この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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夏休みってなんなんですかね(遠い目)


第13話




キリトとアスナは声の聞こえた方へと全速力で向かう。
嫌な予感がする、キリトの直感がキリキリとそう感じさせる。そう離れてる場所でもないのにこうして移動している時間が凄く長く感じる。

すると徐々に木の数が減り岩陰が見えてくる、そう彼らはあの辺にいたはずだ。
キリトは索敵スキルを持っている、もうほぼ熟練度がカンストしそうな索敵スキルで周りを見渡す。

(数が多い…くそっ、離れるべきじゃなかった!)

どうやら彼らは数多くのプレイヤーによって包囲されているようだ。瞬時にハイディングを行い木の影に隠れる。

「ちょっとき…⁉︎」

アスナが突然木の陰に隠れ出したキリトに声を掛けようとするとそのまま手を引っ張られ口を塞がれてしまった。

「どうやら何者かに包囲されてるらしい、あまり声を出さないでくれ」

分かったな?と聞いてくるキリトにこくこくと顔を上下に動かし肯定する。それを確認したキリトはアスナを解放するが何処か顔が赤い。

どうやらsっ気の強いアスナだが強引にされるのに弱いようだ。
現に、もうぅ…と口を尖らせているが全く怒った様子はなく何処か顔が綻んでいる。何とも分かりやすいのであろうか。

しかしそんな様子にキリトが気がつく訳もなく、意識は彼等を包囲している謎の集団へと向けられている。
此処では声が拾えない、キリトは身を隠しながら素早く木から木へと素早く移動して行く。徐々に声が大きくなっていく。

「此処に黒の剣士が来なかったか?」

「知りませんね、仮に知っていたとしても貴方達のような失礼なお方達に教えると思いますか?」

7…いや8人にもなるプレイヤーが月夜の黒猫団のみなを取り囲んでいる。見るに全員カーソルは緑。

キリトは過去に何度もこういった闇討ちの類のものを受けたことがある。暗殺ギルドの襲撃にあったり、キリトの実力はデタラメだと遊び半分に襲ってきた者もいる。
だが目の前にいるプレイヤー達は手練だ、雰囲気そして立ち振る舞いどれを取っても普通のプレイヤーのそれとは違う。故にキリトは彼等の正体が分からずにいた。

「そうか、それは失礼した。では質問を変えよう、長い髪の金髪の女の子を見なかったか?君達と同じぐらいの年なのだが」

「そんな方は知りません、用は済んだでしょう?お引き取り願えますか?」

「そうしたいのだが此方も任務でね…」

その瞬間凄い速さで剣が抜かれる。
速い、内心賞賛が溢れる程のキレと速さ。だがそれは人へと、自分が知る者へと振りかざされている。考えるより先に身体が動いていた。

ガキィィィィィン

「ほう、やはりいたか」

「俺がいると分かっていてやったのか、趣味の悪い奴だ」

刹那の瞬間、キリトはケイタと謎のプレイヤーの間に割り込んで剣を受け止めていた。
そしてお互いに距離を取る、相手は8人。それも此方を取り囲む様に並んでいる。さすがのキリトも四方八方からの攻撃を防げるかと言われると素直に頷くことが出来ない。

「どうせ呼んでも来なかっただろう?ならこれが一番早いと思ってね」

「…要件はなんだ?俺がに用があるのならこんな事しなくていいはずだ」

「手札は多い方がいいでしょう?では単刀直入に聞きましょうか、貴方と一緒にいるアリス様は何処にいるのですか?」

こいつらの目的はアリスの様だ、それを聞いた時全てがキリトの中で繋がった。

「お前ら…ルーゼリア騎士団か?」

「ほう…一瞬で我らの正体を看破するとは余計に生かしておく訳にはいきません…ね!」

そういうといきなりキリトに斬りかかってきた。的確にそれを流し、そのまま突きを放つ。だが流石は皇宮剣術の使い手でありルーゼリア騎士団と言ったところか、キリトの放った突きを横に滑り込むように剣を当てズラし回転し横薙ぎをしてくる。仕方がなく後ろに下がって躱すキリト。
この一瞬で分かった、奴の腕は一級品。舐めて掛かれば直ぐにやられる。

「これを耐えるか、噂は本当の様ですね」

「そりゃどうも、こっからはそうはいかない。此処から俺は…御神流の剣士だ!」

素早くアイテムストレージからもう一本の剣を取り出す。もう油断はしない、自分の負けはそのまま周りの者への危険、そしてアリスの身の危険へと繋がる。自分は負ける訳にはいかないのだ。

「それが噂に名高い、御神流ですか。では私も名乗りましょう。ルーゼリア騎士団第3隊隊長 セイリン ルアー」

「永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術 桐ヶ谷 和人 押して参る!」


ガキィィィィィン!
それは甲高い金属音と共に始まった。
常人では視認する事すら微妙なスピードで乱舞する二人、これが死闘でなければそれは美しい舞となっているだろう。

手数で有利なキリト、セイリンが繰り出す一撃一撃を確実に流していきもう片方の剣で斬りつける。だが流石のルーゼリア騎士団と言ったところか手数で負けているのであればとキリトの斬撃を幾度となくかわしながら乱舞している。

そしてキリトの放った斬撃を紙一重で躱す、そして防御に持ってくるであろう左手の剣目掛けておもいきり剣を振るった。キィィィンと甲高い金属音と共にキリトが吹き飛ばされた、それと同時にセイリンも踏み込み下から上へと斜めに斬り上げるがそれをキリトは右手の剣で受け止める、しかし吹き飛ばされバランスが悪く上手く流しきれない。故にセイリンはこのキリトがバランスを崩した刹那の瞬間にもう一度剣を振るう。
皇宮剣術、剣倒しである。
意図的に剣を狙う事で相手のバランスを崩し、そこで仕留める


これは決まった、そんな確信がセイリンの中で生まれ自然と口角はつり上がる。







「なんだ、その程度か?」






だが決まらなかった、キリトはバランスを崩した状態から二刀を交差し剣を受け止めていた。

完全に決まったと思っていたセイリンの顔に見て取れるほどの動揺が表れる。

「貴様!何をした!あれを受け切れるなど…」

「その技は何度も見てきたからな、それにお前……遅いんだよ」

キィィィィン!

その瞬間、セイリンの剣が宙を舞う。そうキリトが一瞬で吹き飛ばしたのだ。
セイリンはこの瞬間理解した、自分はこの者には勝てないと足元にも及ばないという事を。周りを包囲しているルーゼリア騎士団もセイリンが敗れると思ってなかったのだろう完全に動きが止まっている。

決してセイリンが弱いわけではない、それどころかこの世界でもトップクラスの実力なのは間違いないだろう。だがキリトが強過ぎたのだ。

「そんな…はずは…」

「もう一度やるっていうんなら剣を拾って来いよ」

そう舐めた様な発言、いや舐めた発言をされたセイリンは鋭い眼光でキリトを一睨みし急いで剣を拾う。


「あぁああぁぁぁあぁ!」

狂気の如く叫びながらキリトに向かって突撃してくる、それをキリトは実に面白くなさそうにそれで持って全くスキのない構えで迎え撃つ。

真っ直ぐ、それで持って勢いを乗せた突きを放つ。それをキリトは剣と剣を巻きつける様にして一気に剣を弾き飛ばす。
何てことのない、剣道の技。
巻き上げ、相手の剣を弾き飛ばす技だ。

「ば、ばかな…」

「確かにお前は強い、けど相手が悪かった。御神流の前に立った事を不幸と思え」

「くっ⁉︎き、貴様ら惚けてないでさっさと動け!」

そうセイリンが叫ぶと惚けて動けていなかった騎士団達が一気にキリト……ではなく月夜の黒猫団に襲い掛かる。

しまった、そう思った時は遅かった。今から神速を使っても間に合うか微妙だ、セイリンと戦っていた為少し彼等との距離が出来てしまっている。騎士団は元から彼等を襲って人質か何かにするつもりだったのだろう。

キリトは走る、灰色に染まったその世界を神速を使い己の限界を超えて走る。騎士団は容赦なく彼等を斬りつけようとしている、一撃でHPは無くならない。だからこそ一撃を浴びせ恐怖を植え付けようとしているのだ。そんな事は許さない。
だが間に合わない、頭でそれがわかっていても心がそれを許さない。



その時だった。



その手に持つレイピアを青く輝かせそこに割り込んでくる1人の女の子の姿が見える。
アスナだった。

けど駄目だ、仮にも彼等はルーゼリアの騎士団。不意をついて1人は倒せるだろう、しかし残りの6人相手に簡単に取り押さえられるだろう。

「ダメだ!」

咄嗟に叫んでしまった、故に集中が途切れ世界に色が戻る。

アスナは発動したソードスキルで1人の騎士を吹き飛ばした。しかしソードスキルには硬直時間がある。それを騎士達は知っている、故に1人の騎士がアスナに剣を突き立てる。


グシュ


嫌な音が聞こえる
剣が身体に刺さった音だ。
しかしアスナのHPはあまり減っていない、がアスナはその場に力なく倒れてしまった。

「くっ、麻痺毒か!」

その剣には麻痺毒が塗られていたのだ、良く暗殺ギルドが使う手で相手にこの様な異常状態を重ね動けなくしたところをじっくり狩る。それがキリトが良く知っている暗殺ギルドの手口だ。

キリトは直ぐに助けようと動き出す、が

「おっと、動くなよ?動いたら…分かってるな?」

そうセイリンが言うと騎士の1人がアスナを持ち上げアスナに剣を向ける。
こう言っているのだ、動けば、余計な事をすればこいつは殺すと。

そうしてアスナはセイリンの元へと連れて行かれ地面に落とされる。

「本当はこの女を殺してやりたいところだが、俺もそんなに鬼じゃない。アリス様の居場所を教えればこの女とそこの腰抜け共を助けてやる」

「もし…断ったら?」






ニヤっと口角を上げセイリンは答えた







「1人ずつお前の前でHPを少しずつ削っていって殺してやる」




アリス…出ませんでしたね…

アリス書きたい(´-ω-)ウム