魔法少女リリカルなのは 原初の勇者   作:黒色狼
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今回もまったり行きます


第1話





「報告します、ロビーには既に隊長陣、フォワード、バックヤード陣は全員集合しています」

「そっかぁ、結構早かったな。それじゃあ皆んなに挨拶いきますか」

そう報告しに来たのはグリフィス ロウラン。機動六課の交代部隊責任者かつ隊長補佐の一人でもある。そしてレティ提督の一人息子でもある。
そして報告を受けた茶髪のショートヘアの女性こそこの機動六課の課長で総部隊長の八神はやて。
彼女も優と面識があるのだがもちろん彼女は覚えていない。

「そういえばレン クルーガーさんから管理局本部から依頼が入り遅れるとの事です」

「そうか、分かったわ。あの次元世界最強のレン クルーガーが此処に入るって言ったらみんなどんな反応するか楽しみやわ」

レンは今や時の人。
このミッドチルダで彼の存在を知らない者は殆どいないだろう。何年も前から活動しており彼に憧れ管理局員になった者や目指す者は多い。幾度となく人を救い、どんな事件をも解決するレンは次元世界最強と言われ英雄視されている。
そんな人と職場を共にすると聞いたら誰もが驚愕する事だろう。

そしてレンがいない中、発足式は始まろうとしていた。





















今日は機動六課の発足式当日。
もちろん優、レン クルーガーも参加する。
しかし只今絶賛遅刻中である。


「質量兵器持ってたからって呼び出すのは止めて欲しいよ…」

[管理局は私たちを便利屋だと勘違いしてるみたいですからね、其処を左に曲がって真っ直ぐです]

そして優、此れからはレンと呼ぼう。
質量兵器を持ち港の倉庫の辺りを占拠しているグループを鎮圧して来たばかりのレン。
質量兵器に恐れをなした管理局がレンに協力申請をして来たので仕方がなく出向いたのだがそのせいで機動六課に向かうのが遅れてしまってレンは今、機動六課に向かって走っている。別に転移で行っても良いのだが基本的にそういう魔法の行使は禁止されているし今から管理局に民間協力者としてだが入隊するのだから初日からルールを破る訳にもいかず走っているという訳だ。

暫くすると機動六課に着いたレンだが発足式は既に終わった後。仕方がないのでレンは総部隊長室へと向かう。

「そういえば此処の課長、総部隊長ははやてだったね。聞いた時は驚いた、こんな状態じゃなければおめでとうの一つでも言うんだけど…」

[そうですね、本当にレンは何かしら記憶を消した人と一緒になる運命ですからね]

縁起でもない事を言うなと言い放つレン。しかし本当にそうなのだ、前は103航空隊の時はなのはがやって来たし、任務先にはフェイトが来たしでレイのいう事は一理ある。
自分はその者から離れようと記憶を消しているのに記憶を消した者と良く一緒になってしまう。今回もはやてと一緒になってしまったがレンが此処にいるのもある事が解決するまで、それまでなら大丈夫だと踏んでいた。

そうして総部隊長室の前までやって来た、コンコンとノックをすると中からどうぞ〜と聞こえたのでレンは失礼しますと言って中に入っていく。


「初めましてやな、私は此処の課長、総部隊長の八神はやて二等陸佐です。此れからよろしくお願いします」

「ご存知かと思いますが僕はレン クルーガーです。すみません、初日から遅れてしまって…」

「そんなん気にせんでええよ、まだ君の事をみんなには言ってないから後で訓練中のとこに顔出してくれんかな?」

「ええ、構いませんよ。それで訓練場は何処に…」

「はやてちゃん、いまちょっといいかな?」

「ええ所に来たな、なのはちゃん。紹介するわ、彼が言ってた民間協力者のレン クルーガー君や。なのはちゃんも知ってるやろ?コールサインはストゥーム1、主に全体のフォローや遊撃がメインやな」

先ほどレイとそのような話をしていたがまさか本当にまた一緒になるとは思ってもいなかったので驚愕の表情を浮かべる。
しかしフードを深く被りマスクもしているのでその表情は向こうには見えなかっただろう。

《うそ…でしょ。そんな事って…》

《やっぱり運命の赤い糸で結ばれてるんじゃないですか?毎日寝言でなのはさんの名前呼んでるの気付いてます?》

《う、うるさい!こうするのが一番なのはの為なんだ。それに僕なんかの事、なのははどうも思っちゃいないよ》

《そうですかね?案外あっちも寝言で貴方の名前を呼んでるかも知れませんよ》

《お前は本当に余計な事ばかり言って!メンテナンス抜きにするぞ!》

念話でギャアギャアと口論をする二人。実はほぼ毎日口論をしていたりする。しかもそれは殆どなのはに関しての事ばかりでだ、レイもレイで痛い所を突いてくるので優はいいように言われっ放しである。

「初めまして…かな?私は高町 なのは一等空尉です。此れからよろしくお願いします」

「あ、ああ。此方こそ宜しくお願いするよ」

まさに今レイになのはの事に関して痛い所を突かれ意識してしまい顔を見て話せなかった。しかし今はフードを深く被っているので赤面しているのも目線を逸らしているのもバレてはいないだろう。
そしてチラッとなのはの方を見る。
其処には笑顔で此方に挨拶をして来ているなのはが見える。
違う、レンはそう思った。

この笑顔は自然に出て来たものではない、自然に出て来るなのはの笑顔はもっと輝いている。それは自分が一番好きな顔なのでレンには分かるのだ。
やっぱりなのはは何処か無理をしているのだろう、自分がユウ レグラスがあの日消えた事によってなのはは一時期塞ぎ込んでいたと聞く。それからまた無茶をしているのだろうか?それともまた自分がなのはの足を引っ張っているのだろうか?
そう思うと心苦しかった、なのはのこんな顔をする所は見たくない。

いつもそうだ、守ろうとしても何一つ守れない。アベルとなる前、大切な者を守れなかったのは一度だけではない。
家族を守れず、幼馴染も守れず、恋した相手も守れず、自分を救ってくれた人も守れず……そして最後、アベルとなった瞬間の頃もそうだった、恋した相手を守れず失いもう誰も好きにならないと思った矢先その者に惹かれてしまい結局好きになっていた。
そしてその子も最後は自分の命を助ける為に……

それからだ優のアベルとしての無限転生が始まり何億年という途方もない時間を一人で戦い世界を救ってきた。
そして今この世界で優はもう誰かを好きになる事は無いと思っていたがある人物に惹かれその者を守ろうとしている。
初めてあの笑顔を向けられた瞬間から優はその者、なのはに惹かれていった。

太陽にも負けない輝かしいあの笑顔。どんな事にもめげず一生懸命な彼女の姿を見て優は再び恋をした。
その笑顔を守る、絶対になのはを守ってみせると心に誓ったのに結局はこのザマなのだ。
あの頃から、何も出来なかった弱い自分となんら変わっちゃいない。そんな自分が嫌でこの何億年という時間の中で優は必死になって努力をして此処までの実力を身に付けた。

しかしそれでも自分は大切な者一人すら守れないのか?

やっぱり自分と関わると不幸になってしまうのだろうか?

それでも優は今度こそ、今度こそ絶対に守ってみせると誓ったのだ。
目の前のなのはを見てそう決意を強める。

「えっと…私の顔に何か付いてるかな?」

「へ?あ、い、いや大丈夫そんな事ないよ。少し見惚れてしまっただけだよ」

どうやらずっとなのはの事を見つめていたようで流石に恥ずかしかったのかそう言ってきた。
それにレンがまた見惚れてた、なんて言うものだから微妙な雰囲気が流れる。

「レン君、私の目の前で口説くのは止めてくれんか?」

「く、口説いてなんか無いですよ!」

[ええ、此れはレンの素です。だから尚更タチが悪いのですがね]

「お前はもう黙っててくれ…」

苦笑いを浮かべるなのはに、溜息をつくはやて。目の前ではデバイスと言い争うレンの姿がある。

「なんか思ってたよりフレンドリーやな」

「うん、そうだね。私ももっと規律正しい人なのかと思ってたよ」

なのははそして思う、確か103航空隊に同じような人がいた事を思い出す。
何となくその人と雰囲気が似ているのだ。そしてその人と同じように懐かしい感じがする。

(この人…ユウに似てる…それに何だろう、胸が暖かい?)

レンを見ているとユウの事を思い出し少し悲しくなったが、それと同時に胸の中が暖かくなるのを感じた。

その感覚はユウを見ていた時も感じていたが本人自身も良く分かっていない。

少しずつ、少しずつだが確かにいつしかぽっかりと空いたその心の穴は埋まっていくのだった。





レンが付けてるマスクはシャ◯やフル◯ロンタルが着けてるようなマスクを想像して下さい。

そしてフード付きコートはXIII◯関が身に付けてるような、不思議とフードを被ると顔が見えなくなる便利な代物です←