魔法少女リリカルなのは 原初の勇者 作:黒色狼
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第10話翠色の花が咲き誇る様な爆発、その一つ一つにかなり凶悪な威力があり、まるで薔薇のように美しい物には棘があるという言葉を体現しているようだった。
「きれい…」
誰かがそう呟く、ヘリコプターに乗り込んでいる機動六課の者達はその美しさに一時的に任務の事なんて忘れ見惚れていた。
あれがレン クルーガー。
次元世界最強の魔導師、その実力の一端を垣間見た新人フォワードメンバーは身震いする。
あんな人と自分たちは肩を並べ任務をこなさなければならないのか、そう思うと自然と肩に力が入る。
「流石だね、レンさんは。私たちも頑張らないとね!私たちには私たちにしか出来ない事がある、レンさんは私たちの為に空を抑えてくれてるから安心して列車を制圧出来る、あくまで私たちがメインでレンさんはそのサポートなの、頑張ってやらないとレンさんに笑われちゃうよ」
そんな様子のフォワードメンバー達にそう笑顔で声を掛けるなのは。
そうあくまでレンはサポート役。
本来の目的はレリックの確保なのだ、そしてそれをするのは自分たち。そのサポートをあのレンがしてるのだからこんなにも心強い者はない。
「そうだよ、頑張ろうみんな!」
「スバルの癖に生意気よ、当たり前でしょ」
「はい、頑張りましょう!」
「必ずやり遂げてみせます!」
「きゅるう!」
仮にも自分たちはあのエースオブエースと次元世界最強に訓練を付けて貰っているのだ。ガジェット如きに負けるなんて許されない、彼らの顔にはそれぞれやる気に満ち溢れていた。
「じゃあスターズ、ライトニング…出るよ!」
『はい!』
そうして彼女たちは出撃する、そして空に出ると空中で巨大な魔法陣を展開するレンが見える。
その大きな存在が自分たちを後押ししてくれる、自信とやる気を胸に列車へと突入するのだった。
翠色の魔力弾、アクセルシューター ノヴァエクスキュージョンはレンへと炸裂した。
次元飛翔で現れたフードの男は爆煙で覆われている場所をまるで何も感じていないかのように見つめる。
「……⁉︎」
「へぇ、やるね」
突如背後に現れたレンの魔力刃での攻撃を咄嗟に己のデバイスを剣へと変形させそれをパリィし防ぐ。
そしてお互いに距離を取る。
レンの右目は翠色に変わっている。
そうレンは己のリミッターを外しある魔法を発動させていた。
そうイリュージョンシルエットだ。
咄嗟にレンは自分の幻影を遠くに創り出し、其処へと移動したのだ。
リミッターを外したのは今回の相手は侮れないからだ、何せ相手の正体は恐らく…
「はぁ!」
レンは一気に距離を詰め、その手に持つ二刀の剣のデバイスであるレイを連続で振るう。
しかし相手もその手には同じ様な二刀の剣を握っている、それに応えるように全てパリィされる。魔力刃と魔力刃が何度もぶつかり合い翠色の魔力が周りを舞い散る。
レンは瞬時に足場を作り、想護流 歩法術の月円で後ろへと神速のスピードで回り込み剣を振るう…が
確実に捉えた筈だがまるで残像を斬ったかのようにすり抜け躱されてしまう。
レンは此れに身に覚えがあった、此れは自分の使う魔法の一つである。
相手に僅かな重力磁場を浴びせ感覚を鈍らせ、自分には少しの加速魔法を掛けまるで残像を攻撃したかのように思わせる合わせ技だ。
自分の魔法に四苦八苦しながら何度もレンはフードの男と刃を合わせる。
どうやら想護流は真似出来ないらしい、それもそうだ此れは想いを刃に乗せる剣。
真似しても想いの込もらぬ剣などレンには通用しない。それ故に相手の刃は実に軽かった、魔法で強化したり騙し騙しでやっとレンとこうして斬り合えていると言った所だ。
そしてフードの男は其処でいきなりバランスを崩す。
想護流 奥義 流刃だ。
此れをされてバランスを保てる者はいないだろう。此処ぞと言わんが如く同じく想護流の歩法術 先瞬で移動しながら剣をフードの男目掛けて振り抜く。
しかし相手は空を斬った方でない方の剣でそれを防いでみせる。
先瞬で高速移動しながら何度も斬るレンに対してフードの男は幻影を上手く織り交ぜ、そのイリュージョンシルエットなどを使い互角に渡り合っていた。
何度も流刃でバランスを崩させるがパリィされる。
先瞬で移動し神速のスピードで斬りつけてもパリィされる。やられはしないが倒す事も出来ない。
「お前…アクセラレーションを⁉︎」
よく見るとフードの男の右目はレンと同じく翠色であった。しかしレンの様に輝く翠でなく深い色の翠だ。
相手は時間系の魔法で限界まで自分を加速させていた、だからレンの攻撃を悉く防げたのだ。しかしアクセラレーションは脳にかなりの負担が掛かる、レンは長年に渡り特訓を積んできているので長い時間使う事が出来るが目の前の相手はそうではない。
恐らくだが此方の攻撃時だけに発動して防御しているのだろう。
相手がアクセラレーションを使うならばとレンも発動する。
常人ではまず目視する事が出来ない、それ以前に斬られた事すら分からない程のスピードで斬る。
がそれをパリィされる、アクセラレーション状態で先瞬を使い斬り付ける。これは流石に防御出来ないのか少しづつ当たるが上手く逸らされ決定打にはならない。
ならばとレンは更にスピードを上げる、次の瞬間レンの姿が複数見え同時に斬り掛かる。
想護流 二の型 瞬閃。
その神速をも超えるかという物凄いスピードでレンは剣を振るった。
相手の剣をすり抜けるように抜けそのまま剣は諸にフードの男へと当たる。
そのままレンは先瞬で何度も斬り付け最後は回し蹴りで地面へと叩きつける。
「此れでとどめだ!」
レンは追い討ちを掛けるべく地面に食い込むように倒れているフードの男へと迫る。
が寸前でその姿は光に包まれ掻き消えてしまう、この光は恐らく転移だろう。
まんまと逃げられてしまった。
「逃げられたね…」
[そうですね、あの敵の正体はやはり…]
「十中八九、僕のクローンか何かだろうね。アベルの力は使えないだろうけど時間と運命の魔法はちょっと厄介だね。最後の転移を見る限り僕の使える魔法は大体使える筈だよ、目も…忌わしい翠だったし…」
あの敵はあまりにもレンに似すぎていた。
遂にスカリエッティが動き出したのだ。どうやったかは知らないが自分のクローンを創り出すのに成功したようだ。
転移魔法に時間、幻影魔法すら真似してきた。もし此れで運命魔法を使えるのなら非常に不味いだろう。
しかし目が翠だったのだ。
レンは翠が嫌いだった、自分の魔力光でもあり右目の色でもある翠が。この瞳の色はある種の呪いのように感じているレン。
この瞳のせいで自分は酷い目にあってきた、全てを失ったのだ。
あの忌み嫌う翠の瞳をしているのだから油断は出来ない。
[取り敢えず、列車の方に行きましょう。彼らが心配です]
「大丈夫だよ、僕はみんなを信じてるから」
そう言ってレンは列車の方へと向かうのだった。