中国の規制当局は、インターネット上の仮想通貨ビットコインが資産を中国国外に移すための隠れみのに使われないよう、対策を講じ始めた。
ここ数カ月の人民元の下落とビットコイン価格の上昇には明らかに相関関係がある。このため、仮想通貨が資本の海外逃避を促しているのではないかという疑いが浮上した。だが、投資家らは、ビットコインが大量の人民元を国外送金するために使われているという説には懐疑的だ。
中国のビットコイン相場は2016年、前年比145%上昇した。一方、元は6.5%下落し、史上最も元安に振れた年となった。調査機関ビットコイニティーによると、中国でのビットコイン取引は、過去半年で全世界の取引高の98%を占めた。
中国人民銀行(中央銀行)の北京と上海の支店が発表した声明によると、人民銀は先週、中国のビットコインの三大取引所と会談し、リスク管理に関する規則を「厳格に」順守し、規則から外れた取引を「一掃」するよう改めて求めた。ビットコイン相場はこの発表を受けて9%下落した。
人民銀は2013年、ビットコインは本物の通貨ではないとしてビットコイン取引を銀行が扱うことを禁じ、市場暴落のきっかけをつくった。しかし、人民銀と先週面会した複数の取引所幹部は、中銀が新たな取り締まりを示唆したわけではないと話し、会談したことを大げさにはしていない。
三大取引所の一つ、BTCチャイナのボビー・リー最高経営責任者(CEO)はフィナンシャル・タイムズ紙に対し「中銀とはここ2、3年定期的に会談している」と話した。「彼らの狙いは『中銀は相場を掌握している。ひっかき回すな』と改めて世界にクギを刺すことだろう。それは彼らだけができることだから」
中国メディアの財新によると、人民銀は他の取引所のHuobiとOKコインとの会談で、顧客への販促資料で人民元の下落に触れないよう指示した。財新はまた、国家外貨管理局が最近、国内のビットコイン取引所の事業戦略について「調査した」と報じている。HuobiとOKコインはコメントしていない。
ビットコインのベテラン投資家は、現行の規制下では多額の資金を仮想通貨で動かすのは難しいという。上海のベンチャーキャピタル、ユニシェアーズの易理華氏は「数十万元なら問題ないが、動かせる金額には上限がある。国内のウェブサイトは全て規制されているので、もし金額が大きすぎれば目を付けられる」と述べた。
By Gabriel Wildau
(2017年1月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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