学生のワーキングメモリーを増やす方法
その1
毎回の授業中に4,5分の時間を割いて学生のワーキングメモリーを増やしませんか。出来るだけ多くの授業で繰り返し刺激をすれば、効果は確実と信じます。添付pdfは中学生の数学の方程式問題で、先生がその中から乱数的に一問を選ぶのです。学生は全ての講義でどれか一つの問題を聞くことになり、やがて同一問題を二回、三回と聞くこともあるでしょう。そのとき、初回にはならなかった内容の把握が出来ればワーキングメモリーが増えているのでしょう。
この程度の問題をかなりの学生が聞き取れるようになるまで、今学期を通して添付を聞かせませんか。これら数学題は内容が明晰で疑問の余地ありません。しかも、文を聞けば内容を把握しようと、ほとんどが頭を働かせます。容量が少ないとその瞬間に聞き取れなくなったり、さらにひどい場合は全てがあいまいになります。
添付pdfの22題はいい加減に選んでいます。また、その利点と欠点を「極度に少ないワーキングメモリー」の注1で比較しました。従って、ワーキングメモリーを増やすために、より多くの学生に適した手法や文章があるはずです。
実施方法の提案
学生に自身のワーキングメモリー実態を認識させ、「これではいけない。何とか増やしたい」と心から思わせる必要があります。そのため、まず下記の問1を行う。彼らが十分考えた後(4分後位)問1の内容を図示し、式を板書する。
これにより自身の実体が分かったときに次を言う: 聞く内容を把握しようと頭を働かせても中身の理解ができなくなったり、その瞬間に聞き取れなくなるのはワーキングメモリーが少ないからです。即ち、「聞く」と「簡単な内容を理解する」の2種の情報処理を同時に行うことが現在の君はできないのです。活字を読むのが辛い、ラジオを聴けない、まじめな話を聞くのが不得手であるなどの原因の多くがそこにあります。これでは社会生活を送るのに不都合です。繰り返し不利益をこうむるでしょう。
諸君の周囲はそういう人ばっかりでしょうか。しかし、この現状は悲惨といえます、本来の能力よりはるかに低いのです。例えば、以前はほとんど全員がラジオを聴いて十分楽しめたのです。
諸君の今までの全人生の結果が現状であり、これを継続してはワーキングメモリーが増えません。歳を考えると、学生時代がそのための最後の機会かもしれません。これから行う数学問題の聞き取りに集中すれば、皆さんの人間力が飛躍的に向上します。頭が一杯とか、疲れる、局部的に熱がでる、ボーっとしてくるなどの感覚は正にワーキングメモリー不足の症状です。それに耐えて聞きながら内容を理解しようと頑張ってください。
実行時の説明
これから短い中学の方程式問題をゆっくり一度だけ読みます。集中して聞きながら、大切な数値を覚え、中身を理解してください。鉛筆を持たないでください、メモはできるだけ取らないでください。聞きながら、内容を分かろうとすること自体が大切なのです。文をそのまま覚え、後で書いたものを見て解くでは何の役にも立ちません。皆さん自身が分かれば好いので、何も提出する必要はありません。
未知数を定義して、数値を入れた式を立てるのがベストです。そこまで行けなくても、内容が数値を含めて完全にわかれば十分です。
問題文は答えを聞いていても、内容を理解して式を立てる所で終わりです。
同じ文を2回さらに3回と聞くとき、記憶したものを思い出しては無意味です。最初と全く同じように、聞きながら内容を分かろうとしてください。前より良く分かるようになっていたら、それはワーキングメモリーが増えたのです。
ワーキングメモリーを増やす問題 02-10-25 井川
毎回次を確認しましょう:
聞きながら内容を理解しよう。 未知数を定義して立式がベストだが、数値を含めて内容が理解できれば十分。 メモは出来るだけ取らない。 文を覚え、それを書いて考えるでは効果ない。 頭が一杯になるのはワーキングメモリーを増やすための苦しみ。
問1 私の家からポストまでを往復すると10分かかります。あるとき、ポストより200m遠いとこへ家から行くのに13分かかりました。なおその時は、途中で5分ほど立ち止まって知人と話をしました。私の歩く早さはいつも同じです。
私の歩く早さと家からポストまでの距離を求める式を書いてください。
問2 線分ABの長さは10センチメートルです。線分AB上に点Cをとり、線分ACと線分ABの長さを2辺とする長方形を作り面積を求めたら、線分CBを1辺とする正方形の面積より4平方センチメートル大きくなった。線分ACの長さを求めなさい。
問3 周囲が2100メートルの池のある地点から、花子と太郎が同時に反対方向に走り出し、最初に出会ったのは出発から7分後でした。2回目は、花子が先に走り出して2分後に、太郎が走り出しました。太郎が走り出して5分後に花子に追いつきました。