魔法少女リリカルなのは 原初の勇者   作:黒色狼
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第12話





今なのはとユウは荒野で剣聖シュバルツと対峙している。
しかしユウは既に手傷を負い魔力の消耗も激しい。もはや回復魔法に回す魔力すらない程だ。


「一人増えたか、しかしそれもよかろう!我の前に立ち塞がる敵は全て斬り伏せるのみ!」


そう叫び上げシュバルツは突撃した、なのはは後ろに飛び二人から大きく距離を取った。
なのはの魔法のタイプは砲撃型なので接近戦は全く出来ないという訳ではないのだが二人についていけるかと聞かれると無理だ。
二人の超高速戦闘に割って入っても直ぐに撃墜されるだろう。

しかしシュバルツにはデュアルがあるこのまま同じように戦っても負けは見えている。
此処でユウは手札を一つ切る。

「なのは、すまないが少し時間を稼いでくれ」

「うん、分かった!」

するとなのははアクセルシューターを複数作成しシュバルツ目掛けて放つ。
しかしその程度の魔力弾、シュバルツに当たる筈もなく全て斬り伏せられてしまう。
なのはの方が撃墜しやすいと判断したシュバルツは一気になのはとの距離を詰める。そしてデュアルを放つが寸前でプロテクションでガードされる、しかし徐々に食い込んでいく剣先。

「バリアブレイク!」

[barrier break]

自分の防御が抜かれる事なんて百も承知。
自らそのバリアを割り爆発させる。少なからず自分にも被害を被るが再び距離を取る事に成功する。

「ほう、なかなか面白い防御だ。しかしそう何度も使えるもんではないだろう」

「そうだよ、けど時間は稼げた」

先程のバリアブレイクで自分も爆発の影響を受け少しダメージがある。
しかしあくまで自分は時間稼ぎをしたまでだ。本来はシュバルツに近付かれればその時点でほぼ負けだ。
この僅かな時間、しかしユウの準備が終えるのには充分な時間だった。

「ブレードフォーム、Secondモード!」

[blade form Secondモード]

Firstモードは一振りの剣、Secondモードは二本の剣となる。そしてこのモードになる事で己に掛けてあるリミッターは解除される。
先程まで枯渇していた魔力は本来C+程しかない魔力量が今ではS近くまで膨れ上がっている。
そして右眼が自分の魔力光と同じ翠色になっていた。

「面白い、本当に面白いぞユウ レグラス!先程とは見違えるほどの魔力だ、そうでなくてはなぁ!」

次はユウに狙いを変えユウに迫るシュバルツ。そしてデュアルを放つ。
先程までは同時に二つの斬撃を生み出すデュアルに対応出来なかったが今は違う。左手の剣で迫り来るシュバルツの剣をパリィし、訪れるデュアルの斬撃を右手の剣で防いだのだ。

初めてデュアルを防がれ最初は驚きの色を見せていたシュバルツだが直ぐにその顔は嬉しそうな顔になる。

「デュアルを防ぐか!面白い……面白いぞぉぉ!」

凄まじい剣技のぶつかり合い。もはや両者の剣はブレて見えており他に介入させる隙すらありもしない。
攻撃、防御、躱し、防御、防御、攻撃、躱し攻撃、防御と連続で行う二人。
しかし此処でシュバルツがいきなりバランスを崩した、ユウがある奥義を使ったのだ。

想護流 奥義 流刃。
想護流を最強たらしめる奥義の一つでまるで其処には何も無かったかのように相手の攻撃を受け流す奥義だ。
流刃を受けたシュバルツはまるで空気を斬ったように感じバランスを崩してしまったのだ。
そしてユウは更に奥義を放つ。

「想護流 八の型 奥義……空神連呀衝!」

その二刀から神速の斬撃が放たれる。何度も何度も斬撃を放っているが余りのスピードで何度斬ってどうやって斬っているのかは分からない、そして最後に大きく二刀で切り払い、空中に居るにも関わらず前方2キロは余りの威力で地面が抉れた。

しかし此れで終わりでは無かった、彼方へと吹き飛んだシュバルツだがそれを補足し狙う者がいた。

「いくよ!全力全開!スターライト…ブレイカァーー!」

追い討ちを掛けるように放たれた桃色で極太の光はシュバルツ目掛けて飛んでいき辺りを吹き飛ばした。
なのははユウに言われ収束魔法の準備をしてたのだ。

「やったの?」

「……いや、まだだ」

二人は飛ばしたシュバルツを確認しに来たのだがあれ程のダメージを与えたというのにシュバルツはまだ立っていたのだ。
この男は不死身なのかと思わざるおえない。しかしバリアジャケットはほぼ破け満身創痍の姿だ。

「素晴らしい……素晴らしいぞ!その生温い攻撃で此処まで我を追い込むとはな。しかしそれでは我は倒せぬ、良いか?此れが攻撃というものだ!」

みるみるシュバルツの魔力が膨れ上がりまるで火山のようだ。
どうやらその魔力は殆ど右手、剣に集中しているようだ。

「受けてみよ!闘蓮刃破!」

その剣を勢い良く突き出し莫大な魔力の槍、砲撃がユウに向かって飛んできた。
このままではなのはが巻き込まれてしまう、なのはの前に出て二刀を交差し受け止めようとするが…
在ろう事かその砲撃はユウの目の前で消えたのだ。何かが可笑しい、そう思った時には遅かった。

後ろにいきなり現れたその槍状の砲撃はユウでは無くなのは目掛けて飛んでいく。
そう最初からシュバルツの狙いはなのはだったのだ。
いきなりの事で咄嗟に防御しようとしているが間に合わないだろう、仮に間に合ったとしても流石のなのはでも防御仕切れず自分ごと貫かれてしまう。

ユウが気付いた時にはもう既になのはの目の前までその槍状の砲撃は迫っていた。
また自分は守れないのか…そう頭に過る。目の前では防御が間に合わないと判断しギュッと目を瞑り強張っているなのは。
あれが当たれば身体は貫かれ生死は分からない。

(守るって誓ったんだ……もう二度と大切な人を失わない為に!だから……僕は守ってみせる!)



ユウは自分の運命を滅茶苦茶にされた原因で嫌う魔法の一つであり、自分の血が受け継ぎ使える魔法の二つの内の一つを使う。

ユウの十八番の魔法の系統は4つ。

空間、時空、時間、運命だ。

うち己の血が受け継ぐ魔法は時間と運命。これが原因で過去ユウは一族を滅ぼされ実験道具とされたのだがその話は此処では割合させて貰おう。

中々制御出来ずユウも使いこなすのに何万年と掛かった。
そして今回発動したのは運命魔法。
さしずめ奇跡の魔法。

出来事の運命を好きなように変えたり出来てしまうまさに奇跡の魔法なのである。
例えば、かなり強力なバリアがあったとしよう、それをかなり弱い魔力弾で破壊する事も出来る、その時は運命を[この魔力弾でそのバリアは貫かれる運命]と運命操作すれば良いのだ。

しかしこの魔法が使えるのは24時間に一度のみ。更に変えにくい運命である程制御が難しく失敗すれば自分の都合が悪いように運命が働き掛けるので非常に使い勝手は悪い。

だがこの魔法には裏技がある。自分が傷付くような運命操作ならいとも簡単に操作出来てしまう点だ。
なのはさえ助かれば自分なんてどうだって良かったユウはこう運命を操作する。
『なのはの代わりに自分が貫かれる運命』と。

次の瞬間、なのはが目を開けると目の前には身体に穴を開け大量の血を流すユウが立っていた。

「ぐふぅっ」

「ユウ!そんな……どうして…」

「まさかあれを防ぐとは…だがそれではまともに戦えまい」

腹に穴を開けふらふらと空中を飛び今にも落ちてしまいそうだ。
血も絶え間無く流れ続け口からも血を吐いている。間違いなく致死量の出血だ。

「なの、は…無事か?」

「私が無事でもユウが…」

「無事なら…それで、良かった」

[ユウ!これ以上の戦闘は危険です、今すぐ治療か撤退を!]

再びその無残な姿でシュバルツに向き直るユウにデュナミスがそう言う。
この量の出血で意識を保っているだけで既に可笑しいのだ。
しかしユウは治療も撤退もしようとしない。ユウが今立ってているのはシュバルツからなのはを守る為、それだけでユウの身体は動いている。

そしてユウはシュバルツに向かって飛ぶ、明らかにスピードもキレも先程に比べて落ちているがそれでも戦えている。しかし戦い剣を振るい動く度に出血し時に口からも吐血している。

「もう…止めてよ…お願いだからもう止めて!」

なのはが二人の間に割って入る。いきなりなのはが現れたものだから二人とも驚いたがシュバルツは的確になのはに剣を振るう、しかしそれをユウが許す筈もなく弾く。
仕切り直しとシュバルツが大きく距離を取りそれをユウが詰めようとするが出来なかった。

「なの、は。お願いだ…離してくれ」

「嫌だ!嫌だよ!もう止めて、本当に死んじゃうよ」

戦闘中にも関わらずなのははユウに後ろから抱き着いていた。
そう叫ぶがそれでもユウは止まろうとしなかった。そんな時不意になのはは叫ぶ。

「お願い、もう止めて優くん!」

それは懐かしい記憶をなくす前なのはがユウの事を呼ぶ時の呼び名だった。