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3時間睡眠!?知られざる「人気声優の日常」とは!?諏訪部順一インタビュー
週刊ジョージア 2016年7月6日 14時00分 配信
PROFILE
職業/声優氏名/諏訪部順一(44歳)
職歴/21年
東京都在住
3時間睡眠!?人気声優の日常とは
「『声優』というカテゴリーで呼んで頂きましたが、自分は一般的な同業者とは出自がちょっと異なりまして。この職業の面白さは実際に取り組みながら知っていった感じです。とはいえ今日では、生涯を通じて取り組んでいきたい仕事だと思っています」心地よい低音ボイスで語るのは、今回の働キングである諏訪部順一さん。
長年に渡って人気キャラクターの声を担当し、現在も数多くのレギュラー作品に出演するトップクラスの声優だ。
7月クールは、日本台湾合作の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』(TOKYO MXほか)、『食戟のソーマ 弐ノ皿』(毎日放送ほか)など計9作品に出演予定。今後放送予定の作品の収録も既に数多く行っているという。
ほかに、ゲームの音声収録、キャラクターソングなどのレコーディング、出演作関連をはじめとするイベントへの出演もこなし、さらにラジオやナレーション、自身企画のバラエティ番組などのレギュラーも抱えるという多忙ぶり。
「布団で寝るのは…3時間くらいです。ワーカホリックの自覚はありますね。泳いでいないと死んじゃうマグロみたいな人間です。敏感ですが(笑)」
作品によっては、台本とともにリハーサル用の映像DVDが事前に声優たちに手渡される。アフレコ当日、円滑に収録を行うためだ。
こういった宿題のような作業も、日常的に行わなければならない。
「ハードの進化で大量のセリフが扱えるようになった“ゲームの台本”の量はエグいですね。電話帳何冊分もあるような紙の束がどっさり届きます。チェックが終わる前にペンのインクが尽きることも」
ほぼ休みがない日々が続く諏訪部さんだが、もともとは声優志望ではなかったという。声の仕事をはじめた当初はナレーションやラジオが主戦場だった。
本人の言葉を借りれば「異業種参入」。
「近頃は『ナレーション“も”』と言われるのですが、元々はそちらが本業的な感じで(笑)。顔出しの俳優さんや芸人さんがアニメに出演されることありますよね。声優に踏み込んだ当初の自分はそういう異業種参入っぽい立ち位置だったような」
その状況からいかにして道を切り開き、声優として活躍するようになったのか?
難関を突破し、事務所に所属!
小・中学校時代は放送委員を務め、高校・大学では映画やドラマなど映像制作の仕事に就くことを夢に描いて、自主制作映画に取り組んでいた。「しかし、映像制作で食っていくのは難しいと日和って、音楽や映像ソフトを扱う卸業の会社に新卒就職しました。メーカーではなく問屋を選んだのは、全メーカーのソフトを扱えるからです。企画営業の部署で徒手空拳ながら懸命に働き、パッケージソフト業界の仕組みを学べました。この経験は現在の仕事にも生きています」
サラリーマン生活をしながらも、自主制作映画は続けていた。しかし、上手な役者を集められるほどの予算も人脈もない。
「演技の勉強をすることで、多少なりとも自分の中に役者の視点が持てれば、演出の足しになることがあるのではないかと考え、カルチャーセンターに通うような感覚で事務所の養成所に入りました」
映画の演技であれば、体を使った演技を主とする劇団などで学ぶ方が良いと思うのだが…
「正直な話をすると“消去法”です。役者になりたかったわけではないですし、会社勤めを続けながら通えることが前提だったので。それと費用。諸条件を満たしたところを選びました(笑)。洋画の吹替に興味があったことも理由ではありますが」
だからといって、授業で手を抜いていたわけではない。
「周りの人たちにも先生にも失礼ですから、“やるからには”と全力で取り組みました。負けず嫌いの性分もあって」
1年間の養成期間を経て事務所に所属となった同期は計2名。
この時の競争率は約100倍だったそうだが、当然ながら“該当者なし”の期もある非常に狭き門なのだ。
「いくつかの審査を経て最終審査まで残ったのは7人。その時点での自分の評価は最下位だったと、あとでマネージャーから聞きました」
そこからどのようにして大逆転を果たすことができたのだろうか?
「業界のトレンドや売れている人のテイストを調べ、この事務所が求めている人材像を分析しました。その要素を盛り込んでパフォーマンスをした最終審査の自由課題が的中したようです」
所属後すぐにラジオのレギュラーが決まり、会社勤めとの二足の草鞋で声の仕事を続けたが、半年ほどでバランスが崩れてしまった。
「当初は(声の仕事を)認めてくれていた会社から、他の社員の手前もあるのでと、どちらを取るか選択を迫られました。結果、声の仕事を選んだわけですが、そちらだけではまだ十分な収入が得られていなかったので親は猛反対。そこで、3年以内に同世代サラリーマンの収入を越えられなかったら辞めると確約しました」順調な仕事の裏で感じていたのは…
順調に仕事は増えていき、3年を待たず約束をクリア。ゴールデンタイムのバラエティをはじめ、レギュラー番組を多数抱える“売れっ子ナレーター”として業界で知られるようになった。
「収入は安定しましたが、仕事だけの毎日が続くようになりました。気づけば、より多くの仕事をし、より多く稼ぐことだけがアイデンティティーの支えに」
スタジオで顔を合わせるのは、演出や録音に携わる僅かなスタッフだけ。
ナレーターは基本的にあまり多くの人と会わない仕事だ。
「どれだけたくさん自分の声が世の中に流れても、ナレーションの感想のお手紙が届くようなことはありませんでした。当時はネットも今ほど普及していませんでしたし。『深い穴に石を落とし続けるが、底に到達した音は聞こえず…』、いつしかそんな鬱々とした心持ちになっていたんです」
当時こなしていたナレーションの仕事は、多いときで月に90本以上。深夜から収録がはじまる現場も多く、生活はどんどん不規則になっていった。
気づけば友人たちと飲みに行くような“息抜きの時間”も全く無くなっていた。
「もともと話し好きな人間なもので。家とスタジオの往復だけが数年続き、満たせないコミュニケーション欲がボディブローのように精神に効いてきました」
そんな思いを強く感じるようになったころ、声優の仕事がコンスタントに入るようになってきた。
「ナレーターは基本的に一人仕事ですが、アニメなどの現場は同じポジションで関わる多くの同業者と一緒に収録を行います。同世代も多く、フランクにさまざまな話しができる機会が増えたんです」
人間関係も広がり、アニメ作品関連のイベントに出演することで視聴者と直接触れ合う機会も得た。
「自分が関わって世に出た作品を、しっかりと受け取って楽しんでくださっている方々がいる。イベントは、そんな方々を身近に感じられる、自分にとって革命的な体験でした。この仕事の意義を心に深く刻みこまれた気がしました」
声優・諏訪部順一の誕生
こうして、声の仕事に新たな意義を感じた諏訪部さんは、2001年から2005年にかけ放送されたアニメ『テニスの王子様』で、ライバルキャラ跡部景吾を、ゲーム『ファイナルファンタジーX』で敵役シーモア・グアドを演じたことで、一気に声優として認知される。
近年ヒットチャートを賑わすアニメ発のキャラクターソング。実はその先駆者と言えるのが『テニスの王子様』。
諏訪部さんは跡部景吾単独名義でシングル10枚、アルバム3枚をリリースし、2005年時点でオリコン週間ランキングTOP10入りも果たしている。
「特に女性の漫画アニメファンの方に多大な影響を与えた作品で、跡部景吾は現在も高い人気を誇っています。でも当時から『キャラ人気はキャラのもの』と客観視していました」
とはいえ、キャラクター人気を当て込んだラジオやイベント、取材など、仕事のオファーが次々舞い込むようになった。
「求められているのはあくまでキャラクター。当時はその空気も強く感じていたので、雰囲気を寄せたり、自分のパーソナルを出さないよう意識してやっていました。しかし“俺様系”のはしりのようなキャラなので人間性を誤解されることも多々(笑)」
役のイメージで見られてしまうというのは、一気にブレイクした場合に起こりがちなこと。
しかし、そのブレイクがあったからこそ、サラリーマン時代には想像もしていなかった多くの貴重な経験を積むことができた。
「武道館やアリーナクラスのステージに立って何万人ものお客様の前でライブを行ったり、国内外さまざまな地域に赴いてイベントを行ったり。どれも本当に得難い経験です」
現在は、自身が発信する企画のTVやラジオ番組、音楽の制作まで行っているという諏訪部さん。
クリエイティブ志向の気質。
会社員時代に学んだ音楽映像流通の知識。
そして、磨き続ける声の技術。
これまで歩んだ道のすべてが、諏訪部さんの仕事を支えている。
さまざまなスキルが求められるようになった声優業
「声優の仕事は、思っていた以上に奥深いものでした。やればやるほど難しさを知り、迷いも多くなりました。しかし、だからこその楽しさも。生涯現役が目標です」当初から目指していた道ではないが、プロとして現場に立ち続けるなか思いは熱くなり、仕事への誇りも生まれた。
「『こういう感じハマリ役だよね』と言って頂ける決め球をより磨いていきたいですし、『こういうのもできたんだ』と驚かれるような変化球もたくさん放りたい。そのために日々努力です」
しかし、壁にぶつかることも多いという。「演技や声の評価は、極めて曖昧な個人の好みが物差し。気分で決まるものです。キャラクターとのマッチングの良し悪しも、個々人が抱くイメージが基準。ですから辛辣な批判をされる事も少なからずあります。それに作品には必ず最終回が。一生就活の仕事です」
順風満帆に見えたナレーター生活にも後悔がある。
「かつては数多くお仕事をさせて頂いていましたが、ナレーターとしてのブランディングには正直失敗しました。そういう意識を持ってマネージメントされていなかったこともあり。声優としての活動が主戦場となってきてからは、同じ轍(てつ)を踏まないよう、全て自分の手で組み立てながらやってきました」
諏訪部さんは、「セルフプロデュース能力も声優にとって必要なスキルだ」と感じるようになった。
「声優の活動の場が多岐に渡るようになったからこそ、『見せ方』『見られ方』を常に意識しなければいけなくなった気が」
声優が人前に出てパフォーマンスをすることは、もはや当たり前の時代になっている。
「ダンサーさんたちをバックに、3万人の前で歌い踊る日が来るとは思いもしませんでした。毎度とてつもない重圧です(笑)」
諏訪部さんがそう話すのは、ことし1月にさいたまスーパーアリーナで開催された、大人気アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪』の5thライブのこと。
音楽業界含め、“いま最もチケットが取れない公演のひとつ”と言われている。
「普通にちゃんとした音楽ライブです。リハは通常営業の合間に無理繰り。超タフです」
かつては裏方の仕事と言われていた声優だが、その高い集客力はエンタテインメント業界でも認知され、今や活動のフィールドはアフレコだけに留まらない。
みんなが笑顔になれるものを形にしていく
声優という仕事を通して得たものを尋ねると、諏訪部さんは「他者の思いを想像する力」と答えた。「サラリーマン時代も会社内や取引先の方とのコミュニケーションはありましたが、現在は、行ったことがない場所、会ったことがない方へも、さまざまな経路を通じて自分の声や思いが届いています。たとえば御感想のお手紙を頂く…キャッチボール成立です。世界の広がり、人と人とのつながりをより実感し、強く意識するようになり、内面的に、特に仕事観には大きな変化がありました」
仕事との向き合い方はどのように変化したのか。「若いころは自己実現のためだけに仕事をしていましたが、今は自分だけでなく、関わる人たちみんなが少しでも笑顔になれるにはどうすべきかを第一に考えて動くようになりました」
「感謝」を何度も口にする諏訪部さん。
彼が現在、常に思っているのは「仕事を通じて恩返しがしたい」ということだ。
「他人の気持ちになるのがこの仕事。相手目線で考えると自然と寛容にもなれます。応援してくださる方々の温かい心に報いることができる仕事をしていきたいですね」
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■諏訪部順一
1972年3月29日生まれ。主なアニメ出演作は『僕のヒーローアカデミア』相澤消太役、『黒子のバスケ』青峰大輝役、『弱虫ペダル』寒咲通司役、『スペース☆ダンディ』ダンディ役、他多数。2012年第6回声優アワードで歌唱賞、2013年第7回声優アワードで助演男優賞を受賞。Twitter @MY_MURMUR
取材/渡邉裕美(IGNITION) 撮影/榊智朗 ヘアメイク/松井祥子(addmix B.G)
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