TBSで「下剋上受験」というドラマがスタートします。
この「下剋上受験」という物語が実話であることをご存知の方は多いと思います。私は、当ブログで教育ネタを書かせていただいていることや、タイトルのインパクトにも釣られ、ドラマの原書となる書籍を買い、読ませて頂きました。
本日は、この「下剋上受験」というテーマをドラマとは別視点から読み解いてみたいと思います。
書籍"下剋上受験"に欠けている視点
「下剋上受験」の内容は、書籍の副題に凝縮されています。
著者の桜井信一さんと妻の香夏子さんは、ともに「中卒」という学歴のご夫婦です。そのご夫婦の間に生まれた佳織さんが中学校最難関と言われる桜蔭学園中学校の合格を目指し、努力していくドキュメンタリーとなっています。
書籍の中身については、ネタバレになってしまうのもアレなので、できるだけ最小限の情報に留めたいと思います。
さて、この本を読んで、私の頭に浮かんだこと。それは、
下剋上受験って一体どれほどお金が掛かるの?
ということです。「別の視点って、お金かよ!」と突っ込まれてしまいそうですが、最近、教育資金シミュレーションをしたばかりなので、どうしてもそんな疑問を持ってしまいました。
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【リアルでガチなシミュレーション】子どもの教育資金は、いくら必要なのか!?
書籍「下剋上受験」の中身は、中卒のお父さんが娘と一緒に塾に通わず最難関中学校の受験を目指していく"受験体験記"になっているため、私が疑問に持つような教育費(お金)という視点は、ほぼ皆無です。
また、書籍の中で桜井夫婦の職歴については、次のように紹介されています。
こうした学歴と職歴を拝見する限り、失礼ながら中卒という学歴を重ね合わせると、決して高所得な世代ではないように思われます。
さらに、上のような教育資金シミュレーション結果を目の当たりにした身からすると、大変失礼ながら「中卒の夫婦で、よく教育費を賄えるなぁ。」という感想を持ってしまったのが正直なところなのです。
そんな大変失礼な感想を持ってしまったからには、せめて下剋上受験に必要な教育費を算出し、今後下剋上受験を検討される方々の参考になるシミュレーションをお届けできればと思います。
それでは、ここから下剋上受験に必要な教育資金を算出していくことにします。
下剋上受験するために必要な年収
下剋上受験をするということは、少なくとも中学校時代の3年間と高等学校の3年間の計6年間は、"私立"で過ごしていくということになります。
また、下剋上受験をした桜井佳織さんは現在高校生になっている年齢のようですが、東京大学を志望し、勉学に励んでいる様子が読み取れます。
とはいえ、これまた日本最高学府の東京大学ですので、そう簡単に合格できるわけではありません。どれだけ桜井佳織さんが優秀な生徒であっても、受験に失敗し、滑り止めの私立大学に行く可能性は否定できないわけです。(浪人するということも考えられますが、いずれにせよお金がかなり掛かることに間違いありません。)
桜井さんは書籍の中で
MARCH(明治・青学・立教・中央・法政)レベルでは割に合わない
と表現されてますが、早慶上理レベルであれば東京大学を落ちた際の進学先として許可する可能性があるのではと思います。
こうした考えのもと、子供を下剋上受験させる上で必要な教育資金を次のように定義します。
研究に熱心になれば、当然大学院への進学という選択肢も出てくるわけですが、ここでは大学進学までの学費としておきます。
シミュレーション準備
ここで下剋上受験に必要な年収をシミュレーションするために、『おさいふプラス』のジンさんがお勧めするライフプランシミュレーション | スルガ銀行を利用してみることにします。
家族構成
まず、家族の入力情報をします。
まず桜井家の予想情報を入力しました。世帯主および配偶者の年収は、学歴別の年収・収入格差データ|年収ガイドを参考に、中卒における45~49歳時点の平均年収を勝手に予想値として使用させていただきました。また、年収上昇率は1%としていきます。
子どもの教育情報
子どもの教育情報は、下剋上に必要な教育資金で述べたように「中学校から高等学校・大学まで私立で進学していく」というプランとします。特に、大学は学費の高い理系を想定しておくこととします。
また、このシミュレーションサイトでは、結婚援助資金の入力もできますが、今回は教育資金に着目したシミュレーションをしたいため、入力しません。
住宅情報
住宅情報は、非常に難しい情報です。桜井家が持ち家か、賃貸かは全く分かりません。ただ唯一分かる情報としては、受験先の桜蔭学園中・高がある場所は東京都文京区であり、該当学校のHPを見ると、
生徒の健康、学習への影響等を考慮し、1 時間程度が望ましい
とされていることから、東京都でもかなりの都心部に両親と暮らしていることが必要であることが分かります。
実際に、住宅サイトで東京都文京区にあるアパート・マンション等を調べてみると、家族3人が住める2LDK程度で広さ(50㎡程度)がある賃貸住宅では、最低でも月々12万円の家賃を支払う必要があることが分かります。ただし、月12万円出しても住めるアパート等の築年数は30年以上になっています。東京都心部は住宅費用が本当に高額ですね。
その他ライフイベント情報
その他のライフイベントとして、主に次の項目を入力します。
- 自動車購入費
- 家具・家電購入費
- 旅行費
などです。
桜井家のライフスタイルは全く未知の情報ですが、書籍を出版されるほどお受験に力を入れている訳ですから、これらの項目は節約されているかもしれません。それでも、家具・家電は壊れることもありますし、旅行はなくとも帰省程度でお金が掛かることはあるかもしれません。
一般的な家庭では、これらの項目に年間60万円程度出費をしていると言われていますが、ここでは下剋上受験のために節約し、ライフイベント費を年間15万円としたいと思います。
貯蓄運用情報
こちらの金額は後ほど色々と変化させていき、どれくらいの貯蓄が必要かを考察してみたいと思いますが、ひとまず500万円の貯蓄があるとします。
生活費情報
最後に、生活費について入力します。
東京都民の平均生活費は、272,265円であることが家計調査報告 平成27年 平均速報結果の概況から読み取ることができます。
こちらもライフイベント費同様、節約し、生活費を月23万円とします。家族3人で大学に行ってからも家から通学をしていくことを考えると、かなり節約した生活費になります。ちなみに、この中には保険費用は入っていません。
ここまでの支出情報をまとめておきます。
下剋上受験すると、家計はこうなる
以上の情報をもとに、シミュレーション分析を行いました。結果は、次のようになりました。
500万円あった貯金も、世帯年収520万円では子どもが高校に入学すると同時に赤字に突入してしまいます。その後は、年々赤字が進んでしまい、まさに家計破綻状態になっています。
これを見る限り、中卒における平均年収を稼いだとしても下剋上受験の先に待ち受けている未来は、家計破綻であることが読み取れます。
これまでも色々なシミュレーションを当ブログでは、実践してきました。
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こうしたシミュレーションを行ってきた経験からすると、子供の教育費はある意味住宅購入以上の支出に繋がっていく危険があり、ここで出てきたシミュレーション結果も決して厳しい設定のもと行われた結果ではありません。
これが下剋上受験という挑戦の先にある現実なのだと思います。
下剋上受験に挑戦できる家計
現実が見えたところで、「では、どういった家計状態であれば下剋上受験が可能なのか。」について考察してみたいと思います。
ここで行ったシミュレーションでは、桜井夫婦の家計状態を勝手に次のように設定してしまいました。
- 貯金500万円
- 世帯年収520万円
しかし、もしかしたら桜井夫婦はこれまでも節約に励み、貯蓄に励んできたかもしれませんし、年収だって転職を繰り返しながら、かなりの年収にたどり着いているのかもしれません。
そこで、貯金額と年収額を上昇させ、どういった家計状態であれば下剋上受験をし、子供を無事大学卒業へ導くことができのかについて考えてみたいと思います。
下剋上受験を成し遂げる貯金額
まず年収は平均年収(世帯年収520万円)のまま、貯蓄金額を上昇させ、シミュレーションを実行します。
45歳で貯蓄1500万円
こちらが45歳時点で貯金1500万円がある家計状態での下剋上受験のシミュレーションになります。
結果を見てもらうと分かるように、かろうじて貯蓄がマイナスになることはありませんが、この状態では夫婦二人の老後は間違いなく破綻するでしょう。
これを見て正常な家計状態と判断することはできません。ということで、さらに貯蓄額を増やしていきます。
45歳で貯蓄2000万円
こちらが45歳時点で貯蓄2000万円ある下剋上受験のシミュレーションになります。
60歳時点の貯金が500万円前後でしょうか。これだけ貯金があってもかなり厳しい貯蓄状態に陥ってしまっていることが分かりますが、それでもこれまでのシミュレーションを見ていると、かなりマシな結果に見えてきてしまいます。最低限のラインがこの程度の家計状態ではないでしょうか。
「45歳時点で世帯年収520万円あり、貯蓄2000万円が最低ライン」…これを聞いて皆さんはどう思われるでしょうか。
下剋上受験を成し遂げる年収
続いて、貯蓄額は500万円で、45歳時点の年収を上昇させ、シミュレーションを行っていきます。果たして、いくら年収があれば下剋上受験は達成できるのでしょうか。
45歳で世帯年収600万円
45歳で世帯年収600万円では、ご覧の通り家計破綻へと突入していきます。年収600万円では、下剋上受験は不可能であるということが分かります。
それでは、グイッと年収を上昇させて年収700万円でシミュレーションしてみたいと思います。
45歳で世帯年収700万円
年収700万円で、なんとか貯金が底をつくことなく推移しています。貯蓄2000万円のときと同様、これが下剋上受験を達成するための最低限のラインということになりそうです。
「45歳時点で世帯年収700万円あり、貯蓄500万円が最低ライン」…これまたかなり厳しい現実となりました。
"下剋上受験"に立ちはだかる2つの壁…学力とお金
「下剋上受験」とはよく言ったもので、確かに中卒夫婦の間に生まれた子供が私立中学に挑戦するということは、まさに下剋上と表現できるのかもしれません。
いやいや、書籍を読み、本日のシミュレーション結果を見ていただければ、中卒夫婦でなくとも、そう簡単に下剋上受験に挑戦することは困難であることがよく分かりました。
超難関私立中学に挑戦するためには、
- 並々ならぬ子供の学力
- 並々ならぬ親の資金力
という2つの壁を乗り越える必要なのです。
どちらか1つの壁を乗り越えていくだけでも、努力だけではどうにもならない要素が存在します。それを2つも乗り越えていかなければいけないとは…
努力したからといって、成功することはない。
それは、日本の歴史を振り返っても、下剋上に成功した例をみれば良く分かります。学歴社会の日本において、受験という戦争において下剋上を果たすという事は、戦国時代以上に大変なことなのかもしれませんね。