この剣は君の為に〜Sword Art Online 作:黒色狼
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ここでアリスが何処から来てどういうおい立ちなのか分かります。
今回は短めです。
第3話今回は短めです。
夕日が差しいつも見慣れている街が何となく幻想的に見える。
そこに1人の少年が頬を摩りながら歩いている。
「まだ痛い…本当に容赦ないよな」
先ほどアリスに頬を叩かれた所がまだ痛いが近くで寝顔を拝ませて貰ったんだからよしとしよう、そう思う和人である。
今思えば和人はアリスの事を殆ど知らない。確かにまだ出会って日が浅いし出会い方も普通では無かったのもあるが何度か会っているのに殆ど何もしていない。
時折見せてくる笑顔は本当に可愛らしく、けどその奥に何処か寂しさや悲しさを感じさせる、和人はそんなアリスに興味を持ち始めている。
何故そんな顔をするんだ、と。
何となく和人はほっとけないのだ、出来ればそんな顔せずに笑って欲しい。あの寝顔の様に自然に。
自分の考え過ぎかもしれないし余計な事かもしれない。それでも和人はアリスに笑って欲しかった。
これからも普通に接していこう、普通に話をして時にはからかったり…友達のようにと和人は思った。
あるアパートの一室、そこにアリスは住んでいる。
築何年も経って外装はお世辞にも綺麗とは言えない、家の中も六畳のリビングに個室が一つ、トイレ、お風呂があるぐらいだ。
其処に母と二人で今は住んでいる。
「アリス、毎日毎日どこかに行ってるようだけどお友達でも出来たの?」
「ううん、お母さん。あいつはそんなんじゃないわ。昨日は後ろから脅かしてくるし、今日なんか………お母さん、聞いてる?」
アリスは和人のウザさを力説しているというのにお母さん、新谷 理沙は口に手を当て微笑み笑っていた。
それが気に入らなかったのか頬をぷくっと膨らませ、私怒ってますと言いたげな顔をする。
「お母さん、聞いてる?」
「ごめんなさい、馬鹿にしてるわけじゃないわよ。ただその子の事をそんなにも楽しそうに話すんですから」
そう言う理沙は嬉しそうだ、それもそうだろう誰だか知らないが自分の娘と遊んでくれている子がいてそれを娘が楽しそうに話すのだ。こんな嬉しい事はないだろう。
だがアリスは堪ったもんじゃない、楽しそう?そんな訳ある筈がないと言い返そうとするが……
いや今思うと自分自身気付かないうちに楽しんでいたのかもしれない。驚かされた時もそんな風に接してくれたのは嬉しく感じたし今日だって起きたらこっちを見ていて咄嗟に叩いてしまったが和人はずっと起きるまで肩を貸してくれていて嫌というか何方かというと嬉しかったとアリスは思った。
「アリス、そんな風に接してくれる人は少ないのよ。貴方がそんな態度でもそう言う風に接してくれる、とても優しい子だと思うわ。その友達、大事にしなさいよ」
「お母さん、友達だなんてそんなんじゃないよ……それに私はあいつに素っ気ない態度しかとってないし今日も叩いちゃったし…」
「多分、その子は別に気にしてないんじゃないかしら?それに自分が悪いと思ってるんなら謝れば良いのよ」
「そう…かな。今度会ったら謝っておこうかな」
それがいいわとお母さんは微笑む。
(友達……か。私の初めての友達…)
アリスは此処に引っ越してくる前は非常に複雑な環境下で暮らしていた為、友達なんて作った事も無かった。だからどうすればアリスには分からないがこうして友達と言えるような者が出来たのは何だかとても嬉しかった。
「そういえば、この間のニュース見たでしょ?」
「……うん」
「ルーゼリアの次期皇帝が暗殺された今、皇帝の血を引くのはもう貴方だけです。今までは次期皇帝もいて毛嫌いされていたけどこれからは何としても皇帝を継がせようとしてくるでしょう」
「私、皇帝なんかになりたくない…」
「ええ、分かってるわ。私は貴方の置かれる立場に耐え切れなくて故郷に貴方と逃げて来たんですもの。今頃はルーゼリアの者が血眼で貴方を捜している筈よ、流石に此処までは来ないと思うけど貴方も気を付けておいて」
「うん、分かった…」
そうアリスと理沙はルーゼリアから越してきたのだ。
そしてアリスは皇帝の血を引き今では事実上、次期皇帝という事になる。
そして理沙は現皇帝の愛人の一人であった者だ。アリスは愛人の子として産まれそのせいで皇宮では肩身の狭い思いをして来た。
遠くで愛人の子と言われ煙たがられてきたし同年代の者からは酷い虐めにもあっていた。
それに見兼ねた理沙はルーゼリアから逃げ故郷である日本に戻ってきたという事だ。
(痕跡は残してないし見つかる訳…ないわよね)
叶うものなら人並みの幸せを掴み始めた娘にこれ以上辛い思いをさせないようにと思う理沙だった。
和人は剣道の稽古が終わったらいつも恭也に剣術を教えてくれと縋るのだが最近は直ぐに帰っている。
そう、アリスに今日も会う為だ。
と言っても河川敷で初めての出会った場所に行くだけで必ずしもそこにアリスがいるとは限らない。
「今日は……おっ、いたいた」
まだ少し遠いが河川敷の丘にちょこんと座るアリスが見えた。
その長い金髪が光を反射して綺麗に輝いているので遠くからでもアリスだと分かりやすかった。
「よっ、また会ったな」
「う、うん、そうね…」
あれ?今日は何だか様子がおかしいと思う和人。毎度会う度にと言ってもまだ数えれる程だが和人だと分かると皮肉を言ってくるのだが今回はそれが無かった。
それだけでは無く、なんと無く顔が赤い様な気がするし目線も泳いでいる。
「ど、どうしたんだ?なんか今日は様子がおかしいけど?」
「そ、そんな事ないわよ!もう貴方の顔を見るのに嫌気がさしただけよ!」
「まぁそれだけ言えるんなら大丈夫だな」
そう言うと何時の様にニコッと笑ってくる和人。
(どうしてあんたはそんなにも優しいのよ……私はこんなに貴方に酷い事を言ってるのに)
アリスはよく分からなかった。こんな酷い事を言われても尚微笑み掛けてくれる事が。
無理もない、物心ついた頃には周りに自分の事を毛嫌いする者しか居らず心許せる者は母親ともう一人、叔母のみ。
そんな人間の汚い部分に触れ過ぎたアリスは理解出来なかったのだ。
「その……め…ん」
「えっ?何だって?」
「昨日は叩いちゃってごめんって言ってるのよ!ちゃんと一回で聞き取りなさいよ!」
「いや、そんな小さい声じゃ聞こえないだろ?」
そう言う和人にアリスはまた皮肉で返す。
だがその顔は何処か楽しそうだ。
そんな事を言い争ってる間に日も落ちてきておりそろそろ帰らなければいけない時間となっていた。
「もうこんな時間なのね」
「そうだな、お前といると本当に退屈しないよ」
「それは褒めてるの?はぁ、まぁいいわ。それじゃまたね和人」
「おい、今お前和人って……」
「アリス!」
「へ?」
「だから私の事もアリスって呼びなさいって言ったのよ!」
「⁉︎おう、じゃあまたな、アリス」
「うん!」
その輝かんばかりの笑顔を和人はこの先忘れる事はないだろう。
何だかアリスがツンデレしてる…
ツンツンばっかさせ過ぎかな…