この剣は君の為に〜Sword Art Online 作:黒色狼
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最初からぶっ飛んでますが最後まで読んで頂けるとありがたいです。
幼少期序章
その者には才能があった。
勉強をしても常に1番、駆けっこをしても1番、格闘技をしても1番……
実際そんな者はいない。
いるとすればアニメや漫画の主人公で何処ぞの勇者様ぐらいだろう。
誰しも努力をしなければ何も身につけられ無いし、才能があったとしても何もしなければ意味が無い。
それでも才能が無い者がこの世界では過半数を超えるだろう。じゃあ天才とは何なのか?今、世界であらゆる分野に於いて1番の者は何もして無いのか?
いいや、そんな事はない。
誰しも最初のスタート地点は一緒なのだ、何も無い状態から積み上げていく。
どんな風に積み上げていくのかはその者の自由であり、
先に多くを積み上げて来た者を参考にするのもまた良し。
それを元にし自分でアレンジしていくのもよし。
積み上げていく事に必然的に積み上げるのは難しくなるだろうし、挫折しこれ以上積み上げるのを止めてしまう人もいるだろう。
そう天才や今、頂にいる者達はどう積み上げていくかを必死に考え積み上げる事を止め無かった者だ。
そして彼は別段、他者と比べて才能がある訳でも無い何処にでもいる少年だ。
しかし彼は考え積み上げる事を決して諦め無い、そう例えるのなら努力の天才。
そんな彼が時には、絶望し壁にぶち当たり仲間に支えられながらも一つの約束を必死になって守り抜こうとする物語である……
此処はある剣道の道場。
伝統のある道場で、此処の先生の先祖は侍で将軍の側近になる程の強者だったというのがもっぱらの噂だ。
そこに彼、桐ヶ谷和人も通っている。最初は嫌々叔父に通わされていたのだが最近は道場の先生と仲が良くなり剣道、と言うより剣を振るうという事に興味を持ち毎日この時間を楽しみにしている。
別に和人に才能があった訳では無い、無い事も無いがズバ抜けてある訳でも無い凡人よりある方というのが道場の先生の評価だ。
しかし、一度興味を持った事にはひたすら彼は真剣でいつも組み手では一つ一つ確実に成長している事を感じさせる程だ。
『ありがとうございましたー』
今日の練習は終わり子供達は全員お礼を述べ親と帰る者もいれば友達と談笑しながら帰っていく者達がいるなか和人はというと、
「スグ、悪いけど先に帰っててくれないか?」
「また?お兄ちゃん毎回残って何してるの?今日はお兄ちゃんの大好きなカレーだよ、無くなっても知らないからね」
そう言ってスグ、桐ヶ谷直葉は帰って行ってしまった。
桐ヶ谷直葉は和人の妹だ、直葉が言ったように今日はカレーでそれを食べれないかも知れないと聞かされ肩を落としたがそれより和人にはやりたい事があった。
「先生、今日こそ俺に剣道じゃなくて剣術を教えて下さい!」
「何度も言ってるだろう、それは出来ない。もうこの剣、剣術は役目を終えたんだ、これ以上世に伝える必要はないんだ」
先生、高町 恭也はそう言って剣術の指南を拒否する。
何故こんな話になっているのかというと、嫌々通って来ているのが目に見えて分かる和人にやる気を出させる為に恭也は先祖の話をしたのだ。
すると途端に和人はやる気を出し今までの態度が嘘のように真剣に取り組むようになった。
その話に出てくる流派に憧れたらしく和人はそれから教えてくれとしつこいのだ。
結局今日も教えて貰う事が出来ずに帰り道である河川敷の上を歩いている和人
「ちぇ、今日も駄目だったか。けど俺は諦め無いぞー!」
そんな事ではめげ無いし諦めない、決めた事は決して途中で止めない、それが和人の何よりの長所だ。
どうやって先生から剣術の流派の事を教えて貰おうか考えていると下が何やら騒がしい事に気が付いた。
普段なら気にしないのだがこの時は何故だか見に行った方が良いような気がして下を見ると、
「お前此処は俺たちの遊び場だぞ!退けよ、それになんだよその髪と目の色は?正直に言ってキモいからお前、なあ?お前達もそう思うよな?」
その少年は和人と同じ学校のやんちゃな男の子だった、その周りにいた子達も首を縦に振り肯定する。
「………」
がそう言われている当の本人は何も喋らず沈黙している。
そこには罵声を浴びせる少年少女とその罵声を受けている金髪碧眼の少女がいた。
正直和人はその罵声を受けている少女の容姿に見惚れていた、何処か神聖な物すら感じさせる金髪、透き通る様な綺麗な碧い目、どっからどう見ても可愛らしい顔、彼女だけが何処かの世界から突然この世界に現れた様に思わせる程少女は美しかった。
「何とか言えよ!こんな汚い色の髪なんか抜いてやろうか!」
そう言って1人の少年はその女の子の髪を引っ張った。
が和人は持っていた竹刀を取り出し一気に下まで駆けていき、小手の要領で少女の髪を引っ張る少年の手を叩き落とした。
「いてぇ!お前何すんだよ!って桐ヶ谷かよお前⁉︎」
どうやら同じ学校なので名前ぐらいは知られていた様だ。
「お前こそこの子に何て事するんだよ、寄ってたかって弱い者虐めか?」
「此奴が俺たちの了解も無しに此処にいるから悪いんだ!此奴を庇うんならお前から痛い目を見せてやる!」
そう言って計3人に囲まれた和人、彼らは学校でも腕っ節が強くやんちゃで有名な奴らだ。体格も和人に比べてガッチリしていて、普通にケンカをすれば勝ち目は無いだろう。
だが、和人には竹刀がある。
少年の1人が和人に殴り掛かってきた、しかしその動きは直線的過ぎる、先生の面をに比べたらかなり遅いし脅威では無いと和人は思った。
それを和人は横にステップして交わし横払いでその少年の顔を強打した。
「くそっ、テメェ!」
残り二人がそれで逆上し二人揃って殴り掛かってくる、次の動作を考える暇も無く腹にもろに受け竹刀を落とし吹き飛ばされてしまった和人。
「うがっ!うう…」
鳩尾に入りその場にうずくまる、其処に先ほど顔を強打された少年も加勢し和人をボロ雑巾の様に蹴りまくる。
「オラオラ!これに懲りたら二度と俺に逆らうんじゃねぇ!」
するとこの場を纏めていると思われる少年が金髪碧眼の少女に近付いていく。
「ほら、お前の所為で桐ヶ谷もあのザマだぜ?」
「………」
それでも沈黙を破ら無い少女にその少年は苛立ち、
「お前っ!舐めてんのか!」
髪の毛を乱暴に引っ張り揺さぶり出した。
すると少女の顔は痛みで歪み、
「痛い!離して!」
悲痛な声を上げるがこれでもかという程少年は少女の髪を乱暴に引っ張る。
それを他の二人から蹴られているので見ている事しか出来無い和人。
「お前ら、そんな事して恥ずかしく無いのか!」
「うるせぇ、こうでもしないと俺の気が済まないんだよ!」
(くそっ、俺は何も出来ないのか……そんなのは嫌だ!出来なくてもやるんだ!)
蹴られている和人だったが不意をつき1人に飛びかかった。
「うおっ!」
「うおぉぉぉ〜〜〜」
いつもは冷静に考えて行動するタイプの和人だが今はひたすらがむしゃらに必死になって抵抗している。
「ウザいんだよ!」
「ぐふっ!」
だがもう1人に蹴られまた吹き飛ばされる、目線の先には髪の毛を引っ張られ涙を浮かべている少女が見える。
あろう事か少年は少女に手を振り上げた、このままでは少女は少年に顔を叩かれてしまうだろう。
今では和人も土と汗塗れで汚れ身体の節々は蹴られ痛みを発している。
そんな中、必死に少年を止めようとしていた。目を閉じ、怯えて迫り来るであろう拳に目尻に涙を溜めた少女はキュッと目を閉じている。どう考えても間に合わない距離。和人の走力では到底間に合わない。そう理解しそう思っても和人は諦めない。
助けられない、そんなのは分かっている。けど頭で理解していても和人には諦められ無かった。
「やめろぉぉぉぉぉ〜〜!」
次の瞬間、和人の見ている世界が変わった。世界が灰色に染まっていた。だが目の前の少年の動きが凄くスローモーションに見える。
隣を見ると自分に追い打ちを掛けようとしている者が見えるがそれも同じ様に物凄く遅く見えている。
なのに自分はこんなにも思考が早く回る、だが今はそんな事はどうだっていい。
これなら目の前の少女を助けられるかも知れない。
和人は少女を助けるべく地面を蹴った。いつもの自分の動きにしてはかなり遅いがそれでもこの世界の中では速く、確実に近付いている。
この一面灰色に染まった世界を和人は走り抜ける、本来なら届く事すら叶わなかった少女の元へ、助ける為に。
ゆっくりと少女に迫る少年の拳、たかが餓鬼のパンチだが目の前の少女にはひたすら脅威でしかない。だがこの拳もこの世界では蝿が止まるほど遅い。これなら間に合う。しかしいつこの感覚が解けて終わってしまうのか和人にも分からない、だから和人は何処までも全力で走った。
いつの間にか筋肉を酷使したのか両足の筋肉が痛い、蹴られた時だろうか?そんなものは関係ないと重い足を前に前にと運ぶ。
「うっ、ああああああ!」
その叫びと共に和人は少年に渾身のパンチを腹に叩き込む。
殴った瞬間、世界が色を取り戻し動きも元に戻っていた。
「う、う、うわぁぁ〜〜ん⁉︎」
和人に殴られた少年は相当痛かったのか泣いてしまいそのまま何処かに走って行ってしまった。
取り巻きの少年達もその光景を見て怖気付きその少年を追って何処かに行った。
「俺は……間に合ったのか?」
さっきのは何だったのだろう?少女を守れた事とさっきの出来事があり和人はその場にへたり込んだままだ。
すると少女が、
「あの……守ってくれてありがと…」
これが桐ヶ谷和人と新谷アリスの出会いだった。
勉強をしても常に1番、駆けっこをしても1番、格闘技をしても1番……
実際そんな者はいない。
いるとすればアニメや漫画の主人公で何処ぞの勇者様ぐらいだろう。
誰しも努力をしなければ何も身につけられ無いし、才能があったとしても何もしなければ意味が無い。
それでも才能が無い者がこの世界では過半数を超えるだろう。じゃあ天才とは何なのか?今、世界であらゆる分野に於いて1番の者は何もして無いのか?
いいや、そんな事はない。
誰しも最初のスタート地点は一緒なのだ、何も無い状態から積み上げていく。
どんな風に積み上げていくのかはその者の自由であり、
先に多くを積み上げて来た者を参考にするのもまた良し。
それを元にし自分でアレンジしていくのもよし。
積み上げていく事に必然的に積み上げるのは難しくなるだろうし、挫折しこれ以上積み上げるのを止めてしまう人もいるだろう。
そう天才や今、頂にいる者達はどう積み上げていくかを必死に考え積み上げる事を止め無かった者だ。
そして彼は別段、他者と比べて才能がある訳でも無い何処にでもいる少年だ。
しかし彼は考え積み上げる事を決して諦め無い、そう例えるのなら努力の天才。
そんな彼が時には、絶望し壁にぶち当たり仲間に支えられながらも一つの約束を必死になって守り抜こうとする物語である……
此処はある剣道の道場。
伝統のある道場で、此処の先生の先祖は侍で将軍の側近になる程の強者だったというのがもっぱらの噂だ。
そこに彼、桐ヶ谷和人も通っている。最初は嫌々叔父に通わされていたのだが最近は道場の先生と仲が良くなり剣道、と言うより剣を振るうという事に興味を持ち毎日この時間を楽しみにしている。
別に和人に才能があった訳では無い、無い事も無いがズバ抜けてある訳でも無い凡人よりある方というのが道場の先生の評価だ。
しかし、一度興味を持った事にはひたすら彼は真剣でいつも組み手では一つ一つ確実に成長している事を感じさせる程だ。
『ありがとうございましたー』
今日の練習は終わり子供達は全員お礼を述べ親と帰る者もいれば友達と談笑しながら帰っていく者達がいるなか和人はというと、
「スグ、悪いけど先に帰っててくれないか?」
「また?お兄ちゃん毎回残って何してるの?今日はお兄ちゃんの大好きなカレーだよ、無くなっても知らないからね」
そう言ってスグ、桐ヶ谷直葉は帰って行ってしまった。
桐ヶ谷直葉は和人の妹だ、直葉が言ったように今日はカレーでそれを食べれないかも知れないと聞かされ肩を落としたがそれより和人にはやりたい事があった。
「先生、今日こそ俺に剣道じゃなくて剣術を教えて下さい!」
「何度も言ってるだろう、それは出来ない。もうこの剣、剣術は役目を終えたんだ、これ以上世に伝える必要はないんだ」
先生、高町 恭也はそう言って剣術の指南を拒否する。
何故こんな話になっているのかというと、嫌々通って来ているのが目に見えて分かる和人にやる気を出させる為に恭也は先祖の話をしたのだ。
すると途端に和人はやる気を出し今までの態度が嘘のように真剣に取り組むようになった。
その話に出てくる流派に憧れたらしく和人はそれから教えてくれとしつこいのだ。
結局今日も教えて貰う事が出来ずに帰り道である河川敷の上を歩いている和人
「ちぇ、今日も駄目だったか。けど俺は諦め無いぞー!」
そんな事ではめげ無いし諦めない、決めた事は決して途中で止めない、それが和人の何よりの長所だ。
どうやって先生から剣術の流派の事を教えて貰おうか考えていると下が何やら騒がしい事に気が付いた。
普段なら気にしないのだがこの時は何故だか見に行った方が良いような気がして下を見ると、
「お前此処は俺たちの遊び場だぞ!退けよ、それになんだよその髪と目の色は?正直に言ってキモいからお前、なあ?お前達もそう思うよな?」
その少年は和人と同じ学校のやんちゃな男の子だった、その周りにいた子達も首を縦に振り肯定する。
「………」
がそう言われている当の本人は何も喋らず沈黙している。
そこには罵声を浴びせる少年少女とその罵声を受けている金髪碧眼の少女がいた。
正直和人はその罵声を受けている少女の容姿に見惚れていた、何処か神聖な物すら感じさせる金髪、透き通る様な綺麗な碧い目、どっからどう見ても可愛らしい顔、彼女だけが何処かの世界から突然この世界に現れた様に思わせる程少女は美しかった。
「何とか言えよ!こんな汚い色の髪なんか抜いてやろうか!」
そう言って1人の少年はその女の子の髪を引っ張った。
が和人は持っていた竹刀を取り出し一気に下まで駆けていき、小手の要領で少女の髪を引っ張る少年の手を叩き落とした。
「いてぇ!お前何すんだよ!って桐ヶ谷かよお前⁉︎」
どうやら同じ学校なので名前ぐらいは知られていた様だ。
「お前こそこの子に何て事するんだよ、寄ってたかって弱い者虐めか?」
「此奴が俺たちの了解も無しに此処にいるから悪いんだ!此奴を庇うんならお前から痛い目を見せてやる!」
そう言って計3人に囲まれた和人、彼らは学校でも腕っ節が強くやんちゃで有名な奴らだ。体格も和人に比べてガッチリしていて、普通にケンカをすれば勝ち目は無いだろう。
だが、和人には竹刀がある。
少年の1人が和人に殴り掛かってきた、しかしその動きは直線的過ぎる、先生の面をに比べたらかなり遅いし脅威では無いと和人は思った。
それを和人は横にステップして交わし横払いでその少年の顔を強打した。
「くそっ、テメェ!」
残り二人がそれで逆上し二人揃って殴り掛かってくる、次の動作を考える暇も無く腹にもろに受け竹刀を落とし吹き飛ばされてしまった和人。
「うがっ!うう…」
鳩尾に入りその場にうずくまる、其処に先ほど顔を強打された少年も加勢し和人をボロ雑巾の様に蹴りまくる。
「オラオラ!これに懲りたら二度と俺に逆らうんじゃねぇ!」
するとこの場を纏めていると思われる少年が金髪碧眼の少女に近付いていく。
「ほら、お前の所為で桐ヶ谷もあのザマだぜ?」
「………」
それでも沈黙を破ら無い少女にその少年は苛立ち、
「お前っ!舐めてんのか!」
髪の毛を乱暴に引っ張り揺さぶり出した。
すると少女の顔は痛みで歪み、
「痛い!離して!」
悲痛な声を上げるがこれでもかという程少年は少女の髪を乱暴に引っ張る。
それを他の二人から蹴られているので見ている事しか出来無い和人。
「お前ら、そんな事して恥ずかしく無いのか!」
「うるせぇ、こうでもしないと俺の気が済まないんだよ!」
(くそっ、俺は何も出来ないのか……そんなのは嫌だ!出来なくてもやるんだ!)
蹴られている和人だったが不意をつき1人に飛びかかった。
「うおっ!」
「うおぉぉぉ〜〜〜」
いつもは冷静に考えて行動するタイプの和人だが今はひたすらがむしゃらに必死になって抵抗している。
「ウザいんだよ!」
「ぐふっ!」
だがもう1人に蹴られまた吹き飛ばされる、目線の先には髪の毛を引っ張られ涙を浮かべている少女が見える。
あろう事か少年は少女に手を振り上げた、このままでは少女は少年に顔を叩かれてしまうだろう。
今では和人も土と汗塗れで汚れ身体の節々は蹴られ痛みを発している。
そんな中、必死に少年を止めようとしていた。目を閉じ、怯えて迫り来るであろう拳に目尻に涙を溜めた少女はキュッと目を閉じている。どう考えても間に合わない距離。和人の走力では到底間に合わない。そう理解しそう思っても和人は諦めない。
助けられない、そんなのは分かっている。けど頭で理解していても和人には諦められ無かった。
「やめろぉぉぉぉぉ〜〜!」
次の瞬間、和人の見ている世界が変わった。世界が灰色に染まっていた。だが目の前の少年の動きが凄くスローモーションに見える。
隣を見ると自分に追い打ちを掛けようとしている者が見えるがそれも同じ様に物凄く遅く見えている。
なのに自分はこんなにも思考が早く回る、だが今はそんな事はどうだっていい。
これなら目の前の少女を助けられるかも知れない。
和人は少女を助けるべく地面を蹴った。いつもの自分の動きにしてはかなり遅いがそれでもこの世界の中では速く、確実に近付いている。
この一面灰色に染まった世界を和人は走り抜ける、本来なら届く事すら叶わなかった少女の元へ、助ける為に。
ゆっくりと少女に迫る少年の拳、たかが餓鬼のパンチだが目の前の少女にはひたすら脅威でしかない。だがこの拳もこの世界では蝿が止まるほど遅い。これなら間に合う。しかしいつこの感覚が解けて終わってしまうのか和人にも分からない、だから和人は何処までも全力で走った。
いつの間にか筋肉を酷使したのか両足の筋肉が痛い、蹴られた時だろうか?そんなものは関係ないと重い足を前に前にと運ぶ。
「うっ、ああああああ!」
その叫びと共に和人は少年に渾身のパンチを腹に叩き込む。
殴った瞬間、世界が色を取り戻し動きも元に戻っていた。
「う、う、うわぁぁ〜〜ん⁉︎」
和人に殴られた少年は相当痛かったのか泣いてしまいそのまま何処かに走って行ってしまった。
取り巻きの少年達もその光景を見て怖気付きその少年を追って何処かに行った。
「俺は……間に合ったのか?」
さっきのは何だったのだろう?少女を守れた事とさっきの出来事があり和人はその場にへたり込んだままだ。
すると少女が、
「あの……守ってくれてありがと…」
これが桐ヶ谷和人と新谷アリスの出会いだった。