この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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時系列を少し飛ばします。

クラインの下りやデスゲーム開始の所は正直変わりないと思うので省略します。

ごめん!クライン!


第1話





今日は11月28日。
日本では世界初のVRMMO。
ソードアートオンラインのゲーム内でHPがゼロになるとナーヴギアから発せられるマイクロ波で脳が焼き切れ死に至るという事件が6日に起こったばかりで世間は騒がしい。
任意でログアウトする事も出来ず、外部から強制的に回線を遮断してもナーヴギアに内蔵されたバッテリーで脳を焼き切る為打つ手がなく、対策本部も途方にくれていた。saoがデスゲームとなり1ヶ月が過ぎようとしている。

このsao事件が日中ニュースで取り上げられ目立ってはいなかったが今日のニュースにはルーゼリアから時期皇帝が日本に来日すると報道されてた…


















日本はもうすぐで12月、街中を歩く者達の服装もすっかり厚着となりクリスマスに向けて街中も多少飾り気が目立つ。
そんな街中をバルコニーから眺める一人の女の子。
その長い金髪の髪は朝日を反射しキレイに輝いて見えその美しく可愛らしい顔と良く似合っている、はぁと白く染まる息を吐きその碧い瞳で街中を眺めていた。

「アリス様、そんな所にいらっしゃったのですか?風邪を引かれます、中にお入り下さい」

「……分かったわ」

「今日は此れから日本の首相との会談、会見とスケジュールは分刻みですので今の内にお休み下さい」

そう言って一人の男は部屋を出ていく。
彼女の名前はアリス ルーゼリア ツーゼルク。ルーゼリア次期皇帝である。

(和人…私戻って来たよ…)

この街に居るであろう自分の想い人の事を思う。あの日あんな別れをしてしまったがアリスは何とかしてこの来日の機会を手に入れた。
そして監視の目を盗み何とかして和人にもう一度会おうと考えている。早く会いたいそんな一心でアリスは部屋を飛び出した。


期待と不安、そんな思いを胸に街中を掛ける。この何年かで和人は変わってしまったのだろうか、もう昔の様に自分にあの暖かい手を差し伸べてくれるだろうか?
昔と同じように自分を受け入れてくれるか考えると不安になるがそれ以上に和人に会いたい、その気持ちの方が強くアリスの足を前へと進める。

「きゃっ」

足がもつれ道の真ん中で転けてしまう、運良く周りに誰も歩いていなかった事に安堵しながら再び走り出す。
アリスは今やルーゼリアの次期皇帝、その目立つ容姿はわかる人が見れば次期皇帝だと ばれてしまうだろう。

そう言えばいつしか似たような事があったと昔を思い出す。
河川敷でいくら待とうと来ない和人を心配したアリスは走って和人の家に行った事がある。

(和人…和人…)

あの時と同じように走りながら和人の事を思う。早く会いたい、早く会いたい。
気付いた時には足は止まり目の前に桐ヶ谷の表札がある。この家に和人がいる、そう思うと自然にインターホンへと手は動いていた。
ガチャりと扉が開き、もしかしたら和人が出てくるかも知れないと緊張した面影で見守るが出てきたのは少女だった。
扉の隙間からひょこっと顔を出し此方を伺うように見ている、別に変人が来たと疑って顔しか出さないのでは無く単純に寒いのだろう。

「えっと……もしかしてアリスさん…ですか?」

何度か和人の家にお邪魔した事があり向こうは覚えていてくれたみたいだ。
この少女は桐ヶ谷 直葉。和人の妹である。

「はい…あの…和人はいますか?」

こうして覚えていてくれたのは素直に嬉しい。恐る恐る和人の事を聞くと直葉は表情が何処か沈んだものに変わる、何か不味い事でもあったのだろうか?
それとも和人に何かあったのだろうかと思うと途端に不安になってくる。
次の言葉を聞いた時、アリスは限界を迎えた。

「お兄ちゃんは…此処にはいません。千代田区の都立病院に入院していて……あるゲームをしたまま目を覚ましてません」

直ぐに理解してしまった。和人はあのゲームをしていて巻き込まれてしまったのだと。ソードアートオンライン、今となってはデスゲームとなった仮想世界に和人は囚われているのだと。ルーゼリアでもsao事件は大きく取り上げられておりもちろんアリスの耳にも聞き及んでいた。
もうすぐ会えると思ったに、あの手に触れれると思ったに。会えない所か和人は今も仮想世界で生きるか死ぬかの戦いの最中かと思うと胸が苦しい。
自然と溢れる涙を止める事が出来ずその場に崩れて泣いてしまった。

「そんな……和人…嘘だって言ってよぉ」

「アリスさん…」

そんな風に泣き崩れ和人の名を口ずさむアリスを直葉はただ見ている事しか出来ない。
直葉はアリスが何故いきなり姿を消したのかは詳しく知らない。
それは和人が喋ろうとしないのだ、ふと気がつくとニュースで次期皇帝としてアリスが映っていたのには驚いた。何となく、何となくだがあの日和人がボロボロになって帰って来たあの日に何があったのかは察しがつく。
直葉はアリスに何かしてあげれる事を考えるが何も思い付かない、出来るとすればそう……

「お兄ちゃんに…会いに行きますか?」

デスゲームとなったsaoに囚われ目を覚まさない和人の所に連れて行く事ぐらいだ。

「はい!行きます…和人に会いに」

せめて、せめて和人の手を握りその顔を拝みたい。
自分には何も出来ないし和人は歓迎しないかもしれない。それでもアリスは和人の元に行く事に決めた。こうしてアリスと直葉は和人が入院している病院へと向かうのであった。



















「此処です、此処の奥にお兄ちゃんは眠ってます」

病院に着きロビーで許可を貰い2階の奥の部屋、其処に和人はいるのだという。
その部屋へと直葉に案内され入るとナーヴギアを被った人が何人かいる。そしてその奥には…

「和人…」

桐ヶ谷 和人はそこで眠っていた。
やっと会えた、やっと見つけた。和人を見つけた瞬間また目元が熱くなったがぐっと我慢する。本当は喋りたい事もたくさんあった、しかし和人は眠っている。黙って横に座り和人の手を握りしめる、その手は固くマメだらけなのは驚いたがあの暖かさが自分の手から伝わってきて心の中が満たされるのを感じる。そして胸元には自分が渡した指輪がチェーンに通され輝いていた。大切にしてくれている事が分かり目元から水滴が落ちる。

《ピーーーーー》

突然隣のベッドからそういう音が発せられた。暫くすると看護師や医者が集まって来た、そしてその人からナーヴギアを外し何処かへ連れて行った。

「あの人は…」

「死んだんです、向こうの世界で…」

そうあの人は向こうの世界、ソードアートオンラインの仮想世界の中でHPがゼロになったのだ。その場面を目の前で見た事により一気にアリスは不安になる。
もしかしたら1分後には和人のHPがゼロになり死んでしまうかも知れない、そう考えると堪らなかった。気を使ってくれたのだろうか、直葉は飲み物を買って来ますと言って病室から出て行った。
自分には何も出来ない、和人は今も戦っているというのに何も出来ない自分が呪わしい。


しかしふと隣のベッドに置かれたナーヴギアが目に入る。もしかしたらあれで自分もソードアートオンラインの世界に入れるのでは無いかと。どんな世界だろうと和人に会えるのならアリスはなんでも良い、それからの行動は速かった。
ナーヴギアを被り初期設定を行う、自分の身体をあちこち触ったり身体に異常はないかナーヴギアがチェックする。初期設定の全てが終わり後はあの言葉を口ずさむだけ。

(此れで和人に会える、やっと、やっとだ)

そして…

「リンク スタート!」

11月28日、アリスは和人にもう一度会うべくソードアートオンラインへとログインした。



皆さん、あんな別れ方したのにアリスをsaoに入れるとは思わなかったと思いますw

いやぁ、アリス居ないと面白くないでしょ←