病気で子宮がない女性に第三者の子宮を移植する臨床研究を、慶応大のチームが今年中にも学内の倫理委員会に申請する検討をしていることが9日、関係者への取材で分かった。生命維持のために心臓などの臓器を移植する手術とは異なり、子宮移植は出産が目的。国内で実施されれば初のケースになるが、提供者にかかる負担などを考慮し、慎重な意見もある。
計画は、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性が対象。母親などの親族から子宮の提供を受け、3年間で5人程度での移植を目指す。
チームは日本産科婦人科学会や日本移植学会にも計画を提出し、倫理面や安全面で問題がないかなど意見を求める。
ただ健康な提供者にリスクを伴う子宮摘出手術を受けてもらうという倫理的問題があるのに加え、安全な妊娠が成立するか、赤ちゃんにどのような影響があるか不明な点も多く、申請が出されたとしても、承認までには曲折が予想される。
慶応大などのチームは2013年に、一度摘出した子宮を再移植したサルが出産に成功したと発表。14年には「子宮提供者の自発的な意思決定や安全を確保する」などとした指針を策定するなど、実施に向けた準備を進めていた。
子宮移植を巡り、海外では数は少ないもののサウジアラビア、トルコ、スウェーデンで行われ、出産した例もある。日本では臓器移植法に基づく脳死移植の対象外。子宮がない女性が子を持つ方法としては代理出産もあるが、倫理的問題から国内の学会が認めていない。〔共同〕