(cache) 俺はメッチャ本気出してこれ
※ 広告。『AdBlock』をオフにしていただけると、牛帝が無料WEB漫画を投稿する励みになります。
タイトル:
俺はメッチャ本気出してこれ
執筆者:
牛帝(Gyutei)
完成日:
制作中
ページ:
32ページ予定
あらすじ:
第二の『ひぐらしのなく頃に』を目指した同人ノベルゲームが頓挫する話です(フィクション)
(大学の屋上)
雪村:
夢野くん、就職活動どうする?
夢野:
漫画家になろうと思ってたけど、持ち込みしたら断わられちゃって…
夢野:
まずは就職かな…
雪村:
僕は体が弱すぎてまともな職に就けないから、就職は無理なんだ…
夢野:
雪村くんは親にも就職を止められてるんだっけ? お互いなかなか厳しいな…
雪村:
うん…
夢野&雪村:
……
雪村:
今度、同人ゲームの『ひぐらしのなく頃に』がアニメ化するんだって。
(ひぐらしのなく頃に: 当時公務員だった竜騎士07氏が趣味で開発したゲーム。記録的な大ヒットとなり、商業ゲーム化やアニメ化を果たした。その後作者は専業作家に転職)
夢野:
へぇ…
夢野:
前に『月姫』も流行ったけど、同人ゲームがブームなのかな? もうじき春休みだし買ってみるよ。
(夢野家)
竜宮レナ:
嘘だ!
夢野:
ギャアー!
夢野:
まさか萌えノベルゲームと見せかけたホラー作品とは… 面白すぎる!
夢野:
すげぇ…! 現代はアマチュア作家でもこんな名作が作れるのか!
夢野:
いてもたってもいられない! 俺も春休み中にノベルゲームを作らなきゃ!
夢野:
バカゲーノベルゲーム『秋田犬の鳴く夜に』完成!
夢野:
大手フリーゲームレビューサイトが取り上げてくれた!
夢野:
長文感想メールもらった! 最高だー!
メール:
『秋田犬の鳴く夜に』面白かったです!
雪村:
突然フリーゲームデビューするとは驚いたよ! しかも大人気じゃないか!
夢野:
いやぁ… フリーゲームレビューサイトが取り上げてくれたから。
雪村:
実は僕もいてもたってもいられなくなってさ、『RPGツクール2000』買っちゃった!
夢野:
おおっ!?
雪村:
次回作はあるの? この勢いは活かさなきゃもったいない。
夢野:
……
雪村:
……?
夢野:
俺、就職活動をせずに、同人ゲームで食ってくことにした…
雪村:
無茶だー!
モノローグ:
昭和33年、のちの天才雀士『赤木しげる』と対抗する不良少年がチキンランで対決した! 一見公平に見えるゲームだが、相手は経験上最終ブレーキポイントを熟知しており、しかも右側の車に乗っているため、いざとなれば車を捨てて転がり出て逃げることも可能。あらゆる要素が相手有利に仕組まれていた! 赤木は絶対不利な状況を覆すため、ブレーキを一切踏まずに崖から飛び出す奇策に出る。この断崖はある程度飛ぶと急に海が深くなっており、なまじブレーキを踏むよりも助かる公算が高いのだ!
夢野:
不良は赤木がなかなかブレーキを踏まないことに気を取られ、車から飛び降りる時期を失い、しかもブレーキを踏んだ! 彼の車は岩場にぶつかりながら海へと転落してしまう…
夢野:
逆にブレーキを踏まなかった赤木は無傷で生還した… なまじ安全を求めて就職するよりも、ブレーキを踏まない方がむしろ安全なんだ…
夢野:
漫画家になって描くつもりだった『サンジャック』という大作、今だったら衰退中の漫画雑誌よりも同人ゲームで発表したい。
夢野:
『サンジャック』は絶対に『ひぐらしのなく頃に』よりも面白いし!
雪村:
お母さんは許してくれたの? 母子家庭だし親の都合もあるでしょ。
夢野:
「一度きりの人生だから、やりたいことをやりなさい」って言ってくれたよ…
雪村:
そうか… まあ僕も就職しないし、何も言わないよ。
雪村:
これからはライバルだね…
夢野:
ああ…!
(ファミリーレストラン)
夢野:
今日からレストラン『ミラクルカロリー』で働かせていただきます夢野創です! よろしくお願いします!
店長:
初日だし、とりあえず皿洗いをしてもらおうかな。
夢野:
はい!
夢野:
けっこう洗ったな… もう1時間はたったかな。
夢野:
5分しかたってない!?
夢野:
…… さすがに2時間はたっただろう…
夢野:
1分しかたってない!?
アルバイト店員A:
揚げバターまだ出てなくない!?
アルバイト店員B:
ごめん、いま作る!
夢野:
ひー…
夢野:
昼下がりになり、客足も落ち着いてきたが、意識が朦朧としてきた…
アルバイト店員:
夢野さん、15時だから終わりにしてください。
夢野:
マジですか!?
夢野:
お疲れ様でした! 逃げるように退社!
夢野:
疲れた…
夢野:
だが俺は、ゲームを作るためにアルバイトしてるんだ。疲れてたって作らなきゃ…
アルバイト店員:
15時なので終わりにしてください。
夢野:
マジで!? お疲れ様でしたー!
アルバイト店員:
15時なので終わりにしてください。
夢野:
……
夢野:
疲れすぎてゲーム制作どころじゃない… この生活は無理だ…
夢野:
働きながらゲームを作るというのは、言うのは簡単だが、実際にやるのは並大抵のことじゃない…
夢野:
…… いや…
夢野:
そもそも俺ほどの才能が、こんな底辺アルバイトでこき使われるのが間違ってる! ゲームさえ完成すればバイト100年分くらいの稼ぎになるんだ! アルバイトを辞めて専業でゲームを作った方が未来は明るい!
夢野:
というわけで仕事を辞めさせていただきます!
店長:
あのさぁ…(呆れ)
夢野:
仕事に行かずに済む! 無限にゲームを作れる! よーしバリバリ作るぞ!
夢野:
はっ…!
夢野:
そういえば雪村くんどうしてるだろう。しばらくブログも見てなかったけど、ゲーム制作まだ続けてるのかな…?
夢野:
なんだと…!? 雪村くん、もう2作も完成させてる!? 早すぎる!
夢野:
大作RPGに一極集中するのではなく、中小規模の作品を量産する作戦か…!? 負けてられん!
夢野:
バイトしながらだと2週間はかかる作業が、ニートならたったの1日で!
夢野:
これなら半年もあれば『サンジャック』が完成する! そして大ヒットからのアニメ化で『ひぐらしのなく頃に』超えだ! ワハハ!
モノローグ:
一見最強に思えるニートでの創作活動。しかし無職になった後もバリバリ作り続けられる人間はまずいない。無職の生活は『モチベーション』『ハングリー精神』『時間感覚』を致命的にむしばんでいく…
張り紙:
人生一発大逆転!
母:
(咳き込む)
夢野:
あれ、今日は何曜日だったっけ… ていうか、気が付いたら半年くらいたってない…?
モノローグ:
ニートのまま創作活動も詰みはじめた時、『現実』と、『自作品』と、『プレイヤー』の三者から無限になじられ続ける生き地獄がはじまる…
サンジャック制作ブログ:
すみません、また公開延期します。何度目だ…
匿名コメント:
いつまでも出す出す詐欺やってんじゃねーよ! ゲーム作りの才能ないんだから、とっとと引退して働けボケ!
夢野:
やってるよ! 作ってるよ! これでも限界までがんばってるんだよ…
母:
創くん、27歳の誕生日おめでとう。
夢野:
ありがとう…
母:
ゲホゲホ!
夢野:
大丈夫?
母:
最近咳がねぇ…
夢野:
母ちゃんの体調が日に日に悪化してきている…
夢野:
…仮に『サンジャック』を完成させたとしても、売れなかったらどうなる…? 次のを作るのか…? そうやって労働経験がほとんどないまま30代になったら、俺と母ちゃんは生きていけるのか…?
夢野:
漫画業界には暗黙の年齢制限があって、30歳までにデビューできなければもうダメらしい… それは昔の話かもしれないが、もしこのまま30歳になってもゲームが完成しなかったら、ゲーム制作はキッパリ引退しよう… 残りはたったの3年。本気だ、本気を出すんだ…
母:
創くん、30歳の誕生日おめでとう。
夢野:
……
夢野:
…… 母ちゃん…
夢野:
俺もうゲーム作りは止めるよ…
夢野:
これからはちゃんと働くよ… もう30歳だしさ…
夢野:
よう久しぶり!
雪村:
悪いね、忙しいのに呼び出しちゃって。ゲーム作りを辞めたのがショックでさ… その後はどう?
夢野:
ゲーム作りで少し根性がついたのかな… 低空飛行だけど今度のアルバイトは一応続いてるよ…
夢野:
今度給料で母ちゃんを旅行に連れてくんだ。ずっと親不孝だったからさ…
雪村:
偉いね。
夢野:
大昔、『アカギ』のチキンランの話をしたっけ… 赤木を目指してたのに、崖から落ちた不良になってしまったよ…
夢野:
ただ、『死ねば助かる』理論は、いま思えば『生存バイアス』だ。
夢野:
現実では、死ねば大体死ぬ。もしあの時不良がブレーキを踏まなかったとしても、それはそれで潮に流されて溺れ死んでたってオチさ… あれは『最善の悲劇』だったんだ…
夢野:
…結局ゲーム制作に首まで浸かったのは、むしろ雪村くんの方だったな…
雪村:
性に合ってたんだろうね。気が付いたら何本も作ってたよ。
夢野:
もしかして、インディーズゲームで食っていけそうな感じじゃない?
雪村:
瀬戸際だね。来月完成の新作が売れてくれればあるいは…
夢野:
……
夢野:
ちゃんと寝てる…?
雪村:
1日2時間くらいかな… ここ半年毎日15時間くらい作業してたから…
夢野:
体弱いのにあんまり無理したら死ぬぞ
雪村:
はは…
夢野:
会った時から気になってたけど、その…におうんだ…
雪村:
えっ!? ちゃんと風呂入ってるんだけど…
夢野:
死臭がするんだ… 明らかにまともな健康状態じゃない…
雪村:
……
夢野:
頼むから寝てくれ! そこまで命を削ってどうする!
雪村:
昔から僕は、成人まで生きられないと言われてきた…
雪村:
今は人生の結晶を全力で作れて、最高に幸せなんだ…
雪村:
インディーズゲームにとって最高の時代だよ。制作ツールも、販売プラットフォームも完備されてる。今作らないでいつ作るっていうんだ…
夢野:
君が倒れたらご両親も悲しむぞ…
雪村:
頑丈に産んでやれなかったのは親の責任だから、一度きりの人生、好きなことをしなさいって言ってくれたよ…
母:
めんたいこ3キロは買いすぎたかも…
夢野:
そんなに食えないよ…
夢野:
あっ! 地方特有のレトロなゲームショップ!
夢野:
寄ってもいい?
母:
ゲームはもうやめたでしょ!
夢野:
掘り出し物のゲームがあれば数千円で売れるかも…
母:
すぐお行き!
夢野:
スーファミのゲームがけっこうあるな… おっ!?
夢野:
スーファミ版のRPGツクールだ! 懐かしいなぁ… 小学生の時にこれで作ったのがはじめてのゲーム制作だったなぁ…
夢野:
…… ゲーム制作は…
夢野:
最高に面白くて… 最高に勉強になって…
夢野:
そして、誰も幸せにしない……
夢野:
……
夢野:
でも… 楽しかったよな…
夢野:
次に作るのは、来世かな……
ツイート
次の話へ (To the next episode)
創作あるある話 (Home page)