ミャンマー西部ラカイン州で起きた暴力的な事件や、軍兵士がイスラム系少数民族ロヒンギャを虐殺したりレイプしたりするという疑惑が発端となり、国際社会から非難がわき起こった。アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相率いる国民民主連盟(NLD)が2015年の総選挙で歴史的とたたえられた勝利を収め、喜びに沸いたのはわずか1年少し前のことで、この危機的事態がミャンマーのもろさも浮き彫りにした。
実質上の最高指導者スー・チー氏の特使は11日、この事態について隣国のバングラデシュで高官級会議を持つことになっていた。国連によると、過去3カ月でバングラデシュに避難したロヒンギャは少なくとも6万5000人にのぼり、そのうちの3割が1月5日までの1週間に集中しているという。ミャンマー当局がロヒンギャの武装グループのしわざだと主張する16年10月に起きた国境警官9人の殺害事件を受けて、治安部隊がロヒンギャ弾圧に乗り出した影響が背景にある。
ラカイン州では、長年におよぶ貧困の深刻化で緊張が高まっており、ロヒンギャに対するあからさまな差別があるなかで問題が持ち上がっている。ロヒンギャの多くは国籍を与えられず労働の権利も持たないうえ、移動や選挙の権利も制限されている。強硬派の仏教徒集団は、長いことロヒンギャを移民として扱っている。12年にはラカイン州で大規模な暴力事件が勃発し、多数の死者を出したうえ、何千という人が行き場を失った。
スー・チー氏の仲間である多くのノーベル平和賞受賞者が先月、直近の弾圧を「民族浄化という人類の悲劇だ」と明記した公開書簡に署名し、国連安保理に送った。スー・チー氏は時間が必要だとした一方で、一部の政府高官や国営メディアは、軍兵士が暴行したとする報告をでっち上げだと一蹴した。
■スー・チー氏に非難も
今回の争いによって、ミャンマーの民主化やスー・チー氏自身を支持する世界の支援者たちの目の前に不快な真実があらわになった。1つは、軍の根強い影響力と自律性だ。ほぼ50年にわたって国を支配してきた軍は、議会の議席や重要な省庁の職、また法案可決の拒否権を持つ特別委員会の過半数を握っており、外部が責任ある説明をしたり監視したりするという兆しはほとんど見えない。その証拠に、ラカイン州の疑惑を調査する公式な委員会は、元高級軍人で現副大統領のミン・スエ氏が率いている。