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ヒロインは決めてあります、ではどうぞ
乙女心?学校で教わらなかったぞ俺!「もうぅ……ちゃんと事情を話してくれたら怒らなかったのに。ねぇ?フリード」
「きゅるぅ!」
「いや、俺言ったよね?やられながら叫んでたよね!?」
「……てへへ」
「いや、褒めてねぇから!可愛いくても許さんぞ!」
ルーンはキャロにぶっ飛ばされた扉を直しながら仕切りに叫んでいた。この男、ボケもツッコミも可能なハイブリッドなのである!
しかし可愛いは正義である、言葉では許さないと言ってるが彼の中ではもう許してしまっている、恐るべし女の子の笑顔!
既に覇王、アインハルトはベッドに運びそこでぐっすり眠っている。もちろん近くのロッカーに置いてあった荷物も回収済みだ。そこはさすが執務官、抜け目ない。
「けどこの子が噂の通り魔だったんだね、ルーン君を襲ったのが運の尽きだったけど」
「噂の?」
「……まさか知らないの?執務官なのに?」
「……てへへ」
「はぁ、私が補佐してなければ今頃ルーン君減給だよ?」
「ははぁ!その件についてはいつも感謝しておりますキャロ殿!」
「うむ、よろしい。じゃあ今度なんだけど……」
プルルルルルッ!
「あっと、ごめん俺だ。こんな時間に何のようなんだノーヴェ」
何かキャロが言おうとした途端ルーンのデバイスにコールがあった。その相手はノーヴェ、何だかキャロが涙目で心なしかムッとし服の端をギュッと掴みモニターに映るノーヴェを睨んでいるような気がする。何故だろうか?
「おう、最近お前ウチに顔見せてないだろ?たまには顔出してくれよ、チビ達も喜ぶから」
「えぇー、あれだろ?それでチビ達のサンドバッグにされんだろ俺。休日にサンドバッグとか俺はもう社畜として完全体になろうとしてるのね」
「おぉ……何かどんまい」
「ノーヴェに心配された、俺もう無理……ヒモになろ」
「私そういう人にはご飯作ってあげないかなぁ」
「よぉし!明日は張り切ってサンドバッグになって、明後日から仕事頑張るぞー!」
既にルーンの胃袋はキャロにしっかり掴まれていた。もうキャロのご飯無しではルーンはこの社畜生活を乗り切る事は出来ない身体になってしまったようだ。
取り敢えず明日はチビ達のサンドバッグになる事が決定した。
「じゃあ明日は私も付いていくね」
「ん?別にキャロはいいんだぞ?せっかくの休みだし休日も俺と一緒なのも嫌だろ」
「……うん、やっぱりルーン君は馬鹿だね。」
「気の所為かな?なんかナチュラルにディスられた気がするんだけど」
「ルーン君の馬鹿、アホ、マヌケ、サボり、ヘタレ、変態、ラノベ主人公」
「いや最後なんか新しいなおい!」
2人、実は仕事でパートナーであったりする。ルーンが執務官でキャロはその補佐。
彼らは実に相性がいい、別に夜の相性ではない。同じ部隊でずっと一緒にいた事もあってか現場仕事で魔導師を取り押さえる時に発揮されるコンビネーションは抜群である。
故に活躍し過ぎてよく現場仕事を回されているとも知らず。
そんな感じで今日も平和です。
アインハルトは夢を見ていた。
それは遠い昔の記憶。
彼の趣味は文通だ。
名前も、顔も、声も何も知らない相手との文通。
文通を初めたきっかけは何だったのだろうか。そうそう、思い出した。
クラウスは退屈していた。いつも同じ繰り返されるような毎日。リピートされる毎日に嫌気がさしていた。出される料理はいつも美味しい、部屋から見える景色は綺麗。だがクラウスの心には何も響かなかったし何も思わせなかった。
突然差出人のない文通が届きなんなのだろうかと封を開けると、
『好きです、俺と付き合って下さい』
クラウスは吹いた。
何処の馬鹿がどう間違えて王族である自分にラブレターを送ってくるのか。
どうやら手紙には続きがあるようで裏に何か書いてある、クラウスが裏返しそれを見て見ると
『いやマジでお願いします、本当に好きなんです。もう俺には貴方しかいません、多分夜の方の相性もきっといい筈です!お金が必要なら払います、いくらですか?ていうか全財産払いますのでどうか、どうか私とぉぉぉぉぉ…………』
クラウスは何も無いところでコケた。
こいつどんだけ必死なんだと。
こんなにも必死なのに宛先が自分で間違えているという事実にくそ真面目だったクラウスは心を痛めた。
あぁ、なんてかわいそうなんだと。
クソ真面目は行き過ぎるとただの馬鹿、これは誰が言ったのだろうか。全くもってその通りである。
だから書いた、いや書いてしまったのだ返事を。
アインハルトが目を覚ますと視界に写ったのは知らない天井だった。
確か自分は……
「よぅ、クラウス。よく眠れたか」
聞こえてきた声が、懐かしい、とても懐かしい声が。
「それともハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトと呼んだ方が良いか?」
共に汗を流し、共に戦い、共に青春を謳歌したかけがえのない親友であり憧れでもあった一番の友。
「取り敢えず改めて、久しぶりだな、クラウス」
我慢出来なかった。
満面の笑みでそう名前を呼んだ友にアインハルトは抱き着いた。
さて状況を整理しよう。
起きた?名前どっちで読んだ方がいい?
↓
無視される
↓
もしかして怒ってるのかな?それとも覚えてないとか?取り敢えずもう一度挨拶しよう
↓
なんか泣きながらクルイン、クルイン言いつつ抱き着いてきた
↓
えっ、ちょ、ボクヨクワカンナイ←いまここ
さぁてまるで泣きつかれている意味が分からない。それにとてもいい匂いがするし柔らかい。取り敢えずどうすればいいか分からないので頭を撫でながら謝ってみる。
「ごめんなぁ、寂しかったか?1人にして悪かったな」
一瞬ビクンッと身体を跳ねさせたがすぐに緊張が解けよりいっそ抱き締める強さが強く、そしてさらに泣きが強くなったような気がする。
ていうか寂しかったか?とかアホなのか、俺は。もっと謝るべき事は別にあるだろう。
だから頭を撫でつつこう言った。
「もうお前は1人じゃない、俺がいる」
なんか更に泣き声が大きくなった。もう良く分からない。ていうか何だか俺はナチュラルに女の子口説いてるんじゃないか、この状況。いやないない、相手はクラウスだぞ。俺達男どう……いや違った、今はクラウスは女の子だった……
気付いた頃には時すでに遅し
「ルーン君、アインハルトちゃ……」
「あっオワタ」
世界はいつだって 〜完〜
「こほん、すみません。お見苦しい所を見せてしまって……」
「いや良いんだ、気にするな」
今彼らは少し遅めの朝食を食べている。そう、ルーンを除いて。
「あ、アインハルトちゃんどんどん食べてね。私間違えて多く朝食作っちゃったみたいで」
「あの……ええっと…」
「キャロさん、それ僕の…」
「ん?ロリコンで変態でふしだらで変質者でラノベ主人公なルーン君はそんな事言える立場なのかな?」
「イエ、ボクガスベテワルイデス」
「ん、よろしい♪」
怖い、いつもは可愛らしい笑顔が今は物凄く怖い。唯一の癒しとも呼べるご飯タイムが正座だけで過ぎていく今この1分、1秒という時間が確実にルーンのライフをガリガリ削っていく。
ここは決意せねばならない時、そう男はいつだって気合いと根性なのだ。ならばここでやらないでいつやるのだ!
見せろ!男気を!
「何でもしますんで僕にどうか朝食を食べるチャンスおぉぉぉぉぉ!」
故にルーンは頼む、土下座で。
男気もへったくれもルーンの中には無かったようだ。
「……何でも?」
思いの外ボス(キャロ)に効果があるようだ。ここでもう一押し、何か決定的な一押しががあればあの理想郷(朝食)を!
「はい、それはもう次の休日は全てキャロに捧げますしブラック企業管理局をぶっ潰せというのなら今ここでフルドライブを発動し攻め落として見せましょう!」
安心してご飯を食べれない世の中なんて間違ってる、そうだ全てあのブラック企業管理局が悪いのだ。こんなか弱い14歳の少年を社畜として仕立てあげこき使う管理局が真の悪であり敵。さぁ行くんだ、敵は本能寺にあり!
「じゃあ……次の休日付き合って欲しいところがあるんだぁ、いいかな?」
「おーけー、任せろ。今みなの安心して食卓を囲める環境を作って……えっ?」
「だめ……かな?」
「お、おぅ……それならいいぞ」
上目遣いと若干の涙目、そして赤面と来た。何だかこっちまで恥ずかしくなってしまってお互いに黙り込んでしまう。
この2人さっさとくっつけばいいのに、同じ部隊に所属した同期が言っていた言葉だ、まさにその通りだと思う。更に今ではたまに同じ屋根の下で寝泊りしているというのに特にこれといった進展はない。
「さ、さぁ早くご飯食べてノーヴェさんのところに行こう」
そう急かすように急いでご飯を食べるキャロは未だに顔が真っ赤で時々喉にご飯をつっかえ可愛かったそうだ。
いつからアインハルトがヒロインだと錯覚していた!
まだヒロインは内緒です、あぁ彼は女の子が好きなんじゃなくて何となく保護浴を掻き立てられる女の子が好きなロリコンタイプです←