韓国大統領府の金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長は8日、米国のトランプ時期政権の関係者と会うため出国した。取材記者らが具体的に誰に会うのか質問したところ、金氏は「まだ決まっていない」と答えた。この回答こそ現在、国際社会で韓国がおかれた状況を物語っているのではないだろうか。リッパート駐韓米国大使が離任会見を行う直前にこれを取りやめたこともどこか腑に落ちない。米国が韓国の次の大統領選挙結果を見極めようとしているのであれば、今の不安定な韓米関係はまだ4-5カ月は続くことになる。
日本の安倍首相は8日、日本のテレビ番組に出演した際「(慰安婦合意は)政権が変わっても実行されなければならない」と述べ、また米国のバイデン副大統領は「韓米両政府が責任を果たしていくことが重要だ」と発言した。つまりこの問題で米国は事実上、完全に日本の側にあることがわかる。今日帰国する長嶺安政・駐韓日本大使は表向きは「一時帰国」としているものの、いつ韓国に戻るかは明言していない。米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備についても、この問題で中国がこれから数日の間にどのような対応をしてくるか予想もつかない。米国、中国、日本の3カ国との関係がどれも完全にギクシャクし始めているのだ。
今や様々な外交問題で韓国政府は完全に死に体として扱われているが、このような状況で北朝鮮問題の枠が見直されそうな兆候も出始めた。米国ではこれまで政権が交代すると、次の政府の外交政策が定まるまでに6カ月は掛かるとされてきたが、今回は新政権発足前から中国への対応の仕方がある程度決まってきそうだ。一方で今月末にトランプ次期大統領と安倍首相が会談を行う予定だが、その場で何が議題となるかも現時点ではわからない。北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長はトランプ新政権の外交政策を見極めた上で、適当な時期になれば戦略的に軍事挑発を仕掛けてくるだろう。昨年7月に脱北し韓国に亡命した北朝鮮のテ・ヨンホ前駐英公使は「米本土まで核ミサイルを飛ばせる能力があることを証明するまで、北朝鮮は挑発行為を続けるはずだ」と明言している。
このように韓半島(朝鮮半島)周辺諸国のストロングマンたちが、今後われわれの頭上でどうボールをやり取りするか、今の時点では誰もわからない。ところが韓国で次の大統領選挙に出馬するとみられる候補者たちは、誰もこれら外交面での深刻な問題については語ろうとしない。「与党、野党、政府による安保協議体を立ち上げる」といった聞き飽きた言葉さえ最近は出てこない。彼らは外交・安全保障問題においてさえ、大衆に迎合するだけの単細胞的な主張しか語れないのだ。