、ほとんどは都教委のホームページなどで公開されている資料だった。都教委は「検討委員会やプロジェクトチームを設置した事実はない」として、選定経緯の分かる議事録などの公文書は存在しないと回答した。

 また、廃止スケジュールを記した「学校改編年次計画案」が一部開示されたものの、高校名が書かれた表の枠組みだけが示され、肝心のスケジュール部分は黒塗りだった。理由は「適正な事務の遂行に重大な支障を及ぼすおそれがある」とされた。

 佐藤さんは「いつ誰が、なぜこの四校に決めたかが検証できない。立川高のように伝統ある定時制高校が不透明な決定過程でつぶされてしまう、と思われても仕方ない」と指摘。情報公開を重視する小池知事に、定時制高校の現場に足を運んでほしいと願う。

 都教育庁の担当者は本紙の取材に「策定した計画に沿って決定した。豊洲市場の問題と違って背景にさまざまな意見があったわけではなく、庁内の会議メモまで残していない」と説明している。

 廃止計画の凍結を求める市民団体は「夜間定時制には、貧困家庭や外国にルーツがある生徒なども通っており、『学びのセーフティーネット』を奪わないで」と訴えている。

◆1965年度121校→2015年度44校

 東京都の夜間定時制高校は1965年度、全国最多の121校あった。地方の若者の集団就職の増加が背景にあり、昼間に働きながら夜間に学ぶ生徒は約5万4500人に上った。

 しかし、90年度は109校で約2万2500人、2015年度には44校で約5900人に減った。

 都教育委員会によると、1997年度にまとめた計画で、不登校や高校中退の生徒らが学び直す都独自のチャレンジスクールを増やす半面、定時制高校を統廃合する方針を決定。これに基づき、昨年2月に策定した2016〜18年度の3年間の実施計画に4校廃止を盛り込んだ。

 このうち、1937年の旧制中学から夜間過程があった伝統校、立川高の夜間定時制に通う生徒は昨年5月現在287人。都教委は、2023年に多摩教育センター(立川市)敷地にチャレンジスクールを新設することを理由に閉校する、と説明している。

 

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