ただひたすらに、わたしが感じた今世紀最大の興奮を伝えて、一人でも多くの人にこの映画の素晴らしさと、自転車レースの醍醐味が伝わればいいなと思って書きます。
自転車レースファンだけでなく、むしろ自転車レースを知らない映画ファンにこそ、この映画の素晴らしさを伝えたいです。
その映画とは本格的なプロロードレースを描いた『疾風スプリンター』です。わたしの中では人生でベスト3に入る名作になりました。
本作品では、あくまで自転車レースを生業とする"プロロードレーサー"の姿・生き様に焦点をあてています。
監督は「激戦 ハート・オブ・ファイト」などの香港のダンテ・ラムです。香港映画界では、アクション映画に定評がある監督です。
その定評通り、本作では自転車のレースシーン、アクションシーンの迫力が段違いです。
予告編動画からも、レースの迫力は十分に伝わるかと思います。
主人公のチウ・ミンを演じる、エディ・ポン。
主人公のライバルであるチョン・ジウォンを演じる、スーパージュニアのチェ・シウォン。
もう一人の主人公とも言えるチウ・ティエンを演じる、ショーン・ドウ。
ヒロイン役を演じる、ワン・ルオダン。
こういった実績ある俳優・女優さんたちが、真剣に自転車のトレーニングを積んで、全編スタントなしで撮影に臨んでいるのです。
監督の並々ならぬリアリティへの追求が、史上最高の自転車映画の誕生に繋がったと言えましょう!
サイクルロードレースファンが見ても、スタントなしとは思えない迫力とリアリティ
公式サイトのキャストのページでは、監督がスタントなしで撮影したことについて、こう述べています。
どの俳優もアクシデントを経験した。エディ・ポンは尻全体を負傷。ショーン・ドウはひざ、チェ・シウォンの腕も傷だらけだ。
長年アクション映画を撮ってきたが、今回ほど大勢の負傷者が出たことはない。撮影全体での負傷者数は80人。そのうち骨折が5~6人。本当に危険すぎて、こうしたリスクはどんなに安全策を講じても避けられない。
実際の自転車レース自体が、常にそうした事故と隣り合わせだからね。
上映終了後にメイキング映像が流れるのですが、ほとんど出演者のクラッシュシーンと治療シーンばかりです。演出でも何でもなく、真のサイクルロードレースを撮影する以上、必然的に落車・クラッシュは避けられなかったのでしょう。
そりゃ、出演者の方々の安全性を確保することが最も大事だとは思いますが、こうした犠牲の上に成り立っている映画と思うと、わたしはあえて美談として称賛したいと思います。監督のサイクルロードレースへの情熱は本物だからです。
チェ・シウォンは、超売れっ子アイドルにもかかわらず、傷だらけになりながら身体を張った演技を貫き通す姿には、畏敬の念を抱かざるを得ません。
サイクルロードレースのあらゆる要素が詰まっている
予告編動画だけでも、
・ビンディングペダル
・トラック競技
・心拍数や出力ワット数
・エースとアシストの概念
・エシェロン
・ヒルクライム
・ダウンヒル
・アタックと逃げ
・ローラー台でのアップ
・チームとしてどこでアタックするのか作戦会議
・落車
・激しい身体のぶつかり合い(ちょっとやりすぎですが…)
・八百長
・低酸素トレーニング
・集団スプリント
と言った、ロードレースならでは要素が満載です。
ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、ハッキリ言って本作に含まれていない要素を探す方が難しいくらい、ありとあらゆるサイクルロードレースの概念が詰まりに詰まっています。光の部分だけでなく、闇の部分にもしっかりとフォーカスしています。
作中では、これらの要素が何一つ分からなくても、話が理解できるように簡潔に丁寧に補足されています。というより、映像で体感的に理解しつつ、サイクルロードレースの魅力や駆け引きの面白さが伝わる仕組みになっているのです。
ここが最も凄いところです。なおかつ、2時間の映画でスッキリとまとめてくる構成もまた素晴らしいです。わたしが丁寧に説明しようとしたら、とても2時間では不可能で、10時間くらい欲しいところです。
分かりやすく、サイクルロードレースの魅力と醍醐味が凝縮された映画なのです。
実在のサイクルロードレース選手が出演、恋愛要素もあり
2013年に世界チャンピオンとなった、当時ランプレ・メリダ所屬のルイ・コスタ選手が出演しています。
他にもあの選手やあの選手も。サイクルロードレースファンなら、思わずニヤリとしてしまうこと請け合いです。
ヒロインを巡るラブストーリーも本筋と並行して展開していきます。サイクルロードレースの映画なのに恋愛要素はいらないだろう、と思っていましたが、これが絶妙な味を生み出しています。
むしろ本作には必要な要素となっています。
このように『疾風スプリンター』には一切の無駄がなく、とことん細部までこだわり尽くした一作になっています。サイクルロードレースファンのみならず、全ての映画ファンに見て欲しいです。
ゆえに、わたしは人生でベスト3に入る名作であると言いました。
ただ単に自転車好きが見て面白い映画、というだけではここまで称賛しません。
一人でも多くの人に、本作を視聴して欲しいなという想いを込めて、本エントリーを書きました。
1月下旬までの公開だそうで、お早めに劇場で鑑賞してください!(※一部の劇場では2月から公開)
全国の劇場で公開しているので、劇場情報をチェックしてみてください。