【ワシントン=川合智之】米大統領選へのサイバー攻撃にロシアが関与したとされる問題で、ロシアがトランプ次期米大統領の「不名誉な個人的、財務的情報」を入手した疑いがあることがわかった。米情報機関がトランプ氏やオバマ大統領に直接報告した。情報が正しいかどうかは不明だが、トランプ氏に説明を求める声が強まりそうだ。複数の米メディアが10日報じた。
クラッパー国家情報長官ら米情報機関トップ4人は6日、トランプ氏との会談で、サイバー攻撃にロシアが関与したと分析する報告書とともに、トランプ氏の情報入手疑惑に関する2ページの添付文書を提出した。国家情報長官室は報告書から添付文書や機密情報を除いた25ページ分だけを6日公表した。
添付文書のもとになったのは、英情報機関の秘密情報部(MI6)元工作員による35ページのメモ。メモを入手したCNNは「独自の確認が取れていない」として内容を報じなかったが、CNNの報道後、ネットメディアの米バズフィード・ニュースがメモを全文公開した。
メモによると、ロシアは西側同盟国の分断のため、5年以上にわたりトランプ氏を支援。ロシア関係者が複数のトランプ陣営幹部と接触を続けてきたほか、トランプ氏がロシア滞在時に贈賄や女性問題に関与したとの情報が書かれているが、真偽は不明だ。CNNによると、元工作員には共和党や民主党の反トランプ派が調査資金を提供した。
米連邦捜査局(FBI)は昨年8月にこの情報を入手し、現在も情報の信頼性を調べているが、多くはまだ確認が取れていないという。メモが正しければ、ロシアがトランプ氏とヒラリー・クリントン前国務長官の双方の情報を集めていながら、クリントン氏に不利な情報だけを公開していたことになる。
トランプ氏は10日、ツイッターで「偽ニュースだ。まったくの政治的な魔女狩りだ!」と反論した。プラハでロシア関係者と密会したと名指しされたトランプ陣営幹部も「プラハに行ったことはない」と投稿した。メモには他にも誤りが指摘されており、真偽確認がとれない情報を報じたメディアへの批判も出ている。
一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は11日、トランプ氏やクリントン氏の個人情報を同国が収集していたとされる疑惑について「両国関係を悪化させようとのたくらみであり、ばかげている」と一蹴した。ロイター通信が報じた。
トランプ氏は11日、ニューヨークで当選後初めての記者会見を開く。トランプ氏は報道を否定するとみられるが、米ロ関係の修復を図る方針には共和党内にも疑問視する声がある。改めてトランプ氏の公約の是非が問われることになりそうだ。