この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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今回はアリス視点でお送りします。


第3話





広がる緑の草原、ぽかぽかと暖かく心地よい風も吹いている。
左側を眺めると遠く離れた場所に天蓋まで届く巨大な塔、アインクラッド第一層迷宮区が堂々と聳え立っている。
そんな草原に肩を上下に揺らし大の字になり倒れる男女二人とそれを見ているフードを被った女がいる。

「はぁはぁ、なるほど…ね、しょうがないから信じてあげるわ」

「はぁ、はぁ、さっきからそう言ってただろ…」

先程までアリスはキリトに剣を振り回して追い掛けていたのだがキリトの必死の命乞いと説得、アリスの体力も限界だったようで事なきを得た。

「まぁ、久しぶり…だな…アリス」

「ばか…」

照れくさいのか頭をぽりぽりと掻きながら笑顔でそう言うキリト。
久しぶりに再開する事が出来た、そして昔は何時ものように見ていたこの笑顔を見る事が出来てアリスは此処に来て良かったと思えた。それに自分の心が満たされていくのを感じる、ルーゼリアに連れて行かれてからは何をしても殆ど何も感じなかった。
まるで世界そのものが無色に見え同じ事の繰り返し。しかし今キリトに再開した事でアリスの世界は色を取り戻した、自分が求めて止まなかったこの暖かくて心地よい感覚。

このソードアートオンラインの世界に入って割と早くに和人を見つける事が出来た。
それもあの顔にペイントをした人のお陰だと思ったアリス……































時間はアリスがソードアートオンラインの世界へと降り立った時間へと遡る。


「此処がソードアートオンライン…」

周りは家が立ち並びどこか中世的な雰囲気が漂っている。日本とルーゼリア、何方かというと日本よりルーゼリアの様な雰囲気だとアリスは思った。
この仮想世界の中に和人がいる、やっと此処まで来たんだとアリスは自分の胸の前で拳をぎゅっと握りしめる。

しかし肝心の和人が何処に居るか分からない。だがそんな事は関係ない、此処に居るんだ、なら探せばいつか出会える。
今までなら探す事も叶わなかったのだ、そう考えるとアリスは街の中へと走りだした。


が当然見つかる筈もなく近くにあったベンチに腰を下ろす。それに今の和人がどんな姿なのかも分からないのだ。
しかしそんな事で諦める訳にはいかない。和人は自分が連れ去られる時、やられ地面に倒れても諦めなかった。ボコボコにされ再び地面に倒れても自分に必死に手を伸ばし諦めなかったのだ。
なら自分も諦める訳にはいかない。
その時、

「あんた見ない顔だナ、それに装備はまるっきし初期装備。もしかして新しくsaoを始めたんじゃないカ?」


よし、もう一度探すかと思い立ち上がろうとすると一人の全身布装備で顔にはヒゲの様なペイントをした者がそう声を掛けてきた。

「そうよ、私は此処で探さなきゃならない人がいるの。悪いけど私は行くわ」

新しくsaoにログインした事を当てられた事には少し驚いたが自分にはやるべき事がある、あの人を、和人を見つけなければならない。

「へぇ、わざわざそんな事で此処に来るなんてナ。本当はコルを取るんだけど特別にオネーサンがその人を探してやろうじゃないカ」

「本当⁉︎」

「オレっちは情報屋をやってるんだヨ。コルの代わりにそうだな…名前を教えてくれるカ?」

「私の名前?私の名前はアリスよ」

Alice、それがこの世界でのアリスの名前だ。
と言っても現実世界と変わり無いのだが。

「そうか、分かったヨ。でどんな奴を探してるんダ?」

「和人を…って此処の名前じゃなきゃダメなのよね。黒髪黒眼で…服とかは黒とかが好きたのかな、昔は黒の服ばかり着てた……ってこんな少ない情報じゃ無理よね…」

今思えば今の和人に関する情報が少なすぎるのだ。探して貰おうにも現実世界の名前ではなくsaoでの名前を知らなければどうしようも無いしこの少ない情報では探すのも一苦労だろう。

「…そいつもしかしてキー坊じゃないカ?此処での名前はキリト。確かに黒ばかりの装備のダナ、確か今日は迷宮区に行ってる筈だヨ。其処に見えるのが迷宮区ダ」

その情報屋は心当たりがあったのかそのキリトがいる場所を教えてくれる。
指をさした方向には天蓋まで届く巨大な塔だった、其処に和人がいる。
そう思うといても立っても居られず走り出していた。

「ありがとう!私行くね!」

「あ、外にはモンスターが…って行っちゃったカ」

その情報屋がアリスに何かを伝えようとしたがその足は初期ステータスとは思えない程のスピードで走っていった為何も言えなかった。

情報屋、アルゴは完全に初心者だろうアリスが道中のモンスターにやられるのではないかと危惧してその事を伝えようとしたのだが行ってしまっては仕方がない。
次会った時はキリトにどういう関係なのか聞こうと思ったアルゴ。
デスゲームにまで追い掛けて来たのだから特殊な関係なのは間違いないだろう、また面白いネタが見付かったとニヤッと笑みを浮かべるアルゴだった。





今アリスはその巨大な塔を目指し草原を走っていた。
彼処に和人がいる、そう思うと不思議と足は進み疲れなど感じない。やっと、やっと会えるのだ。この時をどれ程待ち侘びた事か。
次期皇帝へとなる為の教育、毎日殆ど同じ事の繰り返し。
その中で和人を想う気持ちは徐々に強くなり、和人の事を忘れた事など1秒足りともない。

しかしそんなアリスの前方から突撃してくる影がある。
咄嗟に横に飛び躱し姿を確認する。
其処に居たのは青いイノシシ。

「こいつがモンスター…」

フィールドに出ればもちろんモンスターがいる。出会わないとは思わなかったがいざ出くわすと不安の感情がアリスに込み上げてくる。しかしこれしきの事で逃げ出すアリスではない。腰にささっている、初期装備の片手剣を抜き構える。

実は次期皇帝として皇宮剣術を教わっているアリスは剣の扱いには慣れている。
それにセンスがあったのか瞬く間にルーゼリア騎士団の者達を倒していったのだ、流石に騎士団長のニーグを倒した事は無かったがアリスの剣の実力は相当なものである。

「はぁぁ!」

一気に踏み込み斜めに切り込む。そして瞬時に切り返し横にも刻み、止めと言わんばかりに上段に構えると剣が輝きだす。そしてそのままイノシシへと吸い込まれる様に剣が食い込みポリゴンの欠片となって爆散した。

「今のがソードスキル…」

イノシシが何かをする前に倒してしまうところを見るに相当な実力なのは伺える。
そしてアリスは不意に発動した剣技が噂のソードスキルなのだと理解する、先程普通に斬って半分以上残るモンスターを一撃で仕留める所威力が高いのだと思った。
一様は皇宮剣術を使う者としては自分の剣技出なくソードスキルの方が強いのに少し不満を感じたが今はそれどころではない。

剣をしまい再び走り出すアリス。
目の前に見える巨大な塔にどんどん近付いていく。
するとその麓の辺りで何やら言い争っている者が目に入る。それに片方は…

「和人!」

そう自分が求めて止まなかった和人だった。その和人が目の前にいる、やっと見つけた。アリスの足は更に加速する。何年も会って居なくて髪も伸び背丈も伸びていたが一目で和人だと分かった。
やっと、やっとだと和人に駆け寄ろうとするが、

「……何度だって俺が助けて守ってみせる!だから…」


は?今和人はなんと言ったのだろうか?
目の前でそう言い放っている相手は女、そう女だ。
自分は遥々他国からデスゲームの中まで会いに来て、毎日和人を想って、今も和人は戦っているのだと思い自分も頑張ろうと思った。
しかしなんだ、和人を見つけると自分以外の女を口説いているではないか。
先程まで考えてた事など全て吹き飛び、怒りの感情がふつふつと湧き上がってくる。
そして気が付いた時には剣を抜き、和人に向かって走り出していた…



そしてアリスも強いというねw

それでもニーグの方が強いという事は、ニーグさんはチート級の強さと言う事ですね←