Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]世界経済、今年は伸びるが… 先行きには懸念材料

(1/2ページ)
2017/1/8 2:00
保存
印刷
その他

Financial Times

 今年の世界経済はどうなるか。「成長する」というのが最も妥当な答えだ。昨年の今ごろ筆者が書いたように、世界経済で最も驚くのは、1950年代初頭から毎年成長しているという事実だ。2017年も拡大するのは確実といってよく、16年より成長率が高まるかもしれない。

 経済成長の予測は近代世界ではほぼ間違いなく最も重要なことだ。一貫した成長が見られるのは比較的最近だ。世界経済は1900年から47年にかけ、5年に1度の割合で縮小した。第2次世界大戦以降は様々な政策のおかげで、成長がより安定している。

米技術革新と新興国がけん引

 これは世界が2度の世界大戦と大恐慌のような「大失敗」をせずに済んできたからでもある。米経済学者の故ハイマン・ミンスキー氏が論じたように、各国が金融制度を積極的に活用し、景気後退期には財政赤字になるのもいとわず、また経済規模に見合う以上に政府支出を拡大したためでもあった。

トランプ政権の世界経済への影響はまだ明確ではないが、リスクではある=AP
画像の拡大

トランプ政権の世界経済への影響はまだ明確ではないが、リスクではある=AP

 持続的な経済成長には2つの強い力が働いている。世界経済の最先端を行く国、とりわけ米国での技術革新と、新興国による追い上げだ。この2つは連関している。先端的な国々で革新が進むほど、追い上げの余地が大きくなるからだ。過去40年で最も良い例が中国だ。(誇張されているかもしれないが)公式統計では、中国人1人当たりの国内総生産(GDP)は78年から2015年にかけ、23倍に増えた。もっとも、経済拡大が始まった時点ではあまりにGDPが小さかったため、1人当たりの平均は15年時点でも米国のわずか4分の1で、ポルトガルの半分でしかない。中国はまだ追い上げ余地がある。15年の1人当たりGDPが米国の1割程度でしかなかったインドはさらに伸び代がある。

 購買力平価でみて、今年の世界経済の成長率は3%を上回る可能性が非常に高い。1950年代初頭以降、成長率が3%を下回ることはほとんどなかった。実際、2%に届かなかった年は75年、81年、82年、2009年の4回しかない。最初の3回は中東戦争が引き金となった石油危機と、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めによるディスインフレが要因。4回目は08年の金融危機の結果だ。

インフレなどに潜在リスク

 これは1900年以降の状況とも合致する。つまり、世界経済には3つの不安定要因がありそうだ。大がかりな戦争とインフレ、そして金融危機だ。どれも起こる確率は極めて低いが発生したら影響が甚大な「テールリスク」であり、世界経済の大きな下振れ要因として考えておかなければならない。これらは「既知の未知」(答えはわからないが、問題自体は認識されていること)の領域に入る。

中国政府は金融破綻を防ぐ方策を持ち合わせているように見える=共同
画像の拡大

中国政府は金融破綻を防ぐ方策を持ち合わせているように見える=共同


 アナリストらはここ数年、量的緩和を続ければ必ずハイパーインフレになると信じてきた。それは間違っている。しかし、米国が積極的な財政出動をし、FRBに金融引き締め反対の圧力がかかれば、中期的にはインフレになり、その後ディスインフレに陥るかもしれない。2017年については、トランプ次期政権が積極財政をとっても、そうはならないだろう。

 世界的に重大な影響を及ぼす金融危機については2つのリスクが顕著だ。ユーロ圏の崩壊と中国の危機だ。ただ、どちらもあり得なくはないが、可能性は高くないかもしれない。ユーロ圏維持に向けた意志は依然、かなり強いし、中国政府は金融破綻を防ぐ方策を持ち合わせているだろう。

 地政学的な3つ目のリスクに関しては筆者は昨年、英国が欧州連合(EU)から離脱し、米大統領に「好戦的で無知な人物」が選出される可能性に触れた。どちらも現実になった。後者の影響はまだわからない。

 その他の地政学的リスクも容易に列挙できる。恐らく極右政党・国民戦線のルペン党首のフランス大統領選出や新たな難民流入などにより、EUが政治的に非常に困難な状況になること、失地回復を目指すロシアのプーチン大統領の動き、トランプ政権の下での米国と習近平国家主席が率いる中国との間のあつれき、イランとサウジアラビアの不和、サウジアラビア王家が倒される可能性、イスラム過激派による戦争の脅威――などだ。北朝鮮の威嚇行為や、インドとパキスタンの紛争などを見れば、核戦争のリスクも忘れてはならない。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 次へ
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

トランプ政権の世界経済への影響はまだ明確ではないが、リスクではある=AP

AP

[FT]世界経済、今年は伸びるが… 先行きには懸念材料

 今年の世界経済はどうなるか。「成長する」というのが最も妥当な答えだ。昨年の今ごろ筆者が書いたように、世界経済で最も驚くのは、1950年代初頭から毎年成長しているという事実だ。2017年も拡大するのは…続き (1/8)

中国と韓国の溝は広がっている。岸田外相(中)と握手する韓国の尹炳世外相。右は中国の王毅外相(2016年8月、首相官邸)

[FT]中国の安保・貿易セット戦略は危険(社説)

 中国で活動する外国企業の事業環境は厳しく、ごく普通の、あるいは、気楽な時間を過ごすこともできない。しかし、中国で取引する韓国企業の置かれた状況は突然、一層、困難になった。韓国企業は中国でビジネスを続…続き (1/6)

ウーバーは世界各地で規制の壁に突き当たっている

[FT]台湾、ウーバーへの罰則強化 タクシー登録要求

 台湾当局が米配車アプリ大手のウーバーテクノロジーズに対する締め付けを強め、正規のタクシー会社として登録しなければ最大2500万台湾ドル(約9000万円)の罰金を科すと罰則を強化した。ウーバーが世界各…続き (1/6)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<1/9の予定>
  • 成人の日
  • 16年11月の豪住宅着工許可件数(9:30)
  • 16年11月のユーロ圏失業率(19:00)
  • 16年12月の米労働市場情勢指数(LMCI)
  • 16年11月の米消費者信用残高(10日5:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/10の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 16年12月の消費動向調査(内閣府、14:00)
  • 16年3~11月期決算=ABCマート、ユニファミマ
  • 【海外】
  • 16年12月の中国消費者物価指数(CPI、10:30)
  • 16年12月の中国工業生産者出荷価格指数(PPI、10:30)
  • 16年11月の豪小売売上高(9:30)
  • 16年11月の米卸売在庫(11日0:00)
  • 16年11月の米卸売売上高(11日0:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/11の予定>
  • 30年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 2016年12月と16年の輸入車販売(輸入組合、10:30)
  • 2016年12月と16年の車名別新車販売(自販連、11:00)
  • 2016年12月と16年の通称名別軽自動車販売(全軽協、11:00)
  • 16年11月の景気動向指数速報(内閣府、14:00)
  • 2016年11月の消費活動指数(日銀、14:00)
  • 16年3~11月期決算=ローソン、イオン、吉野家HD
  • マレーシアの16年11月の鉱工業生産指数
  • ポーランド中銀が政策金利を発表
  • ブラジル中銀が政策金利を発表
  • トランプ米次期大統領が会見
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/12の予定>
  • 16年11月の国際収支(財務省、8:50)
  • 16年12月上中旬の貿易統計(財務省、8:50)
  • 16年12月の対外・対内証券売買契約(財務省、8:50)
  • 16年12月の貸出・預金動向(日銀、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 16年12月末の東京都心オフィス空室率(三鬼商事、11:00)
  • 16年12月の景気ウオッチャー調査(内閣府、14:00)
  • 三村日商会頭の会見(14:30)
  • 16年3~11月期決算=JIN、セブン&アイ
  • 16年9~11月期決算=ファストリ
  • 16年11月のユーロ圏鉱工業生産(19:00)
  • 16年の独国内総生産(GDP)速報値
  • 16年12月の米輸出入物価指数
  • 16年12月の米財政収支(13日4:00)
  • イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が対話集会に出席
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/13の予定>
  • 閣議
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 16年12月のマネーストック(日銀、8:50)
  • 株価指数オプション1月物の特別清算指数(SQ)算出
  • 生活意識に関するアンケート調査(日銀、13:30)
  • 16年12月の企業倒産(民間調査会社、13:30)
  • 小林経済同友会代表幹事の会見(14:30)
  • 韓国中銀が政策金利を発表
  • 1月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ)
  • 16年12月の米小売売上高(22:30)
  • 16年12月の米卸売物価指数
  • 16年11月の米企業在庫(14日0:00)
  • 海外16年10~12月期決算=ブラックロック、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]