詳しい事故原因も分からないまま、日本政府は米軍オスプレイの空中給油訓練の再開を受け入れた。その姿勢に、強い疑問を禁じえない。

 昨年12月13日夜、沖縄県名護市沿岸で米軍輸送機オスプレイが大破した事故。米軍は、空中給油の訓練中、給油ホースにオスプレイのプロペラが接触して損傷したとしている。

 米軍は機体の構造に問題はなかったと説明しているが、ならばなぜホースとプロペラが接触したのか、事故原因を特定する調査結果は出ていない。

 それなのに、米軍は事故のわずか6日後に飛行を再開した。1カ月もたたない今月6日には空中給油の訓練に踏み切り、日本政府もこれを認めた。

 残念なのは、性急な再開に反対する県民の訴えには耳を貸さず、米軍の要求を優先する日本政府の対応である。

 通常国会が20日に開会する予定だ。与野党はこの国会を、事故が示した論点を徹底的に論じ合う場としてもらいたい。

 航続距離を飛躍的に延ばす空中給油は、搭乗員の熟練を要する高度な作業である。

 米軍の防衛省への説明によると、(1)搭乗員間の意思疎通など人的要因(2)乱気流や降雨などの環境要因(3)夜間の空中給油の複雑さ――が重なり、事故を引き起こした可能性があるという。

 だとすれば、搭乗員の能力や気象条件しだいで、今後も同じような事故は起こりうるということではないのか。

 構造上の問題についても、空中給油機から出したホースと機体先端の管の連結が大きなプロペラと近い位置になるため、ホースが巻き込まれやすいと指摘する専門家もいる。

 そもそも日米地位協定のもとで日本の機関は事故原因の解明にかかわれない。米軍の説明を聞くばかりで、日本政府として住民の安全に責任が持てるのか。国民への情報提供のあり方も含め見直す必要がある。

 米軍は「今後も空中給油訓練は陸地の上空では実施しない」というが、こうした運用ルールをどう明確化していくか。住民の声を十分に米軍に伝える仕組みも整えねばならない。

 オスプレイは米軍岩国基地(山口県)にも飛来し、近く陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県)での定期整備も始まる。米軍横田基地(東京都)への配備や、自衛隊機の佐賀空港への配備計画も進んでいる。

 沖縄だけの問題ではない。政府と米軍に任せてもおけない。課題にどう向き合うか、国会の役割が問われている。