奈良林直(北海道大学大学院特任教授)
9月21日、政府は閣僚会議を開催し、プルトニウムを利用する新たな高速炉開発の計画を年内にまとめる方針を確認した。会議には菅義偉官房長官、松野博一文部科学相、世耕弘成経済産業相らが出席。菅官房長官は「もんじゅについても本年中に廃炉を含めて抜本的見直しを行う」と語った。今後、地元の意向を踏まえながら扱いを最終的に決める方針。同日夜には、松野文科相が福井県で西川一誠知事と面会した。「約1兆円の国費を投じながら20年以上ほとんど運転していない実態を重くみており、もんじゅは事実上、廃炉に向かうことになる」等の報道があるが、「ちょっと待った」と言いたい。

原子力関係閣僚会議であいさつする菅官房長官(左から2人目)=9月21日、首相官邸
今回の問題は、もんじゅの運転保守をしている検査について、昨年11月に規制庁から厳しい勧告が出たものであるが、これは人的なマネージメントの問題点を指摘しているのであって、高速増殖原型炉「もんじゅ」の設備とは切り離して考えるべきである。「保守点検が満足にできないから、国家プロジェクトで建設されたもんじゅを廃炉にしろ」というのは、論理的に飛躍している。「方広寺大仏の鐘の銘文「国家安康」の字句が,家康の名を分割しているので、徳川氏を呪詛し「君臣豊楽」の文字が豊臣家の繁栄を祈願している」と難癖をつけて、最後は大阪城を大砲で砲撃し、豊臣家を滅亡に追いやった論理と全く同じである。
松野文科相は「説明不足があった。これからは福井県や敦賀市のみなさんに説明、調整させて頂きたい」と述べたが、地元の福井県の西川知事は「政府の無責任極まりない対応であり、誠に遺憾だ」と批判したとのことであり、我が国で唯一、西川知事が正論で主張されている。経産省は、もんじゅに代わる炉として、燃料を増やせない高速炉で、フランスで計画中の「ASTRID(アストリッド)」への協力を通じ、日仏共同研究を軸にした計画をつくろうとしている。
今後、この方針に沿った技術開発計画が続く見込み。もんじゅと同じ、冷却材にナトリウムを使う原子力機構の実験炉「常陽」(茨城県)の活用も検討するとしているが、フランスの原子炉はタンク型炉といって、大きなナトリウムのタンクに原子炉の炉心や熱交換器、ナトリウムのポンプなどを吊り下ろしている構造で、耐震に弱く、日本では建設できない。国際協力は、単にお金を出せばよいといった安易な協力では、立場が弱くなり、我が国から実験結果などの十分な成果を提示しなけれれば、軽くあしらわれるだけである。「常陽」にもどってしまうと我が国の高速炉開発は、1978年まで戻ってしまう。
今後、この方針に沿った技術開発計画が続く見込み。もんじゅと同じ、冷却材にナトリウムを使う原子力機構の実験炉「常陽」(茨城県)の活用も検討するとしているが、フランスの原子炉はタンク型炉といって、大きなナトリウムのタンクに原子炉の炉心や熱交換器、ナトリウムのポンプなどを吊り下ろしている構造で、耐震に弱く、日本では建設できない。国際協力は、単にお金を出せばよいといった安易な協力では、立場が弱くなり、我が国から実験結果などの十分な成果を提示しなけれれば、軽くあしらわれるだけである。「常陽」にもどってしまうと我が国の高速炉開発は、1978年まで戻ってしまう。
規制庁はもんじゅの運営に対してレッドカードの勧告を突きつけたが、これは組織としてしっかりした組織にするようにということで、もんじゅを廃炉にしろとは一言も言っていない。西川一誠知事は「規制委員会のこれまでの助言も親切さが欠けている。運営体制は、JAEAと文科省、規制委の3者が当事者として責任を持つべきだ」と述べられており、地元企業からも、「規制委の対応を「規制委がJAEAの言い分に耳を傾けず、強い権限を背景に一方的に“判決”を言い渡した」と「弁護士不在の裁判」の実態を批判している。
私は、昨年12月12日に第三者としての客観的な立場で、それが本当なのか、自分の目で確認に行って、記事にまとめた。12月12日は土曜日であったが、敦賀に行って、朝から、もんじゅを見学した。格納容器内や開放点検中のAループのセル内にも運良く入れた。ご案内いただいたのは20年前のナトリウム漏えい事故を対応された方で、このようなプラント全体を熟知された方は、もう極くわずかとのこと。