この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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書きたかったから書いた、後悔はしてない←


第9話





「本当に何てお礼を言って良いのか…」

「いや、本当にそんなのは良いから。俺もやりたくてやってるだけだしさ」

彼らとキリトは無事に迷宮区を抜けその層の街へと戻って来ていた。今キリト達がいるのは彼等が使っている宿屋。
リーダー格の棍つかい、ケイタはしきりにキリトに向かってお礼を言う。ケイタ達からすればキリトは命の恩人、感謝しても仕切れないといった感じだがキリトからすれば誰かを守ったり救ったりするのは当たり前の事で此処まで感謝されて嫌な気にはならないが流石に照れ臭い。


そんなやり取りが少し続いた後、ケイタはキリトに聞きたい事があると言い出した。
キリトはいわば知る人からすればこのアインクラッド最強の剣士として名を轟かしている、そんな者に色々アドバイスを貰いたいと思うのは当然の事だろう。


彼等は月夜の黒猫団というギルドの集まりだそうでリアル、現実世界でも同じ高校のコンピューター部の仲間らしい。運良く彼らはこのソードアートオンラインを手にしたのだがいざこの地に降り立てば其処はデスゲームで一時は絶望し第一層の始まりの街に籠るという話になったがケイタを筆頭に戦おうという事になり今に至るらしい。

みんなで仲良くプレイしようとしていたゲームがフタを開けるとデスゲームだったら誰だって絶望するだろう。
しかし彼らは戦う事を選んだ、彼らの気持ちの持ちようは誇って良いものだろうとキリトは思った。

「僕らのパーティ編成は見ての通りとてもバランスが悪いんです、前衛が一人しか居なくてそれでHPがじわじわと削られていっていつもギリギリ何です」

「確かに、前衛が一人しか居なかったらスイッチも下手にできないし壁がいないとじわじわと追い詰められるのは目に見えてるからな」

「だから一人、前衛に装備もスキルも変えようと思うんです。サチ、何時までも其処で隠れてないで出てきてくれ。」

ケイタがそう言うと端の方で柱の後ろに顔だけだし此方を伺うように見ていた黒髪の女の子が他のメンバーに引きづられながらも此方にやってきた。
心無しか少し顔が赤いような気がする、その女の子は怖くて手が震えキリトの手を固く握り締めていた女の子だったのでキリトは其処まで嫌われてたのかと思い軽くショックを受ける。

「そこでキリトさんが良ければサチに色々教えてやって欲しいんです!」

そうケイタが言い出した。
無理も重々承知での頼み事、キリトは自分達とは違ってトッププレイヤー。こんな中堅ギルドの面倒を見る暇があれば攻略に勤しんでいるような人たちなのだ。しかしそんな無理なお願い事と理解した上でケイタは頼んでいる、それでも自分達は強くなりたいとそんな気持ちが、決意がひしひしと伝わってきた。其処までの決意をしている者の頼み事を断る訳にはいかない。


「といっても俺が教えられるのは基本的な事ばかりだ、それでも良いなら構わないよ」

「本当ですか⁉︎ありがとうございます!」

その決意を見込みキリトは首を縦に振った。するとケイタとメンバー達は凄く喜んだ、あの最強の御神流の剣士の力を借りれるのだこれ程心強い物はないだろう。

「その……私頑張りますのでよろしくお願いします!」

するとそのサチという女の子は目をギュッと閉じ何故か手が差し出されている。
何故に握手なんだとキリトは思ったが精一杯勇気を振り絞って声を出したであろう女の子の頑張りを無駄にする訳にもいかないので素直に差し出された手を握り返し握手をする。

こうしてキリトは色々教える事を約束するのであった。













成り行きで色々教える事になったキリトだが内心では彼等の成長を楽しみにしている。
それにケイタの決意は本物だ、剣士は誓いを破らない。
キリトはその帰り道、御神流の剣に誓って彼等を守り自分に教えれる範囲の事を教えようと思った。


「あっ、アリス帰って来てるかなぁ…」


そういえばと思い出したのはアリスの事、何処かに怒って行ってしまったのだが一緒に借りている宿屋には帰ってきているのだろうか?
パーティは組んだままになっているので部屋には入れる筈だがもし帰って来ているのならどうしようかと考える。
流石に今の雰囲気のままでは居心地も悪いし、アリスには笑っていて欲しい。今の怒っているアリスも可愛らしくてアリスっぽくて良いのだがそれでも何となくキリトはアリスには笑っていて欲しかった。

そんな事を考えているうちに自分達が借りている宿屋に着いていた。
どうやって機嫌を取り戻そうか考えながら階段を上る、やっぱりあのプリンみたいなものを山ほど渡すしかないのかと思い至り少し憂鬱な気分になりながら部屋の扉を開ける。
アリスとパーティを組んでいる為、共同の宿屋の部屋は二人とも開けれるのと、ノックせずに入ってしまったのは不味かった。


「あっ……」


扉を開けると全武装解除状態のアリスが其処にはいた。
詳しく状況を説明すると下着しか身に付けていないアリスが扉を開け固まるキリトの方を向き徐々にその顔を赤くしていっている状態である。


キリトもキリトでその何時ものアリス剣を振るうアリスからは想像をさせないような華奢な身体付き、その白い肌に輝くような金髪が良く似合っておりまるでこの世に降り立った女神のようなアリスの霰もない姿に見惚れていた。
そしてキリトの意識が戻ってきた時には既に目の前には耳まで赤くしたアリスが左手で身体を隠しながら右手を自分に放ってきている姿が目の前にあり、

(あっ、これは死んだかも…)

そう思うキリト。
目を閉じ衝撃に備えるキリトだが何時まで経っても何も感じない。
可笑しいと思い目を恐る恐る開けるとその拳をキリトの目の前で止め、ぷるぷると震えながらも自分の身体を隠すアリスの姿があった。

「……ノックぐらい…しなさいよ…」

「えっ?あっハイ」

予想外過ぎてそう返事をしてしまう。
その時キリトは思う。

(こいつアリスの偽物か⁉︎)

そうキリトの知っているアリスはこんなにもしおらしく乙女で女の子って感じではない。
もっとこう……豪快というか常にツンツンしてる男勝りな筈だ。
そう疑いの目をアリスへと向ける、するとアリスは両手でその身体を隠し顔を更に赤くしもじもじしながら言った。

「恥ずかしいから…あまりじろじろ見ないで…」

「えっ?あっハイ」

またしてもそう返事をしてしまうキリト。
そしてアリスは部屋着を身に纏い、硬直する。
可笑しい、何かが可笑しい。キリトは頭の中で全力で何故こんな事になっているのか考えるが全く分からない。
すると、

「その…ごめんね…あまり見せれる様な身体付きじゃなくて…」

キリトは次は吹き出しそうになった、アリスの身体付きはその年齢にしては豊富な胸に括れた腰、誰もが憧れるようなプロポーションだ。
可笑しい、キリトが知ってるアリスは…


「お前は誰だ!俺が知ってるアリスはこんなにもしおらしくて女の子らしくて可愛くはな……うごはぁ!」


「悪かったわね!しおらしくなくて女の子らしくなくて可愛くなくて!」


キリトが言い切る前にアリスは全力でキリトを殴っていた。
そうこれだ、此れがキリトの知ってるアリスだ。

「それで…こそ……アリス…だぜ…」

そうしてキリトは意識を闇に沈めた。










いいなぁ、キリト。
扉開けるところで私と代われ!