この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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今回で幼少期は終わりです。
それに伴い急展開ですw


第7話






「韓国、アフリカ、スペイン…それぞれ確認出来ませんでした」

「うぐぐっ、まだ見つからんと言うのか!」

広く内装も細かい所にまで装飾があり、この見るからに豪華な部屋にとても長い机が置かれ其処にに40〜60歳ぐらいの男たちが険しい顔付きでそれぞれ座っている。
その一番奥に座っている金髪の男がそう怒鳴り立て、他の者達はみな焦りの顔付きを見せる。

此処はルーゼリア皇宮の一室。次期皇帝が暗殺されそれ以来、次に次期皇帝候補だった者を血眼で捜しているのだ。その次期皇帝はある日突然姿を消したのだが国に出たという事しか分からずみな焦っていた。
その消えた次期皇帝というのがアリスだ。ルーゼリア名、アリス R ツーベルク。

すると一人の若い男が部屋に入ってきた。


「報告します、日本にそれらしき金髪の女の子を確認したとの情報が入りました」

「本当か、ニーグよ!よし早速日本に向かえ!手荒な真似をしても構わぬ。ルーゼリア騎士団長、ニーグアイルボルトよ、今回はお主直々に現地に向かうのだ!」

「はっ、皇帝殿下」


そう彼がルーゼリア騎士団長、ニーグ アイルボルト。
ルーゼリアは表向きはとても豊かで平和な国だが裏では色々汚い事もしている。
過去に起きた皇族の暗殺事件、それも国の重鎮からの命でニーグが行ったものだ。ルーゼリア騎士団は裏ではそう言った仕事もこなしている。

そしてそんなニーグに命令を与えていたのは金髪の男、現皇帝のソル R ツーベルク。アリスの実の父親だ。

和人とアリスはまだ知らない。
魔の手がもう目の前まで迫っているという事を…
























「なぁ、今日何日だっけ?」

「あんたボケたの?今日は10月31日よ」

いつもの河川敷の丘でそんなどうでも良い会話をする二人。
実は7日は和人の誕生日でアリスはその話を前日に知ったようで大した物は用意出来ず、お母さんに相談した所想いがこもった物であれば良いと言われたので手作りクッキーを上げたのだが和人曰く味は微妙だったそうだ。

「そういや俺たちが出会って結構日が経ったよな」

「うん、まぁそうね」

「この景色、お前と見るの何回目だろうな。何だが随分昔からこんな毎日を送って来ている気がしてきた」

そう毎日の様に和人はアリスと此処、河川敷でこの景色を眺めている。
道場の帰りいつも和人がここに訪れアリスの横に座りこの景色を見る。アリスもいつもここで和人が来るのをまだかまだかといつも来る方をちらちら伺って姿が見えると自然と顔が綻んでしまうのだがいつも自然を装っている。
たまにその方向ばかり気にし過ぎて背後から驚かされたり、こしょばされたりして追いかけっこに発展する事もあった。

アリスがやっと掴んだ小さい、それでも確かにある幸せ。
しかし運命はそんなアリスを嘲笑うかのように現実を叩きつける。

「おい、いたぞこっちだ!」

不意に和人達の後ろからそんな叫び声が聞こえ二人は一斉に振り返る。
其処には黒い服に身を包んだ男が立っていた、すると同じような服装の男達が和人の周りを取り囲むかのように集まりだした。
状況が掴めない二人は顔を見合わせたが最初に叫んだ男がこう言った。

「アリス様、捜しましたよ。私達はルーゼリア騎士団の者です。さぁ、私達と早く国へ戻りましょう」

和人は驚いていた。いきなり取り囲んで来た不審者が自分の憧れるルーゼリア騎士団だったのだから。
それと対照的にアリスの顔は驚愕の色に染まっていた。何故見つかったの、どうしてこんなところまで来たのと。

「なんで……嫌よ!昔は私の事を毛嫌いしてた癖に今頃必要になったからってそんな態度とって……私は皇帝なんかにならないわ!」

「なら仕方がありません、無理やりにでも付いてきて貰います」

すると一人の男がアリスの腕を掴み強引に連れて行こうとする。

「いや、離して!」

そう叫ぶアリス。
するとバシッと乾いた良い音が鳴り響いた。

「アリス、こっちだ!」

そう和人がその場に置いていた竹刀でその男の手を叩いたのだ。先程まで状況が飲み込めず惚けていたのだが目の前で叫ぶアリスを見て我に返ったのだ。
あまりの痛さに手を離してしまった隙にアリスの手を引き街中に逃げ込む。この街は言わば和人の地元で庭同然。入り組んだ道をアリスの手を引き思いっきり駆けていく。
かなり遠くまで走って逃げてきたので二人は肩で息をしながらその場にへたり込む。

「はぁはぁ、何なんだよ一体…」

「はぁはぁ、彼奴らは私の事を捜しに来たのよ…」

「それってどういう…」

アリスは顔を伏せ少し考えていたが話し出した。

「私はね、ルーゼリア国の皇族なの。次期皇帝が暗殺されたのは見たでしょ?」

こくっと首を縦にふり肯定する和人。

「それで私は今まで愛人の子だからって扱いが酷かったからこの日本に逃げてきたんだけど…他に候補が居ないから私しか次期皇帝が居なくて奴らは私を捜しに来たってわけ」

そう簡単に掻い摘んで話したアリス。
その顔は何処か沈んでいる。この話をして和人が自分の事を嫌いになるか不安なのだ。
普通の子でない自分。知られれば嫌われるかもしれないそんな事をずっと考えてきた。
この幸せを手離したくない、しかしアリスは黙る和人から目線を外し俯く。
そうだ、こんな私をまだ友達だなんて思ってくれる筈がない。また私は一人になる。
和人が口を開いたのが見えた、聞きたくない。嫌だ。目尻に涙を溜めギュッと目を瞑るアリス。

「そうか、大変だなぁ皇族って。でどうする?彼奴ら家まで来てそうだけど?」

しかし和人が言ったのは軽蔑の言葉ではなかった。呆気に取られ目をぱちくりさせるアリス。

「えっ、まだ私の事構ってくれるの?友達で居てくれるの?」

「何言ってんだよ、そんなの当たり前だろ。それに約束しただろ。ずっとそばに居るってさ」

嬉しかった。今までずっと知られたら見捨てられると思い何処か怯えていた。
しかし和人はそんな自分もそんな事かと受け入れてくれた。それがどうしようもなく嬉しかった。
すると自然に涙が溢れてくる、止まらない、もう止められなかった。
和人に抱き着き泣き崩れてしまった。

「お、おい。泣くなって、大丈夫だから」

「うわぁぁぁ〜〜〜ん」

泣き続けるアリスに困り果てている和人だが取り敢えず頭を撫で続ける。
暫くすると落ち着いたのか泣きやみ和人からも離れた。

「ごめんね、ありがとう」

「おう、取り敢えず俺の家に…」

「其処に居ましたか、アリス様」

この場から離れて和人の家に向かおうとした矢先後ろを振り返ると黒い服をきた男が立っていた。
しかし先程の者と雰囲気が違う。逃げられる気がしない、そう何故か思ってしまう程の威圧感。
和人はそんな男の顔に見覚えがあった。そうこの男は…

「ニーグ……アイルボルト…」

「ほう、私の事を知っているか…其処を退いてもらおうか」

その男はニーグ アイルボルトだった。
和人がその剣の腕に惹かれ憧れている者である。しかし今はその男は自分の前に立ち塞がっている。
心配そうに和人の裾を掴むアリス。

(俺は…此奴と一緒にいるって約束したんだ…だからニーグが相手でも!)

「それは出来ない……アリスは俺が守るって言ったんだ!」

そう叫び上げるのと同時に和人は竹刀を手にニーグに飛び掛った。
思い切りニーグに竹刀を振るう、しかし全て身体を少し逸らすだけで躱されてしまう。ニーグからすれば和人の剣のスピードなんぞハエが止まる程遅い。そんな速度ではあたる筈もなく何度か躱した所でニーグは和人に蹴りを放った。
それをかわせる筈もなくもろに受け遠くに吹き飛ぶ和人。

「ぐはぁ!」

「和人!」

「アリス様、付いて来て貰いますよ」

そう言ってニーグはアリスの腕を掴む。嫌だと手を振り解こうとするが全く解けそうもない。
アリスは吹き飛ばされた和人を見る。その場に倒れている和人はピクリとも動かない。

「和人!和人!返事してよぉ、ねぇ!」

しかし和人に反応はない。そうしている間にも引き摺られ和人から徐々に遠退いていく。

「かなり強めに蹴りましたので暫くは目を覚まさないでしょう、しかし手加減はしました。死んではないでしょう」

「和人……約束守りなさいよぉ!」




聞こえる……俺を呼ぶ声が

けどもう手足が動かない

無理だったんだ、だってあのニーグ アイルボルトが相手だ、勝てるわけがない。

泣いている……誰かが…

俺は諦めるのか?けど動かないんだ手も足も。

か……と

聞こえる

か……ず……

俺を呼んでいる

かずと……

泣きながらそう叫んでいる、ずっと一緒と、守ると約束した女の子が

そうだ…約束したんだった。手も足も動かない?それがどうした。諦めるもんか、諦めてたまるかぁ!

和人!





「…まだ立つか」

「和人!」

「約束……したんだ……守るって!」

口から血を流しふらふらと竹刀を杖代わりにしながら和人は立った。
ニーグも本気ではないがそれなりに強く場所も急所を狙った。しかし和人は立ったのだ。

「う……うおおぉぉぉ〜〜〜〜ーー!」

そう叫びながら和人は竹刀を手にニーグに駆けていく。
その時、世界が灰色に染まった。
この感覚は初めてアリスを助けた時にも感じた感覚。全てのものが遅く、スローモーションに感じる。


これならいける、和人はそう思いニーグの顔めがけて思い切り竹刀を振るう。
しかし在ろう事かニーグはそれを躱してみせた。その事に和人は驚いたが次はニーグの拳が和人に迫っていた、このスローモーションに見える世界でもニーグの拳はその他のものよりも速かったがそれを和人は躱す。
再び和人はアリスを掴む手に竹刀を振るうが掴んでいない手で弾かれる、そして蹴りが迫ってくるがそれも躱す。

この攻防を幾度となく繰り返す内に戦い難くなったのかニーグはアリスを掴む手を離した。
今だと言わんばかりに和人は喉元に突きを放つ、しかしそれをその離した手で掴まれた。
そう今のはわざと隙を作り出したのだ、まんまとしてやられた和人は次の蹴りを躱しきれず再び吹き飛ぶ。
その瞬間世界は色を取り戻した。

「和人!」

アリスは途端に吹き飛ばされた和人に駆け寄る。

「ニーグ様、すみません遅れました……ニーグ様?」

ニーグは内心驚いていた。まだ年若い少年が凄まじい速度で動き竹刀を振るい、在ろう事か自分の攻撃まで躱してみせた。その驚愕のあまり固まっていた。

「すまない、ボッとしていた。アリス様これ以上この少年が傷付けられたくなければ…分かりますね?」

「……分かったわ、けどこれ以上和人に酷い事しないで」

これ以上傷付く和人を見てられなかったアリスはニーグ達の後に着いて行く。

「少年、悔しければ10年に1度開催されるルーゼリア剣武祭に出て優勝しろ。そうすれば貴様の求めるものは手に入るだろう」

ニーグはそう言うが和人はそんな事よりアリスの事だ。

「い……く、な…」

和人は腹に蹴りをもろに受け息が上手く出来ずその場に転がっている。それでも必死に手を伸ばし立ち上がろうとするが先程の無茶で身体は言う事を聞かない。
徐々に闇に落ちていく意識、振り返るアリスの顔は涙でぐちょぐちょで見てられなかった。

「ありがとう…さようなら」

和人はその言葉を最後に聞き意識を闇に沈めた。



次からはデスゲーム開始です←

sao事件が終わればALOですが色々改変しまくります。その為GGOの前にオリジナルをぶっ込みますのでよろしくお願いします。