この剣は君の為に〜Sword Art Online   作:黒色狼
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今回は大して内容は進みません。

文才が欲しいと思った今日この頃……


第1話

「あの……守ってくれてありがと…」

和人が後ろを見上げると先程まで和人が守ろうと必死になっていた少女がそこには立っていた。
こうしてみても本当に綺麗だと和人は思った。夕焼けに反射して見える長い金髪はそんな少女を更に引き立て輝いている。そんな事を考え少女を見ていると和人に近づきしゃがんで来た。そしておもむろに手を伸ばしてくる。はっ、と我に返った和人はびっくりし後ろに飛び退いてしまう。

「うわっ、っ!痛ぇ…」

「じっとしてて、動いてたら怪我の具合が見れないでしょ」

そう言って少女は和人の手や足を見ていく。自分でも必死だったので怪我の事は気にしていなかったがこうして改めて確認してみると、至る所は青くなり内出血をしているし切り傷も多く所々血が出ている場所もあった。
それに異様に足が痛かった。筋肉痛がもうしてるしもしかしたらあの感覚が関係しているのかも知れないが此処で考えても答えは出そうもないので考えるのを止めた。

「うわぁ、派手にやられたわね。貴方、相当お馬鹿さんなのね」

「お馬鹿さんとは失礼だな、そりゃお前みたいな可愛い女の子が殴られそうにでもなれば必死にでもなるさ」

「そ、そう…」

そう言うと先程まで和人の怪我の具合を見ていた少女が目を逸らし顔も何処かほんのりと赤みが差しているようにも見える。
だがそんな様子を和人が気付く筈もなく話は続く。

「間一髪間に合って良かったよ、けど君は何処から来たんだ?俺はこの辺に住んでるけど君を見たのは初めてだからな」

「私は……遠くからこの辺に引っ越してきたのよ」

「そっか道理で見たこと無い子だと思ったんだ。俺は桐ヶ谷和人。よろしく」

「私は、新谷アリス。見ての通りハーフよ。さっきはどうもありがと。じゃあ私は帰るから」

ってもう行くのかよと追いかけようとするがどうやら足は前に進んではくれないらしい。
走ろうにもかなり足に痛みがあり歩くので精一杯だ。仕方が無いので落とした竹刀を拾い、のそりそのりとゆっくりと帰路に着いた。もちろん進むスピードはかなり遅いし、足も痛くて辛い。そう思うと何だか助けてすぐ立ち去ったアリスという少女が腹立たしくなってきた。

「助けたんだからもう少し怪我の心配とかして帰るの手伝ってくれても良かっただろ。うう〜、腹減ったぁ」

結局、和人が家にたどり着いたのはすっかり日も暮れていた頃だ。
カレーも直葉の参謀により殆ど食い尽くされた後でうな垂れたのは言うまでもない。











次の日、和人は学校が終わっていつも通り道場にいた。
しかし今日は和人の動きがいつもより少し鈍いのを先生、恭也は見抜いていた。
竹刀を振るのもキレがないし、踏み込みや足使いも何処か不自然だ。
今日の練習が終わると恭也はそんな和人を心配しどうしたのか聞いた。

「和人、今日はどうしたんだ?動きが不自然だったぞ。足を庇ってるようにも見えたが怪我でもしたのか?」

そう聞くと和人はあー、と頭をぽりぽり書きながら、

「昨日色々あって酷い筋肉痛になったんです」

「そんなに酷いのか?ちょっと見せてみろ」

そう言って恭也は和人の服をめくろうと足に触れると、

「痛っつ!」

どうやら触れるだけでも相当痛いようだ、和人は痛がってるが恭也はそんな事お構いなしに服をめくり容赦なく触る。

「せ、先生!痛い!痛いですって!」

「所々痣になってるが……ケンカでもしたのか?」

すると和人は顔を逸らす、それでは肯定したも同然だ。シテマセンと言ってるが片言だしそんな事で恭也は……いや誰も騙されやしない。

「したんだな、はぁまた此れは派手にやられたもんだな。どうせお前の事だ、誰かの為だったのだろう?」

うっ、とバツの悪そうな顔をしている所を見ると図星のようだ。
剣道を、剣を通して和人の事をよく知る恭也はそんな事はお見通しなのである。
剣を交えただけで相手の性格などを把握出来る恭也も相当のものだが。

「痣は分かるが何故こんな筋肉痛になってるんだ?もっと酷かったら肉離れになっていても不自然ではないぞ?」

「それが……分からないんです。ある子を助けようと必死になってる間に何処か打ったのかと思ったんですけど違うっぽいですし…可笑しかったのはあの遅く動くようになって一面が灰色になったあれかな?」

それを聞いた瞬間、恭也は驚きを隠せなかった。
何故ならそれは恭也の家に伝わる、和人に話した中にも出てくる流派の奥義に似たような現象が起こるものがあるからだ。
それは身体に負担が掛かるので今、和人が酷い筋肉痛に陥っているのも頷ける。
だがこの歳であの奥義を使うのは無謀でもあり凄い事でもある。


「先生?どうしたんですか?」

「い、いや何でもない」

恭也は思った。案外、和人にその流派を教えるのも面白いかも知れないと。
恭也とてその流派を納める者として和人に御神流を教え、その成長を見ていたい。その先和人がその流派の剣士として完成された時、自分を超えているのか。

(まだ決め付けるのは早い、この流派は本来殺人剣。正しい使い方をすれば守りの剣にもなるが誤ってしまうと人を殺してしまうかもしれん。もし俺に認めさせた時には…)

その時にはこの御神流、永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術を教えよう。
その時は何となく遠くない気がした恭也だった。











何だか今日は逆に先生から質問攻めを受けそのまま帰る事になってしまった和人は昨日、アリスと出会った付近を歩いていた。

「そう言えばここら辺で昨日はアリスと会ったんだっけ?」

その近くに着いた時、何となくその場所に行ってみると風でさらさらと長い金髪をなびかせそこに座るアリスを見つけた。
和人はアリスを呼ぼうかと思い、口を開けたが声を出さず閉じてしまう。
その和人の顔は年相応の無邪気な子供の顔だった、和人がそんな顔をする時は決まってろくな事をしない。
足音を立てないようにアリスに少しずつ近付いていく和人。
そして手を伸ばせば届くという所まできた所で……

「うがぁぁぁ!」

「きゃあ!」

後ろから大きな声を出しその声にびっくりしたアリスは叫び声と共にびくんっと飛び跳ねた。
物凄いスピードで此方を振り返ったアリスの顔は驚きと恐怖が入り混じったような表情だった。

「ぷっ、ははははっ!」

「な、な、何よ!あんただったの⁉︎びっくりさせないでよ!」

昨日のお返しとして驚かせた和人だったが大成功だったようで腹を抱え爆笑している。
いつまでも笑っている和人にアリスは、

「いつまでも笑ってるつもりよ!」

「悪い悪い、まさかあそこまで期待通りの反応をしてくれるとは思わなくてさ」


目に涙を浮かべる程笑っていた和人がそう言った。落ち着いてきた和人は取り敢えずアリスの隣に腰を下ろす。

「なぁ、なんでまたこんなトコにいるんだ?」

「ここの景色……キレイだなぁって思って」

和人はアリスが見ている方向と同じ方向を見た。すると其処には、川は夕焼けの光を反射し赤くそれでもってキレイに輝きを放ちそこから見える町の風景は何処か幻想的に見えた。

「俺ここにずっと住んでるけど、こんなキレイなとこがあるなんて知らなかったよ」

「キレイでしょ?ここに来てこの景色を見ている間は嫌な事もぜんぶ忘れられるの…」

そういうアリスの横顔はどこか暗いものが感じられたが直ぐに元に戻りこの景色に二人で魅入った。
すると、

「ぐぅぅ〜〜」

和人のお腹から間抜けな音がなった。

「ぷっ、あんた間抜けな音を鳴らしてるんじゃないわよ」

なにを、と和人が言い返そうとしたら、

「ぐぅぅ〜」

アリスのお腹から和人よりは控えめな音がなった。

「まぁ、お互い様ってやつだな」

笑顔で和人はそう答えるがアリスは顔を真っ赤にしていた。
相手に言った側から自分のお腹もなったのだから尚更である。

「わ、私帰る!」

「ああ、またな」

アリスは相当恥ずかしかったのかお腹が空いていたのかそそくさと帰っていた。
さて、腹も減ったし帰るかと和人も立ち上がるが隣に光る物が落ちている事に気が付いた。

「ん?なんだこれ?」

それはキレイな翠色の宝石が着いた指輪でチェーンに通してある物だった。

「うわぁ、これ絶対高いよな……アリスのかな?また今度会ったら渡すか…」

一瞬、売ったら幾らになるんだろうと良からぬ事を考えてしまったが直ぐに考え直し今度こそ帰路に着いた和人だった。