慰安婦・THAAD、日米との約束破棄に韓国識者から懸念の声

■THAAD配備延期も絡む状況

 日本との関係も問題だが、その影響は韓米関係にも及ぶ可能性がある。大統領府の元関係者は「中国・北朝鮮を相手にするため韓米日安保協力の回復を切実に望んでいる米国は、韓日の歴史問題における確執を遺憾に思っている。やっと一息ついたところなのに、これを再び破ると言えば、米国も失望するだろう」と言った。延世大学統一研究院のポン・ヨンシク研究員は「慰安婦合意を破れば、中国に対して、韓米間におけるTHAAD問題も変更可能だとの印象を与えるかもしれない」とも語った。悪いことにTHAAD配備延期・撤回問題も大統領選挙をめぐる政局にかかわっている。

 米国は、THAAD配備を韓米同盟における問題ととらえている。韓国政府は国内事情のため「韓国を防衛する目的」をTHAAD配備の名分に掲げている。ところが、安保関係の専門家らは「まずは在韓米軍や韓国軍など韓半島(朝鮮半島)の戦力保護が目的だ」としている。韓国軍と米軍が現在保有しているミサイル防衛システムでは、北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」をきちんと迎撃できない。一方、北朝鮮は近いうちにノドンに核兵器を搭載できるほど技術力が向上すると予想されている。これもTHAAD配備を急ぐ理由だ。韓国側が中国との「経済問題」を理由にTHAAD配備をストップさせれば、米国ではすぐさま「韓半島防衛のための米軍・韓国軍の命より、中国との経済が重要だという話か」と言ってくるだろうと外交消息筋では見ている。

■韓米同盟も考慮せよ

 事実、THAAD配備についてオバマ政権は「すでに終わったこと」と、今月20日に発足するトランプ政権は「韓米同盟の象徴」という表現を使っている。ワシントンの外交消息筋は「こうした状況で韓国がTHAAD配備を見直すと言えば、米国では『韓米同盟懐疑論』が出てくる可能性が高い」と話す。トランプ氏は大統領候補だった時、防衛費分担金の問題をめぐり在韓米軍撤退の可能性に言及したことを考えると、韓米間でTHAADをめぐる確執が深まれば、「在韓米軍撤収」という切り札を出してくるかもしれない。来年から本格化する防衛費分担金交渉は始めから難航が予想される。過去の政権で高官を務めた人物は「韓米同盟が揺らぐということは、韓国の外交・安保の根幹が揺らぐという意味だ。政治家たちはそれだけの戦略と対応策を持って発言しているのか分からない」と語った。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者 , 李竜洙(イ・ヨンス)記者
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