魔法少女リリカルなのは 原初の勇者   作:黒色狼
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戦闘回ですが2つに分けます


第10話




「えっ?、いきなり何を…」

突然フェイトが自分を人造魔導師だとカミングアウトして来たのでユウは少し動揺した。PT事件にも関わっていたユウはフェイトが人造魔導師だという事は知っていたのだがこの場でその事を言って来た意図が分から無かったのだ。
しかしフェイトの瞳には不安と期待が揺らいでいる。適当な理由で言おうとしているように見えない。

「そして私は失敗作、私はそれを聞いた時絶望して全て諦めてしまった。けどそんな私の手を引いてくれた子がいたんだ。だから私もそういう境遇の子達に手を差し伸べてあげたい。そしてそんな境遇の子達を生み出してるジェイル スカリエッティが許せない」

フェイトはジェイル スカリエッティが許せなかった。望まれて生まれた訳でもなく、結局は道具として扱われ絶望の淵に落ちていくであろう子達を生み出してる事を。誰しもが自分のように手を差し伸べてくれる者が現れるとは限らない。
なら自分がなれば良いとフェイトは積極的に孤児の保護や違法研究施設の検挙を行っている。
もちろん、ユウを危険なめに合わせたくないのもあるが今のフェイトの行動理念は此処から来ている。ユウが何を言おうと無駄だろう。


「どう、私が人造魔導師だと知って軽蔑した?」


そう尋ねてくるフェイトはとても不安そうな顔をしている。
最初に見て取れた不安の色は、自分の思いの内を打ち明ける事によって自分の事を知られ軽蔑されてしまうかもしれないという事からの不安だったのだろう。
そう問い掛け此方の答えを待つフェイトの顔は不安に揺らいでいる。

「そんな訳ないよ、人造魔導師も普通の人もなんら変わりない命だ。それに君はフェイトと言う一人の人間だろ、僕はフェイトという人を軽蔑もしないければ否定もしない。もしろ凄いと思うよそう思えるのは。それに…僕は何年か実験台として薬漬けにされ試験管暮らしだったから」

フェイトは自分の存在を肯定してくれるユウの話を聞いていて不安の色は無くなり顔が綻んでいたが後半の話を聞くと次はフェイトが驚愕で動揺していた。

「えっ、うそ…」

「本当だよ、けど僕もある人に手を差し伸べて貰って此処にいる。だから…今度は僕がみんなを守ってみせるんだ」

その顔には悲しみと決意が入り混じっており意思の強さをひしひしと感じる。
何としても成し遂げてみる、そう感じさせる雰囲気をユウは出していた。
それでもフェイトはユウを行かせる訳には行かない、確かに先程の話は驚いたが自分にも曲げられない事もあるのだ。

「どうしても付いて来るんだね?」

「うん、ユウの為にも自分の為にも私は付いて行くよ」

その言葉をユウが聞くと俯きどうしたのかと思うと次の瞬間、ユウの姿は消え自分の首元に強い衝撃を感じた。
そのままフェイトは意識が遠のいていき、倒れてそうになる所でユウに抱き止められた。
そしてその意識が闇に落ちていく寸前、最後に見たのは「ごめん」と口を動かし申し訳無さそうにしているユウの姿だった。




[フェイトさんには悪い事をしましたね]

「そうだね、けどこれ以上は迷惑を掛けれないよ」

先程、ユウは素早く移動しフェイトを気絶させたのだ。
フェイトは今気を失いユウの部屋のベッドに寝かしている。それにフェイトを連れて行ったとしてもユウの邪魔になるだけだろう。シュバルツは恐らくフェイトよりも強いだろうし一人の方がユウもやりやすい、ずっと一人で戦って来たのだから…


「デュナミス、街の外まで転移だ。今すぐスカリエッティの所に向かうよ!」

[了解です、これは…外に大規模な結界が張られている様で荒野までの転移が出来ません。恐らくスカリエッティの対策かと]


どうやらユウの空間転移を警戒してか特殊な結界が張られ転移を阻害されているようだ。
そのせいで転移する為には座標を固定しなければならないのだが固定が出来ず転移は出来ない。
した方がないのでユウは近くまで転移して其処からは飛行魔法で向かう事にした。
しかし彼は気付かない、フェイトの胸元で点滅している三角形のネックレスに。





















街の外近くに転移して来たユウはスカリエッティが言っていた外れの荒野に向かっていた。
此処、ウミリアは水に溢れ自然が豊かだ。なので荒野なんて数えれる程しかない。
それにシュバルツが自分の居場所をユウに伝えているかのようにシュバルツ魔力を凄く感じる。
その魔力を辿ると割と簡単にシュバルツの姿を確認出来た。その近くには研究施設の様なものがある、其処にスカリエッティは居るのだろう。まるでユウが来るのを分かっていたかの様にユウの姿を確認するとニヤッと笑みを浮かべた。

「待っていたぞ、ユウ レグラス」

「僕が会いに来たのはスカリエッティの方なんだけどね」

「御託はいい、さっさと始めようぞ!」

先手はシュバルツ、簡易なスフィアを複数形成しそれをユウ目掛けて放ってきた。
恐らくこれは牽制とユウはデュナミスの引き金を引き、魔力弾で全て相殺する。爆煙が晴れる前にシュバルツがユウの目の前に姿を現した、先程のスフィアは牽制用だと読んでいたユウは瞬時に空へと飛び距離を取った。だが、

「ライトニング ムーブ」

その瞬間、シュバルツの姿がぶれた。
距離を取ろうとしていたユウだが目にも留まらぬ速さで距離を詰められてしまう。

「ふっ」

「くっ!」

神速の剣がユウに幾度となく振るわれるが全て身体を逸らしたりするだけの最小限の動きで躱す。しかしシュバルツの剣は止まらない、ユウに反撃する暇はなく防戦一方だ。

「どうした?逃げ回っているだけでは我には勝てないぞ。はぁ、翔閃!」

ここで更にスピードが増したシュバルツが自分の剣に空気を纏わせ振るってきた。
直感でこれは躱せないと判断したユウは咄嗟に目の前の空間を捻じ曲げ防御したがあろう事かその空間にシュバルツの剣は食い込んで来ている。
このままでは破られるのも時間の問題、しかし空間転移は使えない。そのまま空間を斬られその凄まじく荒れ狂う剣は振るわれた。
その一帯が揺れ、空気が振動する程の威力だったがユウの姿は霧散し消えていた。

「なに?転移は使えない筈…」

「なにを余所見してるんだい?僕はこっちだ」

後ろにユウはいた。確かに今ユウを斬った筈なのだが手応えが無かった。幻影魔法の類かと思い周りを探知するが目の前以外にユウの気配はない。ならば何度でも斬って伏せるのみ、そう思ったシュバルツは一瞬でユウの懐に潜り込みユウを斬った。しかしまた手応えがない。

「どうした、僕はこっちだよ」

また後ろにはユウがいた、何かがおかしい。しかしその原因がわからないシュバルツは目の前のユウを斬って斬って斬りまくる。


「貴様、舐めているのか!姿を現せ!」

斬っても斬っても偽物のユウばかりで嫌気が指したシュバルツはそう叫ぶ。
すると、

「待たせたね、けど……これで詰みだよ」

シュバルツよりかなり上の方にユウは現れた。しかし現れたのはユウだけでは無かった。いつの間にか自分の周りの空間には数え切れない程の魔力弾が浮かんでいた。
おかしい、これほどの量を展開するのならシュバルツ自身が気付かない訳がない。しかし現にシュバルツは魔力弾で完全に包囲されている。

「貴様、どうやって…」

「簡単な事だよ僕の幻影魔法、ファンファクトゥムで君に僕の存在を誤認させ誘導しインビジブル迷彩で魔力弾を隠しながら配置していき其処に誘き寄せたって訳だよ」

ユウの使える魔法、ファンファクトゥムは幻影魔法で相手の認識を誤認させるという魔法だ。
例えば顔見知りの相手にもこの魔法で他人だと誤認させれば気付かれる事はない。
しかしその場で自分は誰だと認識されている状態からは誤認させる事は出来ない。もう一度誤認させるには一度姿を消さなければならない。

ユウは最初からファンファクトゥムを発動しておりシュバルツに自分の存在を誤認させて幻影と戦っている内にこの膨大な数の魔力弾で配置したという訳だ。

「これで終わりだ、ドライブシューター ノヴァエクスキュージョン!」

[NOVA EXECUTION ]

こうしてこの膨大な数の魔力弾は一気にシュバルツへと降り注いでいく。