この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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さぁ、彼らに出て来て貰いましょうか。


第8話




第一層のボスが倒され今や最前線の層は28層まで来ていた。
あれから瞬く間に御神流の剣士の噂は広まった、たった1人でフロアボスを倒しその剣士の二刀から放たれる剣技は不可視のスピードで間違いなく最強の剣士だと。

しかしあれ以来、キリトは二刀流を使っていない。御神流は本来守る為に振るう剣、簡単に使っていいものではない。
それ以降姿を現さない御神流の剣士は幻ではなかったのか、そんな者は存在しなかったのではないかと言われ始めた頃だった。




「だから俺じゃないって言ってるだろ!」

「キリト以外に誰がいるって言うのよ!」

そんな事を噂されているとも知らずキリトはアリスと睨みあっていた。

「まずお前が机の上にそんなもん置いてるのが悪いんじゃないか?」

「まさか私の楽しみに取っておいたプリンみたいなものを食べるなんて思ってなかったのよ」

そうこの間最前線でレベリングしている時にスライム型のモンスターが落としたアイテムなのだがそれがプリンの様な味がしてまた美味しいのだ。
しかしそれはレアな食材らしく3つしかドロップしなくて何方が2つ食べるかじゃんけんをしてアリスが勝ったのだ。
そしてアリスが食べようと机に出しておいたプリンが無くなっていてそれをキリトが食べた食べてないので言い争っているのである。


「ふん、キリトなんてもう知らないから!」

「お、おい、待てよ!」

アリスは怒っていてキリトの言うことなんて無視しそのままずかずかと歩き何処かに行ってしまう。

「はぁ、俺じゃないんだけどなぁ…多分…」

散々自分ではないと言ってるキリトだが実は自分でも自信がなかったりする。
あの日は寝ぼけてたし記憶にはないが食べてしまったような気もしなくもない。
仕方がない、暇だし素材でも集めに行くかとキリトは転移門へ行くために足を進めた。











モンスターの攻撃を躱す事なく、そのまま迎え撃つように剣を振るう。
モンスターの攻撃は当たらないのに何故かその少年の攻撃は当たる、まるで手品のようだった。そして次は攻撃してきた所を軽く上に弾く様にパリィし剣を構え直すと剣が輝きだす。
そのまま剣はモンスターへと喰い込みその姿をポリゴンの欠片へと変え消えていった。

「はぁ、弱すぎる…」

此処は最前線から十層以上も下の迷宮区。素材を集めに来たのは良いもののモンスターが弱すぎて目を瞑っていても勝てるかも知れない。
いつもはアリスと一緒に戦うのだがアリスは怒って何処かに行ってしまった為に今は一人、更にこの弱いモンスターとの戦闘に拍車を掛け全く面白くなかった。
素材も十分集まったし帰ろうとすると向こう側の通路に多数のモンスターに追われ退却しているパーティを見つけた。

そのパーティのバランスは余りにも悪かった、五人編成のうち前衛は盾とメイスを装備した男が一人であとは、短剣のみのシーフ、クォータースタッフを持った棍使い、長槍使いが二人という編成だった。
前衛のメイス使いのHPが減ってもスイッチして盾となる仲間が居ないので、ずるずると撤退する事が目に見えている編成だ。
キリトとアリスは二人パーティだがお互い相手の攻撃は貰わないで攻め続けれるのでパーティ編成やスイッチの事とは無縁なのだが。

キリトは迷わず助けに入る、しかし時折こうやって助けると文句を言ってくる者もいる。
経験値泥棒や何とかと言われた事は何度もああるのだ。
それにハイレベルプレイヤーが下層の狩場に居るのは余り良い事ではない、長時間いれば上層のギルドに排除依頼がいって散々吊るし上げられた挙句にsaoにも新聞があるのだがそれの非マナープレイヤーリストに載せられてしまうという事態になり兼ねない。
だから先ずは一声掛けるキリト。

「ちょっと前、やりましょうか?」

リーダー格っぽい棍使いにそう尋ねると少し迷っていたが直ぐに首を縦に振った。

「すみません、ではお願いします。やばそうだったら直ぐに逃げてもいいんので」

よし来たとキリトは背中の剣を抜き、スイッチと久しぶりに声に出し無理やりモンスターの前へと割り込んだ。
敵は先ほど嫌々狩っていた武装ゴブリン達だった。この程度のモンスターならキリトに掛かれば瞬殺だろう。
しかし後ろにいる者達からすればその限りではない、下手をすれば死ぬかも知れないのだ。
思い切りやればハイレベルプレイヤーが何故こんな所にいるのかと罵られるかもしれない、だがキリトには関係ない。もし自分が罵られる事で守れる者がいるのならそれで構わない。

だからキリトは躊躇わず思いっきり剣を振るう、ちょっとばかし数は多いが直ぐに倒せる問題はない。
一人でモンスターの集団へと突っ込むキリトは一番近くにいるゴブリンをその凄い速さで6連続で斬りそのまま身体を二つに斬る様に通り過ぎ一体目を倒す、すると近くにいた2、3体のゴブリンが同時に攻撃してくるが全て身体を少し逸らすだけで躱し背後へと瞬時に移動しまた神速の剣技で斬り刻み2体目を倒す。

ちらっと後ろを見ると驚きの顔を示し五人はキリトを見ていた。
それもそうだろう、一瞬のうちにゴブリンを2体倒しすり抜けるよりに相手の攻撃を躱してみせるキリトは明らかに自分達とは実力が違うのだから。

キリトは空いてる左手をコートの内側へと滑り込ませ何かを指の間に挟む。
そしてそれを間髪入れずにゴブリン目掛けて放つ。
投擲スキル マルチシュート。
威力はかなり弱いが複数の敵を攻撃出来るスキルだ。
威力は殆ど無いが正確に放たれたピックは4体のゴブリンに命中する、その瞬間ゴブリンの動きは止まる。その隙をキリトはしっかりと見極め瞬く間にその4体のゴブリンを仕留める。

残り3体となったゴブリンは一斉にキリトへと襲いかかるがするりと躱し1匹のゴブリンの攻撃を弾き隙が出来た所を神速の剣技で斬り伏せ1匹の懐に潜り込みその敵も一瞬で倒す。
残り1体となったゴブリンはそのままキリトに攻撃を繰り出すが、キリトは軽く横に剣で弾き適当に、それでもかなり速くだが斬り全てのゴブリンを倒した。

後ろを見るとみなが驚きの余り固まっていた。これはまたチーター扱いされるのかなと苦笑いしてみせるキリト。

実はこんな風に助けた者にチーター扱いされる事が良くあったりする。見境なく誰でも助けるキリトは持て余す事なくその力を振るいそう言われて来ている、またそのパターンかなと思い相手の言葉を待っていると、

「ソードスキル無しでここまで……それにその強さ…まさかあの御神流の剣士⁉︎」

おいおいマジかよ、本物⁉︎とまるで有名人と会っているかのように声を上げる彼ら。

「えっと、まぁ一様そうだけど…」

一同はおおーと声を揃える。なんだか何時もと違い歓迎されているようで何となく照れ臭かった。
すると一人の長槍を使っていた黒髪の女の子がキリトの手をとり、

「助けてくれてありがとうございます!モンスターに襲われてる時、怖くて…怖くて…」

その女の子の手は震えていた、本当に怖かったのだろう。
キリトはその震えた手を優しく微笑みながら握り返す。
やはり嬉しい、こうして守ってくれてありがとうと言われるのは。
その言葉だけでこれからも頑張れる、そう思うキリト。


「助けてくれてどうもありがとう。まさかあの御神流の剣士に助けて貰えるなんて思ってもみなかったよ」

そう棍を手に持っている男が言ってくる。

「別に大した事はしてないよ、困ってる時はお互い様さ。どうせだし出口まで付いて行こうか?」

「それはありがたい、実は残りのポーションが心許なかったんだ。じゃあ頼めますか?」

「ああ、別に構わないよ」

そう言ってキリトは先頭に立ち歩こうとするがまだその女の子の手を握っている事に気がつく。

「あっ、ごめん⁉︎」

そう言って慌てて手を離そうとするがその手は固く握られており取れない、無理矢理引き剥がす訳にもいかずどうしたものかと頭を掻いていると、

「お願い、もう少しこのままで…」

そう言って来たので良いよとだけ言ってそのままにしておく。そして手を握りながら進み出したのだがその固く繋がれた手は出口を出るまで離すことは無かった。


これがキリトと月夜の黒猫団の出会いだった。







改めて画像でサチを確認してきたんですが…サチってあんなに可愛かったっけ←

さぁ、キリトはサチを落とす事が出来るのか⁉︎
↑趣旨が変わってる