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1・トントロポロン
「復讐だ! 一向に俺たちを摘まない人間に復讐だァ!!!」
「「「(ぷるぷる、ぷるぷる!!!)」」」
そう、俺は、俺たちは誇り高きトントロポロンだ。
さきほどまで弱気だった自分が情けない。
ちょっと木から落ちただけじゃないか。
誰にも摘まれることなく完熟したトントロポロロンズは、みずから地に落ちてトントロポロンに転生する……当たり前のことだ。
だというのになぜ恐怖していたのだろう……ああ、恥ずかし恥ずかし///
さて、と。改めて状況を整理しよう。
人間から豆腐、豆腐から豆腐戦士になった俺は、豆腐を放置し、食物を無下にした愚かな人間族に聖戦をしかけなくてはならない。
ただ、一丁だけでは心もとないと同期のトントロポロンたちに声をかけた。
どうも俺以外のトントロポロンは喋れないみたいだが、摘まれなかった憎しみを持っているところは一緒みたいだ。
「(ぷるぷる!)」と縦に震え、こころよく快諾してくれた。
おかげさまで、総勢三十丁はあろうかという一揆衆が結成されたのであった。
奴らの口にこちらから乗り込んで胃の中に侵入してやろうぜ、みんな!
愚連隊と化した豆腐戦士一同は、俺を先頭にスイ~とスライド移動を開始した。
よく分からないが、豆腐戦士はどんな悪路でもスライド移動できるみたいだ。
足元(足というか平面だが)が少し浮いていて汚れないから、食品衛生はバッチリ守られている。人の口に入っても安心というわけだ。
いろいろとツッコみたい部分もあったが、ここはトンデモ異世界。
スイスイ動けるくらい、どってことないだろ。
はるか遠くに、頭が超たくさんある超巨大生物が見えるくらいだしな……。
かくて俺たちは進む。収穫にきてた奴らが去っていった方角へと。
進んで、進んで、進むと、村が見えてきた。
その村はいかにも中世ファンタジーにありそうな村で、それで伝わらないならそれぞれが脳内補完してくれよって感じの村だ。
村人の姿もちらほら見える……よし、行くか。
モチロン、一声かけてからね。
「震えるがいい、戦士たちよ! 進軍開始ィッ!!!」
「「「(ぷるぷる、ぷるぷる!!!)」」」
一斉にぷるぷる身を震わした俺たちは、スイ~と村めがけて突撃した。
先頭の俺が村の入口にさしかかると、ようやく我らに気付く者が現れた。
「み、みんなァーー! トントロポロンが群れをなしてやってきたぞーー!!!」
腐腐(※笑い声)。
そうだ……豆腐戦士たちの報復がこれより始まる。
食うか食われるか、聖戦の火ぶたは――ミスった、リテイク!
――食わせるか食われるか、聖戦の火ぶたは切って落とされた。
* * * * * * * * * *
馬鹿な……こんなはずでは……。
グサッ! グサッ! グサッ!
ワッと出てきた村人どもに、アッという間に囲まれるやいなや、先の鋭いクワで蹂躙されていた。
俺はなんとかかわしているものの、同志たちの何丁かがポン酢を浸透させるべく箸で穴をあけられたかのような姿になっている。
しかし、奴らは食べる目的でこんなことをしているんじゃあない!!
奴らの無慈悲な目、そして……
「死ねェ!!」
カン違いしようのない、死の宣告。
おい……待てよ……そうじゃないだろ??
俺たちはお前たちに食われたくて……なのに、どうして……
「どうして殺そうとするんだ!!! なんで食わない!!!」
俺が叫ぶと、村人たちはピタリと動きを止めた。
「トントロポロンが……」
「しゃ、しゃべった……?」
驚いた様子の村人たち。
それぞれがどうしようかと顔を見合わせている。
すると、囲いの外から偉そうな爺があらわれた。ずばり村長と見た。
「じ、人語をあやつる不思議なトントロポロンよ……今、何と言った?」
聞いていなかったのか村長――村長(仮)め。
いいさ、もう一度聞かせてやるよ。
「どうして!俺たちを!殺す! なんで!食わない!!!」
俺の叫びを聞いた村長はくわっと目を見開き、くわわっと眉も上げて、
「お、おぬしら、そんなことを考えていたのか……!!!」
ビックリ仰天していた……。いや、ビックリ要素なんてねーだろ!
「他になにを考えればいいんだよ⁉ 豆腐だぞ豆腐! 食われてナンボだろ!!」
「トウフ?」
「俺たちのことだよ!! ほら、食えよ!!」
そう言い切ると、またたく間に眉根を寄せた村長(仮)。
そして彼は、重苦しげに口を開き、
「…………トントロポロンたちよ、おぬしらはな――」
一拍おいて、告げた。
「食べ物では……無い!!!」
「なっ、何ィーーーーーッ!!!!?」
「「「(ぷるぷる!? ぷるぷる!?)」」」
衝撃の真実に、俺たちはぷるぷると身を震わせた。
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