NHKがクローズアップ現代で放送していた非常用DGの点検先送りについては、放送内容にいくつかの事実誤認がある。まず、発端は平成22年12月に12気筒のうち1気筒のシリンダーライナに割れが発生し、12気筒全てのシリンダーライナを交換している(この間6か月)。非常用ディーゼルの点検周期は16か月で、ちょうど16か月目がB号機とA号機の点検期間と重なっていて、保安規定上2台同時に点検できないため、C号機の点検ができなくなっていたのだ。この時は、点検期間延長申請を行うか、B号機の前に点検を済ませて置く等の保全計画があれば回避できた。この件は、C号機の簡易点検が問題にはなったが、保安規定違反にはされていない。

 また、2015年の7月に非常用ディーゼル発電機のメンタナンス中にシリンダーヘッドを誤って落下させ、シリンダーヘッドに取り付けられた小型の弁(インジケータコック)と潤滑油配管が変形した。これは、法令報告事例で、速やかに、規制庁に届けられた。この件は、点検作業を行っていた業者に対する調達管理について、保安検査で保安規定違反の判定を受け、業者の現場作業に関する品質保証計画書を提出させていたものの、業者の全社的な品質保証計画を提出させていなかったこと、業者の選定に係る基準を定めている「競争参加者資格審査要領」が、「もんじゅ」の保安規定に基づく文書として管理されていなかったことなどにより、品質保証による判定で保安規定違反とされた。「本事象はディーゼル発電機1 台の故障であるが、別の2 台のディーゼル発電機が動作可能であり、直ちに安全上の問題はない。」と原子力規制庁の文書に明記されているが、再発防止策が重要なのは言うまでもない。
福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」
福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」
 さて、多数の未点検設備の保安規定違反は、どうかというと、規制庁時に、点検期間の変更を届出ておらず、ここからがボタンの掛け違いとなっている。それまで軽水炉に要求していた保全プログラムの導入を、規制側(当時は保安院)がもんじゅにも適用することとした。もんじゅは準備期間もなく導入したことから、保全プログラムを使って保守しながら保全プログラム(特に点検計画)を改善しようとしたところ、改善しながら直すということが許されなかった。規制側は保全計画を厳しく遵守することを求め、それができない場合は、保安規定違反とされたのだ。

 とくに保安規定違反の根拠がひどいと感じたのは、配管点検である。6万個もの支持構造物があり、全てが外観検査の対象になっており、その多くの目視点検が、保安規定違反にされている。配管の外観点検は、「配管を保温材が施された状態で、視認できる範囲を確認した」というやり方で実施したのであるが、特にナトリウム配管はナトリウム漏えい検出器で常時監視していることから、保温材に凹み等がなければ健全であることを確認できる考え方である。