魔法少女リリカルなのは 原初の勇者   作:黒色狼
<< 前の話 次の話 >>

24 / 30
第9話






第一級警戒態勢のアラートが鳴り響く中、フォワードメンバーは副隊長とフェイト隊長を除くメンバー全員が最新鋭機のヘリコプターへと乗り込む。

レンのコールサインはストゥーム。
ストゥームはある国の支えるという言葉、ストゥニールから取られた名だ。
その名の通りメインはフォワードメンバー達でレンの役目は遊撃やフォワードのサポートがメインである。

其々が緊張した面影を見せる中でヘリコプターは離陸する。
新人フォワードメンバーは初めての出動でもあり新しい相棒を使う初めての場でもある。
緊張しない方が可笑しいのだ。
しかし何処かキャロはより一層緊張している様に見える。

「キャロ、大丈夫だよ。君は強い子だ、自分の中のやりたい事を全力でやるだけでいい」

そう言ってレンはキャロの頭を撫でる。すると固かった顔は直ぐに元に戻り笑顔になった。手を離すとキャロは少し残念そうな顔をするが今はそんな場合ではないのは分かっている。



(私のやりたい事…みんなを…レンさんを守りたい!)


キャロは自分の持つ力を恐れている、しかし自分には守りたいものがある。なら恐れている場合ではないと顔を引き締める。

「分かってると思うけど今回の目的は車両の真ん中にあるレリックの回収、スターズとライトニングが両端の車両から侵入して先に真ん中に付いたほうがレリックを回収して」

「車両の中にはガジェットが30機以上いると報告が入ってるです、その中には新型のガジェットもあるかも知れないですから私も現場でお手伝いするですよ!」


今回の目的はガジェットの殲滅とレリックの回収。両端からスターズとライトニングが突入して回収する手筈となっている。
リインも一緒に行くので想定外の事態が起こらない限り大丈夫だろう。

「空に無数のガジェットを確認!数は不明、恐らく1000は超えてるかと」

「なら空は私とフェイト隊長が…」

「いや、空は僕がやるよ」

何と空からは1000を超えるガジェットが集結しているらしいのだ。
もし車両へと降り立てば新人達では少し荷が重いだろう。其処でスターズとライトニングの隊長であるなのはとフェイトが空で対処すると言おうとするとレンが自分から名乗り出た。

「僕は1対1の戦闘も、1対多の戦いも得意だ。リミッターがある隊長達じゃ少し厳しいかも知れない、だから僕が広範囲殲滅魔法で一気に薙ぎはらう」

基本的にレンのブレードフォームは1対1を想定していて、基本形態のガンフォームはどんな場面も対処出来る事を前提に構成されており完全万能型の魔導師であるレンはどんな場面も得意としているのだ。
それ故に機動六課での役割は基本、遊撃とサポートなのである。
しかし今回ばかりは少し厳しいので空はレンが引き受ける。

「ごめんね、リミッターが無ければ私もお手伝い出来るんだけど…」

「気にしなくていいよ、直ぐに片ずけてくるから。ストゥーム1、レン クルーガー出ます!」

そうしてヘリコプターの後ろから空へと飛び出すレン。
すぐに飛行魔法を発動させガジェットが来るであろう予測ポイントへと飛翔する。
今回のガジェットの数は1000以上、普通なら小隊が幾つも集まって掃討するのだが機動六課には次元世界最強のレン クルーガーがいる。


「レイ、一気にいくぞ!」

[はい、あれを使うんですね?]

「うん、アペイロンレインを発動してからドライブバスターフルバーストを次元空転送で二重発動させる」


次元空転送は発動寸前の魔法を別の次元、時間と切り離した空間へと転移させ此方に戻す際に発動させるという謂わば魔法を保存する魔法だ。
この保存魔法を使えばどんな大規模魔法も一瞬で発動する事が出来るのだ。
その保存魔法を使いレンは広範囲殲滅魔法を二連発で放つつもりなのである。


そしてレンは更に空高く飛翔しかなりの高度まで上昇し其処で魔法陣を幾つも展開、レンの魔力光である翠色の光がその辺り一帯を眩しく照らす。
どんどん輝きが増していき、おびただしい程のガジェットの大軍が姿を現した、そしてレンは引き金を引く。


「アペイロンレイン!」

[Apeiron rain]

レンは自分の横に向けて放つ、すると膨大な量の魔力弾がガジェットへと降り注いでいく。その翠色の魔力弾が弾けては消えを繰り返し、まるで翠の花が咲き誇り舞い散る様な幻想的な光景だった。
この魔力弾は炸裂弾仕様で何処かに当たると爆発する、見境なく降り注ぐ魔力弾がそのガジェットの数をみるみる減らしていく。
そしてこれでもかというようにレンは次の魔法を発動する。

「次元空転送、ドライブバスターフルバースト!」


[Drive buster Full burst]


そして保存された魔法を放つと極太の一筋の砲撃がガジェットがいる辺りへと炸裂する。
翠色の輝きが辺りを明るく照らす。残留する翠の魔力がキラキラと光る中で、先ほどまで空を埋め尽くすように蠢いていたガジェットの大軍は綺麗さっぱり消え去っていた。


[ガジェットの反応全て消失しました]

「久しぶりだったけど上手くいったね」

この手の殲滅魔法は管理局に無理難題を押し付けられてからは良くお世話になっている。
無法地帯で暴れる魔導師を一気に黙らせたり、犯罪グループを一気に制圧するのに重宝していた。
機動六課へと来てからは随分とご無沙汰していたが上手くいったようだ。
自分もフォワードメンバーの援護へと向かおうとすると、

[待って下さい⁉︎次元飛翔で此方に出現する魔力反応が一つあります、コンタクトまで残り8秒!]

「次元飛翔だって⁉︎」

次元飛翔はその名の通り次元と次元の間を通り抜けくる魔法でこの世界のテクノロジーでは使いこなす者はいないとレンは思っていたので驚いた。
相手は間違いなく手練れ、その手に持つ双銃を固く握り締め相手が次元の狭間から現れるのを待つ。

「………」

「お前は…」

次元の狭間から現れたのは自分と同じ様なフード付きのコートに身を包み、そのフードを深く被った者だった。
それに手に持つデバイスらしき双銃はとてもレイに似ている。知らぬ者が二人を見れば何方がレン クルーガーなのか分からないだろう、それぐらい二人の格好は似ていた。

「くっ、やはり敵か⁉︎」

此方の方を見るや否やその手に持つ双銃の銃口をレンに向けて引き金を引いてくる。
レンは咄嗟に躱し二つの魔力弾が通り過ぎる、魔力光は翠でさっきのはドライブシューター。余りにも自分と似過ぎている、レンは相手に違和感を感じながら放たれるドライブシューターを躱し続ける。

躱していても埒があかない、分からない事があるなら相手を倒し聞くだけと頭の中を切り替え同じく此方もドライブシューターを連続で放つ。
お互いにドライブシューターを連続で撃ちながら空を縦横無尽に飛び回る、そのシューターは全てお互いのシューターに当たり相殺されていた。

[座標の固定…これはファントムバレットです!]

なんとあろう事か相手はファントムバレットをも放ってきた。
必中の弾がレンへと迫るが、レンは固定された座標を次元ごと歪める事でそれを躱してみせる。しかし相手は連続でファントムバレットを容赦なく放ってくる、流石にそれは防げないと踏んだレンは空間転移で一度距離を取りファントムバレットを全て躱す。

「これは少し不味いね…」

[そうですね…これは⁉︎]

空間転移で距離を大きく取ったレンは油断していた。相手は全く自分と同じ魔法を使ってくる敵なのだ。
現れたのは無数の魔力弾、インビジブル迷彩で隠されていた無数のドライブシューターは一気にレンに向かって飛んでくる。
いつしかシュバルツへと放った魔法、ドライブシューター ノヴァエクスキュージョンだ。

どうやら空間転移は彼方の妨害で封じられている、空間に干渉し彼方が己の魔力を盛大に流し込み今は空間が荒れているので転移は使えない。なら防御するか躱すか。

そしてその無数の魔力弾はレンへと降り注いだ。